見出し画像

泌尿器科医目線の婦人科入院録 <子宮頸部円錐切除術・子宮鏡手術体験記>

推奨されている通りに2年おきの子宮頸癌検診を受けていました。
45歳ひとり親泌尿器科女医、子宮頸部円錐切除術を受けることに。
今回はそのお話をしたいと思います。

子宮頸癌検診

子宮頸癌検診


年初めに人間ドックのオプションで子宮頸癌検診を受けました。
子宮頸癌細胞診の結果はASC-USと返ってきました。
今までクラス分類で返ってきていたのでいきなりベセスダ分類での表記に面食らいました。国際的に使われている分類で近年はこちらの表記を使う施設が増えているそうです。ASC-US (Atypical Squamous Cells of Undetermined Significance)=意義不明な異型扁平上皮細胞。患者向けの報告書で略語はいきなり使わずにフルスペルを欄外にでも表記しておいていただきたい。学位審査なら即ダメ出しです。

2次検診

ASC-USは子宮頸部異形成の疑いがあるとうことで早速婦人科を予約受診しました。2次検診ではHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染の有無を調べます。血液検査かと思ったら抗体検査ではなくて、子宮頸癌検診の細胞診と同じように子宮頸部をブラシで擦って細胞を調べる検査で、ハイリスクHPVに感染した細胞の有無を診るようです。検診の細胞診と同じ手技なら同時にできるんじゃないの?と思ったらプラス5000円くらい上乗せで人間ドックで同時にできたそうです。私は細胞診のみのコースだったので二次検診でこのステップが必要になりました。細胞診でひっかかっているので保険診療になりますが、検診後のフローチャートがワンステップ増えた点ではケチって失敗したパターンです。

7年前の帝王切開術中に指摘された子宮内膜症

産後検診以来久しぶりに婦人科外来を受診したので子宮内膜症についても相談してみました。現在小1の娘を出産した帝王切開の術中、赤ちゃんを出した後で術野を見た術者が「うわっ!内膜症すごっ!」と言うのを聞いたので内膜症があることはわかっていました。無影灯に鏡でも付いてて本人にも術野が見れればいいのに。術後ストレッチャーで病室に帰る途中に主治医に聞くと子どもをもう1人くらい頑張ってから内膜症の治療をしようかねと言われましたが、相手がいないまま45歳になり2人目は諦めたので婦人科受診して相談しようと思っていた矢先でした。帝王切開になった理由は子宮筋腫核出術の既往があったからです。子宮筋腫の手術の時も膀胱子宮窩に内膜症のブルースポットがあったから焼いといたよと術後に言われていました。それが再発していたのだと理解しました。


骨盤内臓器


子宮筋腫の術後から月経時の痛みは劇的に改善していましたが、その他に子宮筋腫術後に治って最近再燃してきた症状がありました。休みの日の朝など、目覚ましをかけずにすごく長く寝て一度も排尿に起きず一晩分の尿が溜まって膀胱がパンパンになった時にだけ排尿後下腹部痛があるのです。残像のようにしばらく重い痛みがありベッドに戻ってうずくまっているとだんだん引いてきていつの間にか二度寝しています。蓄尿時の痛みなら間質性膀胱炎が鑑別にあがるのですが、それなら排尿後に痛みが軽快するのが特徴です。私の症状は排尿後に出るので違っていました。内膜症は膀胱の中にできることもあり、膀胱鏡で見つけて婦人科に紹介したこともありました。しかし、同門の男性泌尿器科医を自分の砕石位の股ぐらに立たせて尿道からカメラを入れる膀胱鏡を頼むのは躊躇してしまう。女性の同門は少なく婦人科と両方受診できる施設に勤務している先生は限られます。自分の症状から、もし万が一泌尿器科併診になった場合を鑑みて、内膜症の相談するなら同門のいない病院にしようと考えていました。さらに前回の人間ドックでは乳腺エコーにひっかかっていて、悪性所見はなかったものの、乳腺外科で年1回フォローになっていました。婦人科疾患と乳腺はいずれも女性ホルモンの影響を受けるため、万が一まとめて同じ病院で診ましょうとなった場合に、男友達が担当になるのも気まずい。学部時代からの腐れ縁の男友達が近くの総合病院で乳腺外科を担当しているのです。こうしていろいろ考えあぐねて婦人科に受診できないまま時が経過しているうちに、今回の検診異常の指摘だったのです。結局どちらの科とも併診はなく取り越し苦労に終わりました。

