「野球短歌」池松舞著 ナナロク社

プロ野球ファンなら共感する本だった。
著者は短歌が57577であること以外何も知らない状態で、2022年3月のプロ野球公式戦開幕から、阪神タイガースの毎試合ごとにその日の気持ちを短歌にすると決心して始めた。著者は東京在住のタイガースファン。
推し活本でもあり、推しと共に過ごした時間を楽しんだり、嘆いたり、愚痴ったり、それらのすべてがいとおしくなるような本なのだ。
ちなみに2022年タイガースの成績は勝率.489のリーグ3位。
クライマックスシリーズ・ファーストステージを勝ち抜き、クライマックスシリーズ・ファイナルステージでスワローズに敗れている。
リーグ優勝こそできなかったが、ファイターズファンの私から見たらうらやましいような成績だったのだが、この本を読んでいると、タイガースファンとっては、それなりの苦難のシリーズだったようだ。
なので、読んでいると「わかる!わかる!この心境!」という歌がたくさんある。
2022年8月10日の「レギュラーの半分ぐらいがいなくなり自責点ゼロで負けるピッチャー」という歌は、まるでファイターズのことを詠んでいるような気がした。2022年はコロナとケガで薄い選手層がさらに薄くなってしまって辛い夏だったのを思い出す。
2022年9月13日(糸井が引退を表明した日)の「甲子園で終われることが幸せと言った糸井の日に勝ちたかった」という歌にはしみじみしてしまった。
ちょうどこの本を読んでいる時(2023年7月1日)、エスコンフィールドでの試合で金子千尋の引退セレモニーがあって、糸井がファイターズやバファローズのユニフォームを着て、金子千尋と楽しそうに対戦していた。こういうところが糸井なのだと苦笑いしてしまう。
プロ野球ファンはもちろん、推しのいる生活をしているすべての人々に、そして推しのいない人々には推し生活の楽しさ(と苦しさ)を知ってもらうために、多くの人に読んでもらいたい。
「野球短歌」池松舞さんインタビュー タイガースを愛するゆえの喜怒哀楽、歌に詠まずにいられなかった|好書好日 (asahi.com)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?