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令和6年読書の記録 青崎有吾『地雷グリコ』

 少し前に一週間のうちに「本格ミステリ大賞」「日本推理作家協会賞」「山本周五郎賞」を立て続けに受賞して現在「直木賞」にもノミネートされている小説です。
 本格ミステリ小説ですが雪山の山荘や孤島に閉じ込められるわけではありませんし、無惨な連続殺人もありません。愛する人を守るために無実のホームレスを殺害するというような許し難い蛮行を犯す人もいません。←知ってる人は知ってると思いますが私この作品ほんとに許せていません。面白かったけど。

 主人公は高校一年生の射守矢真兎さん。どことなくポワンとしてる女の子が生徒会やら喫茶店のご主人やらと様々なゲームで対戦します。ゲームは全部で五つあり、それぞれ「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」「フォールーム・ポーカー」。それぞれ「グリコ」「坊主めくり(神経衰弱)」「ジャンケン」「だるまさんがころんだ」「ポーカー」という、誰もが子供の頃から親しんでいるゲーム(ポーカーはそうでもないか)にオリジナルのルールを加えてアレンジしたゲームで対戦します。

 例えば表題の「地雷グリコ」はジャンケンをして階段を「グー」で勝ったら「グリコ」で三段、「チョキ」で勝てば「チヨコレエト」で六段、「パー」で勝つと「パイナツプル」で六段上がることができる、というところまでは一般的に親しまれている「グリコ」と一緒なんですが、オリジナルルールとして、プレイヤー二人はそれぞれ三つの場所に「地雷」を仕掛けることができ、その段で止まると地雷が発動して十段下がらなければいけません。階段は全部で四十六段。果たして先に階段をのぼりきって勝利を掴み取るにはどうすればよいのか。というところに心理戦の要素があり、主人公の真兎と対戦相手の駆け引きや真兎のぶっ飛んだ思考回路に唸らされます。
 私はまさにこの「地雷グリコ」の終盤の畳み掛けにぞくぞくしました。なんか憤懣やる方ない出来事に怒り狂っているようなとき、この場面を読むだけで心身ともにスッキリするんじゃないかと思います。どの対戦も面白かったですが、私は「地雷グリコ」と「だるまさんがかぞえた」のどんでん返しがたまりませんでした。

 この小説は本格ミステリ小説としてもめちゃくちゃ面白いんですけど、高校を舞台にした青春小説でもあり、真兎と友人の紘田の関係や秘められた過去がやがて明らかになっていくと、なんともいえず胸がズキュンと青春時代を取り戻してしまいます。

 あと、登場人物が性別のステレオタイプにとらわれずに描かれていて、私は最初、これは故意にそうしているんだろうなと思って読んでいたのですが、読み終える頃には、違う違う、たぶん今はもはや、これが当たり前なんだと思うようになりまして。それを「作者の意図」だなんて勘繰ってしまうあたり、もうすでに私は古い人間であると自覚しないといけないんじゃないかと思いました。実際どうなのかはわかりませんし、それは別にどちらでもよくて、そうなのではないか、と思い至ったという話。

 とにかくめちゃくちゃ面白いです。
 もう一回「地雷グリコ」の地雷踏むとこ読み返そ。

いやー面白かったなー。

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地雷グリコも面白いけど、こっちはこっちで違う面白さがあるよ。蠱惑暇(こわくいとま)『1人目の客』絶賛発売中!1人目の客Tシャツもネットショップ「暇書房」で是非お買い求めください❤️

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