生検の予知夢

内膜症の治療ではジエノゲストを内服することになりました。プロゲステロンのみのお薬でエストロゲンが入っていないため乳腺への影響はないとのことです。内服を始めて最初は妊娠中に起こったような手の皮膚トラブルやお腹にガスが溜まる症状がでました。しばらく内服を続けていると体が慣れてきたのか治ってきました。2回目の診察では感じた副作用を主治医にもれなく報告しなきゃとばかり考えて、子宮頸癌検診の2次検診の結果を聞く目的をすっかり忘れていましたが、2回目の外来予約の日の朝方、夢を見ました。前立腺に癌がないか調べる経会陰式前立腺生検を施行した後、砕石位の脚を下ろしてストレッチャーに移った患者に声をかけると女性だったのです。え、男性の臓器である前立腺を生検したはずなのになんで!と目が覚めました。なんと予知夢?その数時間後に砕石位で股から生検されているのは自分自身でした。

砕石位

HPV感染

ハイリスクHPV感染がありますと説明があり、即刻次の検査に進むことになりました。コルポスコピーと組織診です。あれよあれよと言う間に内診台で生検を受けました。これはそんなに痛くないしそんなに血も出ない。でも検診後のフローチャートがどんどん悪い方へ進んでいくので不安になってきました。そもそもHPVって性交渉で感染するウイルスなんだから男からでしょ。なんでワクチンの対象が女子だけなんだ。感染させないように男にも打てよ。男が陰茎癌や咽頭癌になるのはいいのか?などといろんな方面に腹が立ってきました。頻度が高くないから軽視されるのか?当科領域では、日本泌尿器科学会の陰茎癌診療ガイドラインに予防因子としてしっかりHPVワクチンと書いてあります。頻度が多くないと言っても罹患した患者は大変なんです。陰茎切断術では尿道口を新たに形成する必要があるし、術後は今まで通りの排尿というわけにはいかない。

異形成

3回目の診察は組織診の結果説明です。「中等度から高度異形成が出ています。高度異形成があるので治療適応です。頸部円錐切除にしますか?子宮全摘にしますか?」といきなりの二択。確かに円錐切除で断端に悪いところがあれば追加治療で全摘になるというなら、二度手間を避けるために最初から全摘がいい。だがしかし!泌尿器科で骨盤臓器脱を診療してきた中で子宮も骨盤底の重要な支えの一部だと教えられてきました。子宮全摘後の膣断端脱はひっくり返って出てきている部分の膜の向こう側が小腸なので経膣手術ではより慎重な操作が求められます。

NHKのきょうの健康に骨盤臓器脱の特集が載っていました。https://www.nhk.jp/p/kyonokenko/ts/83KL2X1J32/episode/te/MVNM61LPP2/

よって、挙児希望はないが、なるべく温存してください。でも異形成の奥に浸潤癌が隠れているかもしれないよと脅かされ、前回2回の手術の影響による癒着の程度が心配ということでその日は答えは出ず、後日MRIを撮ってみることになりました。

子宮内膜ポリープの疑い

MRIの予約が取れた頃にはジエノゲストの作用で常にちょっとずつ血が出ているような状態になり、ナプキンで皮膚が痒くて気も滅入り、内服をやめたくなっていました。プロゲステロンが内膜の薄い状態を保とうとするようです。月経は期間がわかっているし、何日目が多いのか予測がつくから対応しやすいけれど、このジエノゲストの出血はいつどのくらい出るかわからなくて、油断してると出血しだしてソファを汚してしまったり私には対応が難しいものでした。そして結局血が出る時には子宮がそれを押し出そうとして収縮することによる痛みがある。プロゲステロンの平滑筋収縮抑制作用はどうした。

