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【漫画・アニメ感想】15年も続く人気作品『夏目友人帳』(1~25巻)について

ネタバレします。

所要時間 8分

世界観重視  8 
内面描写重視 9
メッセージ性 9
考察要素   7  合計 33

考察要素そんなにあるか?と思われるかも知れませんが、いくつか伏線ぽいのはありますね。

例えば、名取のヤモリが左足だけには行かないとか、的場誠司の右目の件とか。

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      ©緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会

他にも、祓い人の式が、昔夏目によく似た男(恐らく祖父)を見たとか。そして夏目レイコの一生について...(結婚せずに貴志の母を産んだとか)

だから、結構謎な部分はありますね。

余談ですが、夏目レイコってなんで漢字じゃないんでしょうか?確かに昔の人はカタカナの名前が多いですが、でも誰もレイコの本当の字を知らないですよね。

つまり、発音しか知らないから“レイコ”ってカタカナ表記になってるとか。これも何かの伏線だったりするのかな? 考え過ぎでしょうか?(笑)

1夏目貴志の成長譚

この作品、初連載が2005年ってことで、もう15年くらい続く人気作品なんですね。

15も続いてる割にはあんまり話が進んでないように思えますが、そう思える理由は主に2つあると考えます。

まず、話の構成が一話完結、つまり読み切りであることと、話の展開がほとんど同じであること。(夏目が妖怪に目をつけられる→仲間と協力して問題解決→名前を返す→夏目レイコについての記憶を見る。)

もう一つが、後で話しますが、この作品は、夏目貴志(紛らわしいので以下貴志)が人と妖どちらを大切にするかまだ決めかねているという絶妙なバランスの上に成り立っていると思います。

一方に寄り過ぎてしまうと、おそらく作品が成り立たないので、ずっとこの状態で話が進んできました。こうした根底にあるコンセプトが不変なのも、あまり話が進まないと思える原因かもしれませんね。


しかし、貴志(と友人との関係性)に注目すると、彼は結構変わったなぁと思います。やっぱりニャンコ先生のおかげでしょうか。

夏目貴志の変化を一言で表すと、失ったことを取り戻すことだと思います。

初期の貴志は、まだ他者を受け入れる余裕なんか無くて、早く関係を断ってひとりで生きたいと思っていました。

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        『夏目友人帳』  緑川ゆき

でも、ニャンコ先生や田沼、タキ、名取と出会って同じ世界を見る仲間ができます。

そうして今まで一人で背負っていた負担が減って、結構感情を出すようになり、また活発に行動するようになりました。

先ほど、人と妖どちらを大切にするかまだ決めかねている、と書きました。確かに初めは悩むのですが、最近はどちらも救いたいと決断して、行動してますね。

しかし、もし塔子と滋か妖怪かという究極の選択になったらどう行動するのでしょうね。でも、自分で言っておきながらこういう展開はあまり見たくないですね(苦笑)


で、以前と生き方が変わった貴志は、今まで向き合わなかったことに直面します。

・貴志が妖を見えることを知る友人との関係
 貴志は友人を妖怪沙汰に巻き込むことをとても嫌がります。しかし田沼は力になりたい、もっと頼って欲しいと思い、二人はすれ違っています。

 こうした友人とどう関わればいいか貴志は悩みます。ここで名取がアドバイスをくれるのですが、そのセリフが好きなので引用。

 名取「私は弱いから、そういうのは煩わしくて捨ててしまったけど、夏目にはきっと必要なんだよ。」


・同じ世界を見る沢山の人と出会う貴志
 田沼や名取以外でも妖が見える人(主に祓い屋)に出会いますが、必ずしも良い出会いとは限らない。的場とか的場とか的場とか

 同じ景色が見えても、心が通い合うとは限らない。同じ妖が見える人なら分かり合えると思っていた貴志には意外な出来事だったでしょうね。


・自身の過去について
 子供の頃は、思い出すと辛いから忘れようと思って、長い間蓋をしてきた記憶と徐々に向き合う貴志

 昔、悲しい別れ方をした妖怪に会いに行ったり、実家に行ってみたり。

話逸れますが、貴志が実家に行く回、結構好きなんですよね。(感動するという意味で)

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         『夏目友人帳』11巻  緑川ゆき

 分かるよ。辛かったんだね。辛くて逃げ出したんだよね。(´Д⊂グスン
(あれ、私まだそんなに年いってないはずなのに、最近涙腺が緩くて...)


