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『ペナンブラ氏の24時間書店』 〜暗号を解いて謎を解き明かせ!

こんばんは、ことろです。
今回は『ペナンブラ氏の24時間書店』という本を紹介したいと思います。

『ペナンブラ氏の24時間書店』は、著・ロビン・スローン、訳・島村浩子、装画・スカイエマの小説です。
初版は2014年なのですが、それまでに現実にある名称(例えばグーグルとかキンドルとか)がたくさん出てきます。
書店/図書館/塔/エピローグと大まかな章立てはありますが、その中にもたくさんの節があり、長い物語を構成しています。

主人公は、クレイ・ジャノン。
〈ニューベーグル〉という小さな会社で働いていたが、失業。
今はペナンブラの二十四時間書店で働いている。ちなみに夜勤。
その書店での奇妙な実態を探るべく、仲間と共にこっそり作戦を実行。
思わぬ真実を知る。

その他、公式の紹介を。
エイジャックス・ペナンブラ……二十四時間書店の店主
マシュー(マット)・ミッテルブランド……主人公のルームメイト、特殊効果アーティスト
アシュリー・アダムズ……主人公のルームメイト、広告代理店勤務
ニール・シャー……主人公の友人、ソフトウェア会社のCEO
キャット・ポテンテ……グーグル社員
オリヴァー・グローン……二十四時間書店の店員、大学院生
モーリス・ティンダル、フェドロフ、ローズマリー・ラピン……二十四時間書店の顧客
エドガー・デックル……ペナンブラの弟子
マーカス・コルヴィナ……二十四時間書店のパトロン、フェスティナ・レンテ社のCEO
エリック……コルヴィナの特使

クラーク・モファット……『ドラゴンソング年代記』の著者
アルドゥス・マヌティウス……製本業者
グリフォ・ゲリッツズーン……活字製作者


物語が長いので大筋だけ書くと、
主人公はクレイ・ジャノン。二十一世紀初頭にアメリカを襲った外食産業大不況の影響で〈ニューベーグル〉という会社を一年も経たずクビになり失業。
どこかいい就職先はないか求人広告を見て探し回っていたところ、散歩中に見つけた書店(しかも二十四時間開いている?)に入ってみることに。
そこには夜勤で働ける人を募集している張り紙がしてあり、出てきた店長に相談したところ採用してもらえたので、今は〈ミスター・ペナンブラの二十四時間書店〉で夜勤の仕事をしている。店長はもちろん、ミスター・ペナンブラだ。
この書店は少し変わっていて、手前の書棚はいわゆる普通の本屋に置いてあるような書籍が(種類は少ないし偏ってはいるが)置かれているのに対し、奥の方にはグーグルにもヒットしないような書籍が納められた書棚があり、それはそれは見上げるほど高く梯子を使わないといけないほどで、その謎めいた本は買われるためにあるのではなく図書館のように借りていくものだった。そして、その奥地蔵書(ウェイバックリスト/主人公が勝手に名付けた)を借りていくのは、ある会員証を持った人たちだけだった。
夜中の間、来客があれば日時やその客の服装、どんな様子だったか、会話は何かしたかなどを日誌として記録しなければいけなかった。
これは、ほとんど客が来ない書店だからできることかもしれない。
しかし、謎の本を借りていく謎の顧客に好奇心が抑えられないクレイは、ルームメイトや途中書店に客として偶然入ってきたキャットという女の子(グーグル社員。プログラミングができる)と一緒に書店の謎を解き明かそうとする。

