
【映画感想】『AKIRA』に見る自我意識の確立
「はじめに」の記事を最初に見てください。概要と注意点が書いてあります。ネタバレします。
所要時間 4分
AKIRAを見て思った感想をダラダラ書く記事です。
世界観重視 8
内面描写重視 6
メッセージ性 8
考察要素 8 合計 30
1 金田と鉄雄
下の画像は主人公は金田です。彼は明朗快活で、度胸があって、正にヒーローって感じの人物です。
©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
こちらは鉄雄
©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
彼はコンプレックスの塊です。幼い頃、転校先でいじめられていた鉄雄は、金田に助けてもらって以降、行動を共にしますが、金田から子供扱いされるのが不満のようです。
金田に認めて欲しく、対等な立場で接したいからか、鉄雄は彼にとても執着します。
鉄雄は超能力?を身に付けた後、金田にその力を自慢しますし、一時は彼を殺そうとします。しかし、鉄雄が肉塊に飲み込まれる時、真っ先に助けを求めた相手も金田でした。
つまり、能力は金田を凌駕しているが、精神的には依存している(金田から承認されたい!)。
面白い関係性ですね。
2NEO東京
©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
設定は近未来でありながらも、昭和の東京の要素を色濃く残しています。例えば、反政府デモとか。モデルは安保闘争だろうと私は思います。
で、この二つの、近未来と昭和の要素がお互いを邪魔せず、むしろ良い感じに融合しているのが凄い!
作者の大友克洋は『美術手帖』1998年12月号のインタビューで、『AKIRA』について、「東京が好きで、別の形で東京を語り直してみたい欲望があった」「戦後の復興期から東京オリンピックの頃の様な混沌を構築したかった。(東京の様に)こんなに無思想で歪んでめまぐるしく変化していく都市は魅力的」と語っています。
この作品は、昭和という時代の要素を多く取り入れることで、昭和を生きた人々に何かを強く訴えかけることができたと思います。
3メッセージ性
作者曰く
「登場人物たちはみんな若者にしました。……ただ単に暴走して、つまんない世界にいる人間たちを主人公にして、東京の中のいろんな政治や、大きな秘密の中に触れながら、どうしようもない若者たちが少しは成長していくという話を作ったんです。 話はSFなんですけど、少しずつ自分たちで何かを見つけるんだよというメッセージは描きたいなと思っていました。それは、社会に参加して、または世界に参加して、自分たちで自分たちの道を発見する話なんです。…(中略)…いろんなことがあるんですけど、自分たちが見つけたもの、そして、自分たちがこれからなんかやってくんだよというメッセージは込めました。」
(『AKIRA』の世界観のもと、東京の進化と再生を描く NHKスペシャル シリーズ「東京リボーン」より)
つまり、自分ではどうしようもない大きな流れに翻弄されながら、自身の生き方を模索する若者の姿をあの映画は描いたと思います。
こうした視点を得られただけでもこの映画は、私にとって見る価値のある作品でした。感謝感謝...
思えば、こうしたことはよく起こりますよね。例えば、進撃の巨人のエレン。欲しいと思ったわけでもなく巨人化の力を手に入れ、その力を使いながら未来を切り開いて行く...
少し、逸れるかもしれませんが、リゼロのスバルも当てはまると思います。嫉妬の魔女から死に戻りの能力を授かり、その力を使って、エミリア(とレム、ラム姉妹)を大きな陰謀から救おうとする...
更に、現実にも起こっていますね。受験競争、就職活動など避けられない大きな流れがあって、そこで苦悩する若者...
どうも私はこうした若者が翻弄される中で、方向性を定める過程を見るのが好きみたいです。また私以外にも好きな人がいることが、この映画が売れた理由の一つだと思います。
4まとめ
...の前に、作画について触れないと文句が来そうなので、おびえながら書きます。と言っても私は作画に詳しくないので普通の事しか言えませんが。はい。凄かったです。描く対象の規模が凄いし、アニメーションも凄いし... 今まで見てきた内で最高レベルの作画です。(アッサリ)
・時代背景反映型・・・特定の時代の特色をふんだんに取り入れ、その時代を生きた人々に強く訴えかける構成
・対大流システム・・・大きな流れに翻弄される人々(特に若者)を描く
最後までお読みいただきありがとうございました!