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お寺と保育園の経営について考える ―地方寺院の未来を探して―
今回のお悩み相談
30代男性からいただいた「地方のお寺の今後について」という相談について、お話ししていきたいと思います。
相談者さんは、地方の小さなお寺で生まれ育ちました。
お寺だけでは生活が難しいため、祖父の代から保育園を経営しているそうです。
保育園の給与から私費を投じてお寺を維持していますが、多くの檀家さんからは「当然のこと」という態度を取られてきたとのこと。
現在、伽藍(お寺の建物)の修復を計画していますが、法人の赤字状態を理解していただけず、
「今までの布施から出せばよい」
「足りない分は住職家族が出せば良い」
という意見が大多数だそうです。
過疎地域であることから、保育園の閉園も視野に入れざるを得ない状況で、これ以上の私費投入は難しいと悩んでいらっしゃいます。
お寺の仕組みを知る
みなさんは、お寺ってどんな仕組みで運営されているかご存知でしょうか?
実は、お寺は宗教法人という形態をとっていて、個人のものではありません。
よく「坊主丸儲け」という言葉を耳にしますが、これは大きな誤解です。
たしかに布施収入には法人税がかかりませんが、これは宗教法人に対してのことです。
住職個人の給与に関しては、みなさんと同じように所得税が課されます。
この仕組みは、国による宗教法人への保護といえます。もし布施収入に法人税が課されていたら、おそらく多くのお寺は存続が難しくなってしまうでしょう。
保育園経営とお寺の関係
今回の場合は、宗教法人であるお寺と、学校法人である保育園という2つの法人を運営している状況です。
保育園の収入をお寺の運営に充てているとのことですが、これは法人同士の関係として整理する必要があります。
たとえば、保育園の収益は一旦個人を経由せずに、直接お寺に充てることも可能かもしれません。
しかし、それができないほど運営が厳しい状況であれば、保育園の経営改革か、思い切った決断が必要かもしれません。
これからの選択肢
意外と知られていませんが、お寺は世襲制ではありません。
血縁関係がなくても、別の方が住職として運営することは十分可能です。
まずは、住職としてどのような生き方を望むのかを明確にすることが大切です。
お寺を本当に愛していて、檀家さんとの繋がりを大切にしたいのであれば、お寺の運営に力を注ぐ価値があります。
具体的な選択肢として:
お寺の運営に専念し、保育園は別の形態を検討する
フリーランスなど別収入を確保しながらお寺を維持する
別の方に住職を譲る
お寺と保育園、両方の経営改革に取り組む
お檀家さんとの関係づくり
お寺はお檀家さんのためのものでもあります。
伽藍の修復や維持について、「お金がないから」と一方的に伝えるのではなく、お寺の現状や将来について、檀家さんと一緒に考えていく姿勢が大切です。
たとえば、自分が頑張っている姿を積極的に発信する、経営状況を定期的に報告する、将来のビジョンを共有するなど、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
寺院経営の未来に向けて
私も地方寺院の住職として、同じような課題に直面しています。
正直なところ、我がお寺も決して裕福ではなく、風が吹けば倒れるような状態です。
でも、だからこそ、できることを一つひとつ積み重ねていくしかないと考えています。
お寺は単なる建物ではなく、地域の心のよりどころ。
その存在意義を見つめ直しながら、これからの時代に合った寺院運営を模索していく必要があるのではないでしょうか。
完璧な解決策はないかもしれません。
でも、お寺の未来について真剣に悩み、考え、行動を起こそうとする姿勢そのものに、きっと価値があると信じています。
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