MRI


MRIでは子宮頸部に明らかな浸潤癌などの所見はなく、癒着も内膜症もはっきりせず、膀胱壁も問題なさそうでしたが、子宮内膜にポリープがあるみたいと言われました。エコーした時はポリープに気づいてなかったけど後からエコー画像見たらここかな、と示されましたが、私にはその所見はよくわかりませんでした。「ポリープのせいで出血量が多いのでは?ポリープがあるような子宮なら取りましょう!」と。内膜ポリープはほとんどが良性のもののようですが、時に悪性のものがあるようです。良悪性が画像診断で推測できるのか質問すると、取って病理診断でないとわからない、とのこと。腎癌なら画像診断で組織型まで読影してくるのに、良悪性がわからないなんて。

ひとり親の入院準備


子宮全摘なら7泊、円錐切除なら2泊、家で小1の娘が1人になるのはなるべく短くしたい。MRIで病院に行く前までにいろいろ調べましたが、行政に聞けばひとり親の入院時の対応は児童養護施設か里親の二択で、児童養護施設にいる期間は学校には通えません、里親は近所でその手術の日程にぴったりスケジュールが空いている人がいるかどうか申し込んでからしか調べられません、と言います。ひとり親なら費用はかからないようですが、聞いた人によって所得制限があると言ったりないと言ったり。ちゃんとわかってから正しく説明してほしい。小学校に入ったばかりの娘は初めてチックが出たりかなり精神的に負担がかかっている様子で5月6月にさらなる環境の変化は酷だろうと思いました。里親の家に泊まるとしても初めましてでいきなりお泊まりは現実的ではありません。小学校に入ってから習い事への送迎を定期的にお願いしているシッターさんが保育士の資格をお持ちでお泊まり保育もやっているというので、我が家にお泊まりしてもらうことにしました。送迎をファミサポに頼まず資格持ちのシッターさんに慣れさせといてよかった!

術式決定


主治医に事情を話すと手術当日入院の1泊2日で円錐切除をする際に子宮鏡もしてポリープがあれば切除しましょうということになりました。ジエノゲストは子宮鏡手術に備えて内膜を薄く保っておくために内服を続けることになりました。断端陽性を避けたいからなるべく広い範囲で取る、と挙児希望がないことを再確認されました。円錐切除は治療というより検査の意味合いが強いと念を押されつつ、生検で異形成の部分が全部取りきれてて切除標本からは何も出ないこともあるとも説明がありました。病理で腫瘍を認めないTMN分類のT0についてはわたしにもわかるぞ。

子宮の手術歴


術前検査の後、入院手続きの書類をもらって帰りました。手術歴を書く欄が病名でも術式でもなく臓器名になっていてびっくりしました。その方が非医療者は書きやすいのかな。書いてみれば子宮、子宮と子宮ばかり3回目の手術です。1回目は子宮筋腫核出、2回目は帝王切開、3回目で円錐切除と子宮鏡。