とはいっても、何をしたらいいのかわからなかったので、とりあえず仕事が捗るようにと書店の3Dモデルを作ってどの本がどの棚にあるか表示できるようにした。そのあとは、キャットの言葉もあって「情報の可視化」をすることになり、誰がいつ来て何の本を奥地蔵書から借りて行ったか可視化することに成功(キャットが協力してくれてグーグルのスキャナを借りた)。
すると、奇妙なことにある図形が浮かび上がってきて、よく見るとそれは人の顔だった。
朝が来てペナンブラと交代するときに報告すると、それがみんなが解いていた暗号の答えだと言い、創始者の顔だと言った。
そうか、解いてしまったかというと、今日はもう帰りなさいと言うペナンブラ。
しかし、また夜勤の時間に行ってみると二十四時間営業のはずなのに書店が閉まっている。ぽかんとしていると、ペナンブラが失踪したことを知る。やることがあると朝言っていたが、いったいどこに行ったのか……。
同じように店に来た会員たちが書店が閉まっている異常事態(つまりペナンブラがいなくなった異常事態)にパニックになり、そのうちのひとりに話を聞くことができたクレイはその会員が、五百年以上つづいている協会〈折れざりし背表紙〉(アンブロークン・スパイン)の見習いだと教えてもらった。そして別の会員からは、ペナンブラの本が燃やされてしまう、もう彼はここには帰ってこないと言われる。
それらの意味がどういうことなのかわからないまま、クレイはもうひとりの従業員オリヴァーと一緒に店の非常口から入れるかどうか試してみることに(ふたりとも店が二十四時間開いてるので鍵は持っていなかった)。
無事に入れたふたりは、ペナンブラが立ち入り禁止にしていた部屋を物色し、ペナンブラの昔の写真と(そこには創始者と思われる人物とコルヴィナという今のペナンブラのボスであり書店のパトロンと若き日のペナンブラ三人が写っていた)、ペナンブラがニューヨークに行ったことを知った。

クレイは、ペナンブラを追ってキャットとニール(小学校時代からの親友。クレイのパトロン)と一緒にニューヨークへ旅立った。
汽車で行っているであろうペナンブラに先回りするため飛行機で行った彼らは、〈ミスター・ペナンブラの二十四時間書店〉にある本のように開かれた両手のロゴマークを頼りに、キャットがコンピュータと人の手で割り出した〈アンブロークン・スパイン〉の本拠地へと向かった。
作戦は見事成功! 無事にペナンブラと会えたクレイは、ペナンブラと話し、別の場所で落ち合うことにした。クレイたちは本拠地には入れないからだ。
〈海豚(イルカ)と錨亭〉で落ち合った四人は、〈アンブロークン・スパイン〉がどういう協会なのか歴史や目的をおさらいし、『読書室』と呼ばれる場所へ行くことになった。
『読書室』はフェスティナ・レンテ社の地下にあり、鎖に繋がれた分厚い暗号本と昔のやり方で暗号を解かなければいけないこと(スマホは持ってきてはいけない)、本を汚したりしないように黒いローブを着て入ることなど、独特なルールがあった。そこでペナンブラは昔のやり方に固執しているコルヴィナ(ペナンブラのボス)と対立。本当はキャットのようにグーグルの技術でも何でも使って暗号を解読したらいいと思っているのだが、なかなかコルヴィナにはわかってもらえず、ついにはペナンブラにニューヨーク(本拠地)へ戻ってこいと半ば強制のように言い放った。サンフランシスコにあるペナンブラの書店へは、もう資金は渡さないと決めて。そうすればペナンブラは帰ってこざるを得ないと思ったからだろう。難色を示すペナンブラ。
一旦『読書室』を出た彼らは、クレイたちが泊まるホテルで作戦会議を開いた。もしグーグルのスキャナに暗号本を持っていくことができたら、もう自分の書店は無くてもいいかもしれない。そう思い始めていたペナンブラは、どうやって鎖に繋がれた暗号本を持ち出すかクレイたちの意見を聞きたがった。最終的には、クレイがよく見ていたハッカーのホームページに記載されていた厚紙でできたブックスキャナの作り方を参考に、本を持ち出すのではなく誰にもバレずにこっそりスキャンしてくることを計画した。行くのはクレイひとり。クレイにはもうひとつ、スキャンしたいものがあった。製本会員と呼ばれる会員は自分だけの人生の書〈コデックス・ヴィータイ〉を残す必要があったが、ペナンブラもその一人で、クレイはペナンブラのコデックス・ヴィータイをスキャンしたいと思っていた。

