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そのむかし、食べたり食べなかったりの病だった話。

※食べることに不安や罪悪感のある人、気持ちが落ち込んでいる人は、先に進まず、リターンしてください。無理しちゃいけませんよ。また別の記事でお会いしましょうね。




そのむかし、歌手を目指していてね。少しだけレッスン生だったことがあって。2〜3年通っていたんだけれど、自分に見切りをつけなきゃいけない時期がきてやめた。それで、夢をあきらめてわたしに残ったのは過食症だった。



きっかけは、事務所のアーティスト写真(=アー写)を撮る時いわれた『2、3日食べなくても死なないから。がんばって痩せな。』というお偉いさんの言葉。「はい!」と律儀にこたえたわたしは、その写真を撮る日まで、食べないことに決めた。けど。人の三大欲求をなめてはいけない。それはつまり、人間が生命を維持するうえで、最も重要で必要な欲求であって、この欲求を満たせないことには、心や体はバランスを崩して大変なことになってしまう。

アー写を撮るまでの1週間ほど、食べないように過ごしたけれど、2日に1回は食欲が大爆発した。食べることしか考えられなくなって、結局食べ物をたくさん用意して限界まで胃袋へかき込む。そして罪悪感と焦りでわたしが取った選択が嘔吐でさ。そしたらみるみる痩せていって。太らないどころか、痩せることができて嬉しかった。1週間後にはそのお偉いさんに褒められたし、満足のいくアー写も撮れた。



でも、嘔吐がやめられなくなっていって、エスカレートしていって。体重をコントロールできてたはずなのに、体重にコントロールされるようになって、結局7年苦しむことになってさ。もう、心も体も悲鳴をあげていた。

そんなある日、鏡を見ていた時、自分の歯の一部が溶けていることに気がついた。少し尖った犬歯のような歯で、わたしのチャームポイントだと思っていたそれが、溶けていた。発見した時の気持ちは忘れられない。そしてこれをきっかけに、数ヶ月かけてなんとかやめるに至った。
(※今読んでくださっている方で、その病と診断された方や自分はそうかもしれないと思う方は、自己流でやめようとはせずに、医療機関や周囲を頼って頼ってくださいね。)



そんな経験から、食べる行為に嫌悪感や罪悪感を感じずに素直に美味しいと思える今が、本当にありがたい。自炊も外食も旅行も帰省も安心してちゃんと笑って楽しめる。本当に本当に本当にありがたい。普段、育児に追われてわちゃわちゃした毎日を過ごしているから忘れていることもあるけれど、ふと、「あんな日々もあったな。苦しかったな。」と思い出した。今日はいつも以上に感謝して、いいたい。


いただきます。


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