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生成AIについて②

生成AIについてのお話を続けます。①では古典コンピュータ(デジタルコンピュータ)が0と1の膨大な数列を扱っているのだということや、その上で実装されているAIについて様々なことを本当にわかっているのかについて少し議論しました。
今回は翻って、それなら人間の側が物事を分かっているのかについて考えてみたいと思います。

ニューロンについて

人間の神経細胞は、ニューロンとよばれ、脳にはこれが所説ありますが、1000憶個代存在しているといわれています。ニューロンには他のニューロンからの化学的な刺激を受け取る「樹状突起」というトンガリを多数もっている「細胞体」とそこから一本(例外あり)長く伸びでいる「軸索」、そしてその終点にある「軸索末端」といった構造があります。
ニューロンは、樹状突起を通じて受け取った他のニューロン等からの「入力」が一定の値(閾値、しきいちorいきち)を超えると興奮して電気信号が軸索を通って軸索末端まで伝えられます。軸索末端と他のニューロンの樹状突起の間には「シナプス」という部分があり、軸索末端に電気信号が伝えられると化学物質が放出され他のニューロンに伝えられるということが起こっています。電気信号の実態については、少々説明が厄介になるので後日稿を改めます。もっとも、「活動電位」でググっていただければ説明が出てくるはずです。
私が申し上げたいことは、ニューロンがしていることは他のニューロン等からの「入力」が閾値を越えれば興奮し他のニューロンに情報を「出力」し、そうでなければ「何もしない」ということです。これを「全か無かの法則」と言います。このあたりは高校生物の守備範囲ですね。

深層学習におけるニューラルネットワークの理論

面白いのは人間の知的営みをつかさどる脳を構成しているニューロンがやはりゼロ・イチの2択のふるまいをしている点と、1つのニューロン内での情報伝達が「電気信号」で行われているという点です。まるでスイッチのようですね。ただ、単なるスイッチではありません。どうやら、他のニューロンからの入力をすべて対等に扱っているわけではなさそうです。例えばニューロンAとニューロンBから伝えられる入力には重要度(重み付け)ランクがあるということです。重要度が高いニューロンからの入力により興奮しやすくなる。実際重み付けは変動していて、これが「学習」と関係ありそうだという話になっていて、これを実装したものがいわゆる「深層学習」の「ニューラルネットワーク」というものです。ニューロンの振る舞いを古典コンピュータ上でエミュレートしたものがニューラルネットワークだということです。
とても分かりやすい説明がありましたので、リンクを貼っておきます。
ニューラルネットワーク:IT Terminology|Best Engine
ニューロン内では情報伝達が電気信号で行われていう点で押さえておきたいのは、伝達が速く行われるような構造である「髄鞘」という仕組みをもつ軸索があるということです。これはニューロンの軸索に他の細胞が巻き付くようになっていて、電気信号の伝達を速める仕組みで、その働きを「跳躍伝導」といい信号伝達の速さをひと桁短縮します。
さて、このようなニューロンが1000憶個代存在することで、学習、記憶、感情等といった人間の高度な情報処理が実現していると信じられています。それほどの数のニューロンの振る舞いをエミュレートすることは現在の技術では困難ですし、脳の情報処理過程についてはまだまだ解明されていないことが多くあります。しかし、現実的にエミュレート可能な数のニューロンモデルでも非常に大きな成果が得られていることもまた事実です。
それでは1000憶個代のすべてのニューロンがどのように結合し、それらにどのような重み付けがなされ、どのような閾値で興奮するか否かが分かってしまえば、高度な人間の情報処理について理解されるのでしょうか?私には分かりません(笑)。時とともに入力の重み付けは変化しており、ニューロン間の結合が途切れたり、新しいニューロン間の結合が生じたりしているので、こうしたことが学習や記憶、感情と関係していると思われますが、畢竟、人間の脳がしている情報処理の機序を説明することは非常に難しいことだと思われます。
つまり人間の方を見たときにも、「分かっている」状態がいったいどういう状態なのかについては良く分かっていないということです。
(more to come, perhaps)


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