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二三味ゆきね(にざみゆきね)
2024年6月24日 10:15
靴音が響く度に、からくり人形である少女の足下の血溜まりが、小さく揺れる。からくりの少女は笑みを浮かべ、ずるずると息も絶え絶えな術者の襟をつかんで引きずった。その術者の胸部からは血が流れていて、つんと鉄臭い。「ねー、封印の間はこっチ-?」 少女は引きずっている術者に声をかける。だが、術者はわずかに首を振り答えない。「ねー、こたえテヨ-!」「……ぐ」 わざと傷に響くように、少女は背後の男
2020年7月30日 14:06
私は女に生まれた。 ただそれだけなのに、父も祖父も私は男より劣り、男より下の存在だと言う。 女はただ男の言うことを聞き、男に媚びへつらい、ただただ男を立て男の身の回りの世話をするために生きろ、と。 このご時世になんと時代遅れで、古くて、苔のこびりついたつまらない考えだろう、と私は思う。 私の家では特に、男尊女卑の考え方が色濃く残っていた。それはまるで、私達にかけられた呪いのようだ。
2020年8月1日 15:06
5月。例年よりも気温が高く、もう真夏だと感じる暑さが突然襲ってきた日の午後。 聞こえるのは古びたラジオの音声だけ。軽快な音楽とともに、DJが曲紹介をしている。 カウンターに置かれた電話が、鳴った。 幸申(ゆきのぶ)は「ヴォッ……」と踏まれた獣のような声を出して、受話器を取る。「はい、パンジー商店です……ん?……いや、番号間違えてますね……はい、はーい……」気だるげに受話器を置いた彼は、