夜中の12時。クレイはペナンブラの弟子に協力をしてもらい、真夜中のフェスティナ・レンテ社に侵入。ブラックホールのように真っ暗な地下へと潜っていく。
問題の創始者のコデックス・ヴィータイ(暗号本)のスキャンは順調に終わり、次は個人的計画ペナンブラのコデックス・ヴィータイのスキャン。クレイはどこにあるかわからないペナンブラの暗号本を暗がりの中探していると、モファットと書かれた本を見つけて驚く。まさか、『ドラゴンソング年代記』を書いたクラーク・モファットじゃないよな? しかし、その暗号本は燃やされているようでほとんど灰に近かった。以前、会員からペナンブラの本が燃やされてしまうと聞かされていたが、それはこういうことだったのかと思いながら見ていると、そのすぐ近くにペナンブラの暗号本があった。なんとかしてスキャンしていく。
すると、突然地下室が明るくなり、らせん階段から人が降りてくる音がした。時計を見てみるともう朝になっていた。地下室があまりにも暗すぎて時間感覚が狂っていた。隠れるクレイ。
黒いローブを着た人がどんどん降りてきて、演壇を中心に机や椅子を下げて何か場のセッティングをしているようだった。
クレイはペナンブラの弟子に助けられ(黒いローブを持ってきてくれた)、スキャナの入ったメッセンジャーバッグをローブで隠しながら、それとなく黒ローブの群集のなかに紛れる。
最後に入ってきたのは、リーダーであるコルヴィナだった。
彼は、会員のひとりがコデックス・ヴィータイを書き上げて提出したことを皆に報告し、その暗号を解く鍵を仲間に渡したことを告げた。その暗号本は基本、書いた本人が死ぬまでは読まれることはない。だから、それまでしっかり鍵を保管しておかなければいけないので、とても重大な責任を負うことになる。
そして、もうひとつペナンブラの過失についても言及された。クレイが日誌を秘密裏に持ち出しスキャンした件で(書店について「情報の可視化」をするときにデータ元として借りて行ったのだ)厳罰に処すという。あと一回何か違反したらペナンブラのコデックス・ヴィータイは焼かれてしまうだろうとコルヴィナは周りを牽制する意味でも言った。
なぜ、本を焼くことが厳罰に値するのかというと、この協会の者にとってコデックス・ヴィータイとは死者の復活する道具であり魂でもあるのだ。だから、本がないと自分が死んだ後に復活できない。それでは、この協会に入っている意味がない。創始者アルドゥス・マヌティウスの暗号本を解けば、不死についてわかると言われていた。その魔法が自分たちにもかかると。だから、会員たちは必死に自分の本を残すし、暗号の読解も進める。しかし、コンピュータの力は借りない。マヌティウスが使わなかったものは使わない。力が失われてしまうと本気で信じていた(ペナンブラと一部の信者を除いて)。

なんとか隙を見て脱出したクレイは、泊まっているホテルのロビーでペナンブラとキャット、ニールと合流した。
スキャンは無事に成功し(ペナンブラのコデックス・ヴィータイをスキャンしたことは誰にも言わなかった)、そのデータをキャットがグーグルに持っていくことになった。そして、製本会員の儀式があったことやコルヴィナがペナンブラを厳罰に処すと言っていたことも話した。ペナンブラは意に介さなかったが。

サンフランシスコに帰ってきた一同は、また作戦会議を開いた。
今度はグーグルの社員とペナンブラの仲間と両方の人間をチームにして、作戦を立てたり実行すべきだという判断になった。
いろいろ準備をして、キャットをリーダーにグーグル総動員で謎を解き明かそうとする。
しかし、スクリーンには何も映らなかった。
何か最初に謎を解いたときのように人の顔が現れるとかそういう、何か、何でもいいから何か起こらないかと思ったが、徒労に終わってしまった。
集まっていた〈アンブロークン・スパイン〉の会員たち(ペナンブラの仲間たち)も、グーグラーたちも皆肩を落とし、そしてまたペナンブラは居なくなってしまった。