子宮鏡の術前処置が痛すぎる

当日娘を学校に送り出してから指示された8:30に病院に行きました。0時から絶食、9時から絶飲食の指示であと少し水を飲めるので小さいペットボトルの水を買ってボストンバッグ片手に外来で病棟への案内を待っていると、外来の内診室から呼ばれました。術前の診察かなと思って上がると、頸管を拡張しますと言ってすごく激しい痛みが!ラミナリアか何かを入れたみたい。強すぎる痛みは迷走神経反射を引き起こすんです。処置はすぐ終わって内診台を元の位置に戻されたけどその脚を下ろす動きも相まって迷走神経反射が起こってしまいました。絶飲食で脱水の中、痛みを伴う侵襲があり、さらに上げた脚を床まですぐ下ろしたのが誘因のようです。麻酔科研修の時にオペ場では手術後に砕石位から脚を下ろす時に点滴を全開にして片脚ずつゆっくり仰臥位に戻しなさいと習いました。内診台って外来にあって麻酔してない患者前提だけど、一気に砕石位から端座位まで動くので今回のような脱水などのリスクファクターがあれば血圧は下がりやすいのでは。泌尿器科も砕石位で診察や内視鏡をしますが、尿路変向後の診察などで仰臥位の方が都合がいい場面もあるので、砕石位にも仰臥位にもなれる診察台を置いている施設が多いです。砕石位の股の間にフラットの台を取り付けてから脚を下ろし一旦仰臥位になってから台を降ります。フットスイッチひと押ししたら体位が自動的に変わるのは手間が省けて便利なので、最近は婦人科風の診察台に買い替える病院が多いけど、やっぱ一旦仰臥位になれるほうがいいな。端座位とは腰掛けて脚を床に下ろした姿勢です。排尿自立支援の加算が始まって院内にケアチームを組んだ時に初めて理学療法士と組んで仕事をしてリハビリの観点でものを見たときにベッドをギャッチアップしてベッド上に脚を伸ばした姿勢の長座位とベッドサイドに座って床に脚を下ろす端座位との間にかなりリハビリの時間を要する人が多くて端座位って結構大変なんだと気づきました。端座位になれればポータブルトイレに座ることができるので、排尿自立の観点ではまず最初のリハビリ目標になります。

端座位と長座位

実際、自分も妊娠中に端座位の大変さを痛感しました。妊娠6週から身体が縦になったら血圧がすぐ下がるようになってしまってずっと横になって寝たきりに近い生活を余儀なくされていたのです。この時にやはり「起き上がれる」と「脚を下ろして座れる」の間に大きな隔たりを感じました。起き上がれるようになっても脚を下ろすとまた血圧が下がるのです。通常の車椅子は脚を下ろした姿勢でないと乗れないのでこの状態の時に車椅子で運ばれると揺れも加わってかなりつらいです。しゃがんだ姿勢の方がまだ楽。妊娠初期に増えるプロゲステロンは子宮平滑筋の収縮を抑制します。それで血管平滑筋も弛緩してしまって血圧を保てないのか。大学院で平滑筋を研究したので、後からこのように考察してみることができますが血圧60ともなると当時はそんなに頭が回りませんでした。交感神経副交感神経のバランスもおかしくて副交感神経がずっと優位な感じでした。コリンエステラーゼ阻害薬であるウブレチドを排尿筋収縮力低下による排尿障害に対して使った時に副作用として起こる下痢のように、ずっと水様便でした。トイレは端座位にならないと座れないので、日々のトイレがとてもつらくて、目の前が白黒しながら排泄していました。このように調子悪い時の端座位って大変なのです。

婦人科内診台


血圧が下がっても横になって脚を上げると速やかに回復します。端座位になった内診台に座ったまま様子がおかしいのを察知して集まった看護師たちに取り囲まれ、横になりたい横になりたい!と訴えて床に横になろうとしたけど台に押さえられて再び砕石位に戻されました。それよりも頭を下げてくれ。膝を乗せる部分に足を置いてなんとか自分で脚を上げた体勢を作ってある程度回復してから車椅子に移って運ばれました。血圧は速やかに戻るから看護師さんがどこからか血圧計を持って来て巻き付けている間にもう回復していてデータとして残すことができません。妊娠初期の血圧低下の際もそのせいで病態を把握してもらえず、血圧下がって気分悪いのに制吐剤を静注されてしまいました。初期妊婦が気分悪いならこれでしょ、と。気分の悪さの種類が違う。つわりで吐いたことは一度もなかったのに。最終的に自宅で自分で血圧を測って臥位、座位、立位時の血圧の変化が大きいことを、循環器内科併診できる総合病院で示してやっと対応されました。立位時は測れる時で60台、それ以下の時は数値が出ず再検になっている間に倒れました。

