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駅前散策日記 JR大正駅前編

 「駅の近くには必ず本を買える店がある」という仮説を証明することをこれからのライフワークにしたオレだが、なんぼなんでも「駅」は多すぎるので「JRの駅」にしぼることにしたがそれはそれでかなりの量である。とりあえず、駅前にコンビニがあれば一冊くらい本は売っているのだが、それは最後の手段として置いておく。数ある最後の手段のなかでもかなり底辺にある最後の手段であるが、底辺と書いたからといってコンビニを貶めているわけではないことは念のため記しておく。

 さて。
 大正区というのは、沖縄と縁が深いらしいと少し前に新聞に書いてあった。書いてあったことも覚えているし、それを読んで「へー!」と驚いたことも覚えているが、いかんせん、内容を全く覚えていない。しかし、感動というのはそういうものなのではないかと思う。すごくいいセックスを導入から最後までどんなセックスだったか克明に覚えている人なんていないだろう。それでもめちゃくちゃよかったということは記憶しているのだ。心が動くとはそういうことなのではあるまいか。ここで以前までのオレなら「知らんけど」と書いていたのだが、流行語大賞にノミネートされてしまった今、急速に色褪せてしまったので使わない。流行語大賞は旬の言葉を腐らせる魔力がある。

沖縄沖縄しとる大正駅近高架下

 順序としては、まず書店を探してから腹ごしらえをするのがオレのオレに対する筋なのだが、高架下にお好み焼き屋ラーメン屋うどんそば屋とオレの空腹を刺激する暖簾が並んでおり、昼間から呑める店もあったので誘惑に負けそうになるが、どうせなら沖縄料理を食べたいではないか。しかし、ここには大きな落とし穴がある。沖縄に縁があるから沖縄料理を・・というのは安易すぎるのだ。例えばオレの知っている通称ラーメン街道と呼ばれる筋には、たいして美味いラーメン屋がなかったりする。名前が売れてしまってるがゆえ、店舗単位で味を追求しなくなったのだろう。ああ、めちゃくちゃ「知らんけど」使いたい。ほんまに知らんのやもん。ちょっと海原雄山とか山岡士郎ぶりたくなっただけやもん。こういうおっさんいるでしょ。何かにつけて通を気取りたがるおっさん。バカなんじゃないかと思う反面、オレもそういうことしたがったりするわけよ。ああ情けない。あんな風にだけはなりたくないと思いながらその実、そんなおっさんに憧れていたりするわけだ。

 はじめて訪れた場所で飯を食う場合、意外に名物でないものを食うと美味いものにありつける。海沿いの街はカツ丼が美味いものなのだ。しかし、そうは言ってもどうせ食うならその土地の名物を食いたくなるのがBIG BOSS、いや心情というものではないか。というわけでオレは高架下の沖縄民謡を流していて外観も沖縄沖縄している店に入り、沖縄そばのセットを食った。わざわざ大正まで来たんだから別に食べなくてもよかったんじゃないかとも思うし、せっかく大正に来たんだから食べておいてよかったとも思うし、どちらかといえば後者のほうが健康的だと思う。こういう機会でもなければ沖縄そばを食べることもスパムおにぎりを食うこともなかった。あの程よくジャンクな感じはもう少し痩せている頃になんの罪悪感もなしに食いたかった。ここまでほとんど味に言及することなく遠回しに何やらごたくを並べていることである程度お察しいただきたいのだが、決してまずかったわけではないことは主張しておく。

沖縄そばのセット

 お腹が満たされたところで書店探し。それなりに要領のいいオレは沖縄そばセットが出てくるまでの間に「JR大正駅 書店」で検索をかけていたのだ。駅前の大通りを渡ったところ、餃子の王将の対面の筋を曲がり、少しばかり歩くともはや「駅近」と言っていいのかわからんが、とにかく「トキワ書店」があった。ドラクエ1で松明持っていかんかったときのダンジョンくらい暗い商店街の真ん中あたり、ごくごく小さな書店のレジのところにおばあちゃんがいた。そのレジは銭湯の番台のようだった。新刊のコミックが不揃いに並んでおり、品揃えは薄すぎたが、そのコミックを挟むように両脇には大阪府史の資料や日本の歴史に関する書籍、さらにはドラえもん全巻コンプリート(少し前に発売された0巻もあった)となんとも興味深い品揃えやったので真ん中のコミックは無視して両脇を眺めておると番台のおばあちゃんが「そこはおじいさんの私物を並べてるんです」と申し訳なさそうに言うものだから「ということはこれは売り物ではないと」と尋ねると「ええ、そうなんです」とのことで、そうなるとここの売り物は真ん中の中途半端すぎる品揃えのコミックだけなのかいと聞きたそうな顔をオレがしていたんだと思う。「うちとこはそう長くお店やらないと思いますし、だいたいが注文販売ですさかいにお店に置いておく分はこんなもんなんですわ」とのことで、それはなんだか申し訳ないぇすねと答えると「いえいえこちらこそ」とおっしゃる。「旅先の本屋さんに立ち寄るのを趣味にしていてここを見つけたから寄らせてもらったんです」と話しかけると「そうでしたか、では遠くから来られたの」と聞かれ「まあ、そう遠くはありません、京都です」と答えるとなんだかつまらなさそうな顔をした。

もはや駅近ともいえないかもしれないトキワ書店


 コミックはSPY×FAMILYとかONE PIECEとか呪術廻戦とかゴールデンカムイとか、なんやかんやと売れ線をおさえとるんですが、最新巻しか売ってなかったり、なかなか難しいお店。
しかしどういうわけか、ジョジョの奇妙な冒険の3部と4部の狭間を描くスピンオフ作品の1巻が売っており、うちは長男がジョジョにダダハマりしておるのでこれを購入した。

 駅へ向かう帰り道、ずいぶんと美味そうな昼飲みできる定食屋があり、ここにすればよかったと思った。初めての街というのは、何回か来るつもりで店を選ばないと選択肢から名店が漏れまくってしまう気がする。なんやったら王将でも吉野家でもええんやでってくらいの心の余裕があってこそ、街歩きは楽しいのではないか。おや。帰ってくるまで気づかなかったが、オレの向かった王将やらトキワ書店のある商店街やらの反対側に何やら球状のこんもりとした丘のような建物がみえる。あれは京セラドーム大阪ではないか。駅前の大通りの逆側を眺めてみると確かに何回か歩いたことのある緩やかな坂道だ。向こうに大きな川があって渡ったところがドームじゃないか。初めてきた街と違うやないか!たまたまドームと反対方向へ歩いたから全く気づかなかったが、いやはや、そのくらい駅を起点にあっちとこっちでは雰囲気が変わるのが駅というものなのかもしれない。もしくはオレがアホなのか。おそらく後者なのだと思う。

ジョジョのスピンオフに巡り合えるとは
こういうオリジナルの紙袋好きやねん

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