クレイはペナンブラの自宅住所を知らないので、本当にどこにいるのかわからなくなってしまった。いろんな知人に訪ねて回ったけれど、誰のところへも行ってないし連絡もしていない。
クレイはあの地下室で暗号本をスキャンしてからもう一週間が経とうとしているのに、書店での夜勤もないのに、まだ夜に眠る生活を送ることができないでいた。
仕方がないから、ニールのために『ドラゴンソング年代記』のオーディオブックをダビングしていた。というのも、ニールのために買ったものは一九八七年製のカセットテープだったので(カタログにはカセットテープだなんて明記されてなかったはず)、別にソニーのウォークマンを買って、それを流しながらPCに取り込み、ちゃんと聴けるように作業をしていた。
この作業はリアルタイムでやらないとダメなので、クレイは『ドラゴンソング年代記』の二巻を丸々一冊聴かなければいけなかったが、実は作者本人の朗読音声だったので、それはそれで楽しめた。
モファットは、あの地下室で煤だらけになったコデックス・ヴィータイが示しているように〈アンブロークン・スパイン〉の製本会員だった。ペナンブラとも仲が良く、二十四時間書店にも来ていたそうだ。
そう思いながら『ドラゴンソング年代記』を聴いてみるとなんだか不思議な気がする。
しかし、朗読を最後まで聴いていると変なことが起こった。
原作(書籍)には無い一文がプラスされていたのだ。
このオーディオブックが作成された時期は、ちょうど〈アンブロークン・スパイン〉と一悶着あった頃。クレイの中で何かが引っかかる。
こういうときペナンブラが居てくれたらよかったのだが、あいにく今は失踪中だし、コルヴィナに聞くわけにもいかない。残る手は、ペナンブラの弟子・エドガーに頼ることだった。

エドガーと連絡を取ると、あることを条件にペナンブラの居そうな場所を教えてくれるとのことだった。
その条件は、昔盗まれてしまったゲリッツズーン体の原型(父型)を取り戻してほしいという不可能に近いお願いだった。
ちなみに、エドガーはオーディオブックが嫌いで『ドラゴンソング年代記』を聴いたことはないし、モファットについてもあまり知らないようだった。
なので、ペナンブラの居場所を知るためにも、なんとかしてそのゲリッツズーン体の原型を探す必要があった。
クレイはもうひとりの店員だったオリヴァーに相談し(彼は考古学の専攻だった)、古い歴史的に価値があるものを保管する場所として博物館のアクセション・テーブル(所蔵品一覧)で探してみることを勧められた。
さっそく行ってみるクレイ。すると、ユニバーサル総合長期保管という場所に保管されていることがわかり、サンフランシスコからネヴァダへと移動した。

不可能だと思っていたゲリッツズーン体の原型(父型)一式を取り戻したクレイは、帰りの車の中で『ドラゴンソング年代記』の三巻のオーディオブックを聴いていた。三巻はモファットにとってコデックス・ヴィータイとなっているため、二巻までの設定や理路整然とした物語がまるでちがうものとなっている。それを改めて〈アンブロークン・スパイン〉の会員だったことを踏まえて聴いてみると、なんだか謎が解けていくような気がした。何をどう言う風に捉えればいいか今ならわかる。
そして、あるヒントを得たクレイは、帰宅後ゲリッツズーン体の原型の謎を解き明かすことに成功し、今までグーグルにも頼ってダメだったあの創始者の暗号本の謎も解き明かすことに成功した。

クレイは今まで関わってきたありとあらゆる人を呼び、今度こそ謎を解き明かしましたと言う報告会をすることにした。

さあ、クレイの解き明かした謎は一体どんなものだったのでしょうか?
ペナンブラは来てくれるのでしょうか?
二十四時間書店は、〈アンブロークン・スパイン〉(協会)は今後どうなってしまうのでしょうか?
ぜひ、自分の目で確かめてみてください。


いかがでしたでしょうか?
ひょんなことから大いなる謎に巻き込まれていく主人公。
具体的な暗号を解いていく描写はありませんが、皆が一様に難しい暗号を一生懸命解いているのは伝わってきます。
〈アンブロークン・スパイン〉を一種のカルト集団だと言い放つクレイですが、グーグルまで巻き込んで、その謎を解き明かそうとする頃にはクレイもある意味そのカルト集団の仲間のようなものでした。
みんなで協力しながら何か偉大なる謎を追いかけていくのはロマンがありますよね。
ですが、謎は解かれてしまったら謎ではなくなってしまうので、そのままのほうがいいと思う人もいるかもしれません。
この本は、ドキドキとワクワク、楽しい読後感をくれる本です。
魅力的なキャラクターと設定が忘れられない本になるでしょう。

それでは、また
次の本でお会いしましょう〜!



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