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【感想】書籍「鍵のない夢を見る」について

「鍵のない夢を見る」辻村深月著

短編集です。
目次にあるタイトルを書きだしてみます。

仁志野町の泥棒
石蕗南地区の放火
美弥谷団地の逃亡者
芹葉大学の夢と殺人
君本家の誘拐

タイトルだけでも、かなり物騒です。事件性があるものも、ないものもありますが、罪に関する短編です。短編の登場人物の中に、何かしら罪を犯す者がいます。

読んでいくと、これ一歩間違えると、自分もそのような罪を犯してしまうのではないかと、ゾクッとします。何というか、どれもが自分にとって身近に起こり得そうなのです。自分の気持ちの奥底に、そういう綺麗ではない、沼のようなものがあって、そこに手を入れて、感覚を確かめられているような感じがします。

そして、その手をそのまま揺らされて煽られたら、何かを起こしてしまうかもしれないという気にさせられます。それくらい、罪を起こす登場人物は、すぐそこに、傍から見ても私たちと同じ人間なのです。
決定的な罪を犯していない私たちと、彼らの間に引かれた境界はとても曖昧で、だからこそ怖さを感じます。

以上。説那せつなでした。

第147回直木賞受賞作です。

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説那(せつな)
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