 話を戻して、そうして昔のことを思い出す度に、貴志は今がいかに幸せか再認識します。(簡単に言うと今まで辛すぎて、感覚がバグって、普通のことに幸せを感じるということ)

 で、自分が幸せな思いをするだけでなく、それを他者(人と妖両方)にも与えようと奮闘する。なんて良い子なんだ… 辛い思いをした分だけ、一層他者の気持ちが分かるのでしょう。

2他人との距離の取り方

妖怪という要素は上辺であって、真に重要な事は他にあると考えます。つまり、この作品のテーマは「他者との関わり合い」だと思います。

普通妖怪といったら、平安時代に出てくる酒吞童子とか茨木童子、九尾の狐など凶悪な感じを想像するのですが、この作品のほとんどの妖怪は、恐るべき怪異ってよりも可愛い動物って感じですね。

なぜそう思えるのか。それはこの作品の妖怪が人と同じように、考えたり、感じたり、恋をしたり、悲しんだりするから(一部そうではない妖もいますが。)

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      ©緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会

だから、この作品で人と妖が恋する話は、怪異譚よりもロマンスと分類する方がしっくり来ます。

そういう人と感性が似ている妖と出会って貴志がやっていることは、他者を自身のあり得た姿として受け入れることです。

妖の取る行動は良くないが、共感できる部分があり、彼らを許したり、受け入れることが出来るようになる。そうして、彼らの立場になって考えてみて、彼らの助けになりたいと思う。

この考え方、現代でも通用するんじゃないでしょうか?

気持ちが荒れていたり、嫌な相手がいる時は、敵対しがちですが、冷静になって他者の気持ちを理解しようと思える。

別に敵を作るなと言っているのではありません。嫌いな相手は嫌いなままで結構ですが、先ほどのような考え方をすることで必要以上に責めることを防止できるのではと思います。

こういう点で、『夏目友人帳』は私に他者を自分の変容体として受け入れる勇気をくれる作品なんです。


話逸れますが、この作品がどう終わるのか非常に気になります。貴志は西村とか塔子たちに秘密を打ち明けるのか?とか。

進行ペースは相変わらず遅いですが、徐々に貴志は成長していて、関係性が変化していき、それに、登場人物の過去の話もしっかり書きたいと作者が言っているので楽しみです。

私はこのままゆったりと進むのもいいと思います。(どっちだよ)
だって、どうせ人の一生は短く、こんなにも魅力的なので

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      ©緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会


3BGMのススメ

アニメの主題歌やサントラが好きなのでいくつか紹介。いつもは3つぐらいで終わるのですが、良い曲が多いもので、量が増えちゃいました。

・『あの日のタイムマシン』・・・opの中で一番好き。歌詞が凄い響く

・『僕にできること』・・・夏目と妖の儚い出会いをよく表現しています。

・『君ノカケラ』feat 宮本笑里・・・とてもゆったりした歌ですが、サビの盛り上がり方が異常(もちろん良い意味で)

・『愛してる』・・・ニャンコ先生が歩いてる姿が見える見える...

・『夏夕空』・・・歌うのめっちゃムズイ(笑)

・『きみが呼ぶなまえ~夢のつづき』・・寝る時に聞けばぐっすり眠れるんじゃね?と思い聞いたら、感動して眠るどころではなくなった(笑)

・『きらめいててご免』・・・名取の登場シーンで流れる。清々しい気分になる。

・『夢うつつ』・・・不思議な雰囲気

・『あたたかい雪景色』・・・実家のような安心感

まとめ

いつも通り要素を分析して終わります。

・群像劇・・・様々な妖怪からレイコを知る

・中諦の悟り・・・辛い思いをした分だけ、満足を知る。

・普遍回帰


最後までお読みいただきありがとうございました!


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