血圧計探しに行くよりまず脈をとってほしい


内診台から車椅子に移す前にまだパンツはいてない!と慌てている看護師さんが1人いてぷぷぷっとなって和みました。そりゃあ内診終わってすぐ血圧下がったんだからまだはいてないわ。外来のベッドに移され、そこで寝たまま手術説明のインフォームドコンセント(IC)がありました。今から同意するところなのに、その前に侵襲的処置をすな!と思いましたが、同業者だから省かれたのかなあ。同じ経膣手術を扱う科でも泌尿器科では子宮自体は触らないのでいきなりこんな痛い処置が始まるとはつゆ知らず。境界領域の境界の向こう側なのです。経膣分娩での出産を経験してないから頸管が狭かったみたい。ICの中で、子宮鏡ではレゼクトスコープを入れてポリープがあったら削る、いっぱいあったら掻爬すると説明を受けました。TURみたいなこと?と言っても主治医には伝わらなかったけどU字型のループで云々言ってたからTURBT(Transurethral Resection of Bladder Tumor; 経尿道的膀胱腫瘍切除術)と同様の手技のようです。説明用紙にはなかったけどTCR(trans cervical resection)というらしい。電解質を含まない灌流液のせいで血中のNaが下がる水中毒の話も説明書きに書いてありました。泌尿器科ではそれをTUR症候群って呼ぶんだけど、婦人科では名前がついていないのかな?そういえば婦人科の先生が泌尿器科にレゼクトスコープを借りにきて持って行ったついでに子宮鏡を見学したことがあります。歴史を調べても、泌尿器科のレゼクトスコープを用いて子宮鏡下に粘膜下筋腫切除術をした報告が子宮鏡手術の始まりみたいなので、私の「TURみたいなこと?」という質問は正解みたい。レゼクトスコープは男性の長い尿道にもそのまま挿れられるのに、子宮には前処置で頸管を拡張してないと入らないなんて。ラミナリアか何かをつっこまれたままなので痛い状態のまま術前を過ごしました。案の定脱水だったみたいでなかなか術前のルート確保ができなくて3箇所目で利き腕の正中に入りました。

キーパーソン6歳

外来で主治医に確認した時、誰も家族いなくても大丈夫よと言っていたし、入院案内の事務も身元保証人いないならいないで何も書かなくていいって言っていたけど、やはり病棟としては全麻で本人が意識ないときに相談すべき事象があった場合に緊急連絡先がないと困るとのこと。キーパーソン6歳…。親は?ひとり親の母が認知症。兄弟は?ひとりっ子です。いとこは?母がひとりっ子だからいとこは存在しません。ひとりっ子がひとり親(母)になってその子ども(私)もひとりっ子でひとり親としてひとりっ子を育てているという親類の少なさ。賃貸不動産借りられない問題は家を買うことで対策できたのに、入院手術時に困ることになるとは。子どもの学校の電話番号を言ってみたけどダメで、とりあえず職場に電話してもらうことにしました。でも上司はその日外勤だったかも。あらかじめ言っておいてくれたら入院前に頼んでおいたのに。

