【気になる疑問を解決します!】創作Q&A:もしもタイトルが被ってしまったら…?
タイトルのように短いものは著作物にならない
著作物の定義は、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)でしたね。
タイトルのように短いものにまで独占使用権を認めてしまうと、多くの人が困ります。
タイトルに「『初恋』とつけた、『金閣寺』とつけた。もう誰にもまねさせないぞ」なんて言われたら、ほかの人が不便で仕方ないですね。
文学、学術、美術、音楽の作品なんて日々生まれています。著作権は出願の必要がなく、作った瞬間に発生します。
今、小説を書き、それに「さようなら」というタイトルをつけ、それを公表した直後に、「ああ、ぼくのタイトルと同じだからやめてね。それ、ぼくのものだから」なんて言われたら、効率が悪くて困ります。文化の発展の妨げにもなります。
だから、著作権法でははなから「タイトルのように短いものは著作物ではない」としているのですね。個人に権利を独占させず、みんなで使おうよということです。
ただ、世の中には短くないタイトルもあります。
たとえば、AKB48の『鈴懸の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの』などがそうです。
俳句は十七音、短歌は三十一音ですが、著作物になります。標語の創作性が認められたという判例もあります。
となると、70字以上あるタイトルも十分著作物と言えそうです。一概にタイトルだからいいとは考えないでください。
同じタイトルにするなら表現的な意図が必須
世の中には同じタイトルの作品がたくさんありますね。
特に「男と女」「ある男」「女の一生」のような短いタイトルだと、同じタイトルの名作がいくつもあるという感じです。
こうした中には「たまたま偶然」もありますが、知っていてあえてという「オマージュ」もあります。「オマージュ」は、「大好きなんで同じタイトルにしてみました」というもの。
たとえば、Mr.Childrenに『Tomorrow never knows』という曲があります。
言うまでもなくザ・ビートルズの曲と同じタイトルです。
ですが、同名異曲ですし、これは全く問題ありません。
でも、なんの意図もなく、「大好きだから」という理由だけでやらないほうがいいです。それをやったら、どうしたって比べられます。
たとえば、『人間失格』というタイトルをつければ、100%太宰の名作と比べられます。
結果、「相当屈折しているのかと期待したら全然だった」などとがっかりされます。名作と勝負しようなんて百年早いですし、損ですね。
やるのだったら、先行作品をうまく活用させてもらいましょう。
柳広司に『吾輩はシャーロック・ホームズである』という小説がありますが、これなどはオマージュであり、本歌取りでもあるでしょう。
つまり、夏目漱石の『吾輩は猫である』と、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズを作品の背景として取り入れ、表現効果の重層化を図っているのです。
こうした意図があれば、同じタイトル(似たタイトル)にする意味もあります。
悪意があるならやめる、ないなら堂々としている
タイトルは著作物にはならないと言えますが、だとしても、タイトルには作品に対する思いが込められていますから、無邪気にまねされても嫌ですし、道義的にもいいとは言えません。
平成9年に、『父よ!母よ!』というタイトルで書籍を発行した原告が、「父よ母よ」というタイトルの詩を著作権侵害で訴えるという事件がありましたが、東京地方裁判所は、シンプルな題号を特定の人に独占させるのは適当でないと判断。結果、両者は和解しました。
しかし、このとき、東京地方裁判所は、以下の日本文藝家協会の見解を、尊重に値すると述べています。
表現の自由という観点ではどんなタイトルにしようとかまいませんが、「同じタイトルにしたら誰かが間違って買ってくれるかも」とか、「誤解させて評判を落としてやれ」とか、「相手を二番煎じ扱いにさせてやる」とか、「作者に嫌がらせしてやる」とか、そういうのはだめですよね。
でも、悪質かどうか、どこで判断するかですよね。
それはタイトルだけではわかりません。作品の内容を確認するとともに、発表されたタイミングや、作者同士の関係、過去に似たようなことをしていないかなど、総合的に判断しないとわかりません。
(「父よ母よ」の詩にはそのような意図はないと判断されました)
総合的に判断しても、どこまでがよくて、どこからがだめとは言えないかもしれません。悪意があると自覚している場合は、いっそ、そのタイトルはもうやめましょう。そのほうがすっきりします。
悪意なんて1ミリもないけど、そう言われてしまったという場合は?
それは放っておきましょう。他意はないと断言できるのであれば、誰に何を言われようと堂々としていればいいのです。
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