いよいよ手術

手術は全身麻酔で行われました。細かいことを言えば静脈麻酔にラリンゲアルマスクでの呼吸管理だと思います。最近声が出しづらくて耳鼻科の内視鏡検査受けたら逆流性食道炎の影響や花粉症から度々起こす副鼻腔炎の後鼻漏の影響で声帯にダメージ受けてると指摘されたばかりだったので、気管内挿管がないのは助かります。手術自体は短時間で終わり、病棟を出て1時間後にはdrowsyなまま帰室しました。子宮筋腫の手術の時、麻酔覚醒後超多弁になって、たぶん麻酔薬の作用のせいだけど当時各方面に迷惑をかけた気がするから心配でした。今回は短時間だったせいか麻酔の薬剤が違うのか普通に帰ってきてひと安心です。帰室後2時間は安静でモニター装着の指示がありましたが、尿カテが入っていません。膣内には圧迫止血のためにガーゼ。それが膀胱を刺激する…。20代の頃取ってもらった子宮筋腫は膀胱側に突出していて膀胱刺激症状で頻尿の原因になっていたのですが、それと同じように刺激する。1時間弱経過したところで我慢の限界に来てナースコールしました。最初の歩行は呼んでねということだったからです。トイレ歩行許可され無事立ち上がって歩行できました。手術説明の紙には脚には弾性ストッキングをはきますと書いてあったけど短時間手術だから適応外みたいで用意されていませんでした。こんなこともあろうかと前の手術の時のを持参していて許可を得て入室前にはいていました。下腿が圧迫されて立ち上がった時に血圧が下がるのを予防してくれるのを期待してはいていました。今回の場合血栓予防というより離床時の立ちくらみ予防です。まだモニター中だから心電図の機械を手に持ち、利き腕は正中に点滴で曲げられず、T字帯に夜用ナプキンが貼り付けてあってトイレはなかなかひと苦労でした。術中の点滴で利尿もついてたのか結局モニター装着中に2回トイレに行きました。痛みはほとんどなくて座った時に膣内のガーゼに起因すると思われる圧迫感だけ。術前がものすごく痛かったから逆みたいです。夕方に主治医の内診台での診察があってガーゼを除去して止血を確認。問題なしで翌日の退院許可が出ました。子宮鏡の内視鏡写真も見せてくれてきれいで何もなかった、と。膀胱鏡の画像では正面手前に左右の尿管口が開いているのですが、子宮鏡では逆に奥側に卵管の開口部が開いていて、おおお!と思いました。何もないなら頑張って頸管拡張せんでよかったのに…。術前の画像診断はジエノゲストで出血がある状態で撮ったからちょうど内膜が剥がれてく場面をとらえていたのかなあ。まあ異常なしで本当によかったとほっとしました。病理標本は子宮頸部のみ提出して終了です。内膜症治療のジエノゲストをやめたい旨再度相談すると、他にはミレーナを入れる治療法があるけど入れる時にさっきの外来での頸管拡張の時みたいになりそうと言われました。また頸管を拡げないと入らないのかと思うととても入れる気にはなりませんでした。円錐切除は切って断面を焼いて終わるので、縫い閉じるわけじゃないからしばらく浸出液が出るだろうという予測はつきました。入院準備物品に夜用ナプキンてあったので悪露くらい血が出るのかと身構えていたらほぼ出血はなくて浸出液だけでした。退院前に1週間後の診察まではシャワーだけ、それから性行為は禁止と指示されました。骨盤臓器脱の診療をしていた時、経膣手術後に縫った糸が溶けるくらいまで(6週間くらい)性行為を禁止していたら、夫からまだかと言われますという相談が結構あったことを思い出しました。妻は手術と術後の安静を頑張ってるんだから夫はいい歳して我慢を頑張れよといつも思っていました。その点自分は相手がいなくて安心です。彼氏が亡くなってからセカンドバージン状態。もう卒業でいいや。だから最近クスコ診自体が痛いのかな。あまりに使ってないと陰唇が癒合してしまって尿道口が奥深くに入り込み排尿に支障が出る患者さんがいます。自分もそうなるのが心配だったけど、定期的に婦人科に受診することになりそうなので、その点は大丈夫そうです。

産婦人科病棟

病棟は婦人科だけでなく産科も含めた産婦人科なので新生児の泣き声がずっと聴こえてきます。新生児の泣き声と猫の鳴き声って聴き分けるの難しくない?最初猫がいるのかと思いました。挙児希望ないから円錐切除広めに取ると言われた私のような患者や全摘になった患者、産めなくなる処置のために入院してる人と、産むために入院した人が交錯する。大部屋にしなくて本当によかったと思いました。ちょうど入院中に都知事選をやってて小池都知事が子宮全摘術を受けた時に同じようなことを感じたと話してる動画をあげていてすごく共感しました。

病理診断

退院1週間後の外来診察で病理診断の説明がありました。最終的にはCIN2(cervical intraepithelial neoplasia)中等度異形成で断端問題なし。追加治療は必要なさそうです。よかった!初めてフローチャートが「次に進む」になりませんでした。内診も問題なしでお風呂も許可されました。切りっぱなしみたいなもんだからしばらく浸出液は出るよと言われて、切りっぱなしボブみたいに言う、とおかしくなりました。今度は3ヶ月後に経過観察の検査です。

術後経過

浸出液はサラサラした漿液性で、これなら経血を受け止める用のナプキンよりも尿取りパットの方がよかったのではと思いました。尿失禁の患者さんが尿パットではなく経血用のナプキンをつけていたせいでかぶれたり蒸れて膀胱炎になったりするのをよく診てきました。受け止める対象が違うので尿は尿パットで受け止めてほしい。入院中は指示通り夜用ナプキンをしてたけど、そこまで大きくなくていいのでは?と思って退院後は多い日の昼間用ナプキンをして寝ました。すると、後ろ漏れで背中が冷たくて目を覚ましました。血ではなく浸出液でした。浸出液はあまりにサラサラで、いやこれ尿じゃないよね?と膀胱腟瘻が心配になるほどでした。ビタミン系のドリンクを飲んでみて尿が黄色くなった時に膣からの排液は違う色だったので、その可能性は否定的です。やっぱり餅は餅屋というように経血でないものを生理用ナプキンで受け止めよというのは無理がある。しかし、それまでこのような浸出液だけでしたが、内診で刺激されたからなのかお風呂に入ったからなのか、外来日以降は少し出血するようになってきました。ずっとナプキンをつけてるから皮膚がただれ気味で会陰部が痛くなってきました。もしかしたら創部の出血じゃなくて、子宮鏡で綺麗さっぱり流されてた内膜がまた少し溜まってきてジエノゲストのプロゲステロンが薄さを保とうと頑張っているのかも。ジエノゲストを処方された時に薬価がすごく高くてびっくりしたのでせっかく処方してもらったのにもったいなくて現在手元にある分までは服用しようと思っていましたがワンシート残してもうやめることにしました。月経が来ちゃったら創部の出血かどうか判断難しくなるかなって思っていましたが、一周期分内膜が溜まって月経が来る頃にはきっと創部も上皮化されてるんじゃないかな。浸出液と混ざって増幅されたように見える出血がずっとダラダラ出続ける方がメンタルも皮膚も弱ります。大陰唇には血豆のようなのができて潰れ、会陰部は皮膚に亀裂が入ったようになっていてトイレの後拭くのが地獄です。外陰部の中で会陰部は特に痛いんです。経膣手術の術後を診ていると膣前壁だけ扱った患者と会陰形成まで行った患者とで術後の痛がり方が全く違います。会陰形成した患者は痛くて座りにくいようなのでドーナツ型の座布団を勧めていました。なので経膣分娩では会陰部を切ったり縫ったりすると聞いてびっくりしていました。
ジエノゲストをやめて逆に出血は増加、2日経つと多い日用のナプキンでも布団を汚してしまうほどになりました。月経で言うと2日目の量。内膜が剥がれた出血なのか円錐切除の創部からの出血か。ジエノゲスト休薬と出血増加のタイミングが合うから休薬のせいかなあ。その日は土曜日でかかりつけの婦人科は助産師外来しか開いてないみたいだったので、主治医の外来日まで経過を見ることにしました。経過を見ている間に布団を汚すくらいの出血はおさまり、休薬後2週間で血性帯下くらいになりました。漿液性の浸出液はほとんど出なくなり粘稠度が増してきました。皮膚症状もやっと改善の兆しが。帯下もほぼ出なくなって2日くらいワンピースにノーパンで寝て外陰部の皮膚に何も当たらないようにしたらすっかり皮膚はよくなりました。トイレで拭くのも痛くなくなったのがうれしい。ジエノゲスト休薬後ちょうど4週間で月経復活。半年ぶりの月経はとても重くてとても痛い。でも月経前症状が来たら月経が始まる準備ができるのと、多い日や痛い期間がわかってるからいつどれだけ出るかわからないジエノゲストの出血より対処はしやすいです。

最後に

子宮頸部異形成は前癌病変なので、癌に進む前に対処できてよかった!検診受けててよかった。でもHPVの検査も同時に受けておいた方がよい。若い人はHPVワクチンを打っておいた方がいい。ぜひ男も検討してほしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?