「異議あり!!」女子中学はどうなのか? 2024桜蔭中学
今までもっぱら男子校もしくは共学の中学の入試問題を見てきましたが、女子校はどうなのか?と思い、とりあえず桜蔭中学の問題を見てみようと思います。年末年始は超多忙なのですが、頑張って少しずつでも上げて参ります。
大問1は雑小問ですね。
最初は少々煩い計算問題、素数含みではありますが、執拗さは感じられませんでした。
計算式の穴埋めの問題というのは、もう方程式の問題と考えて良いのではないかと思います。ここは足し算だから逆算として引き算をして…、などといちいち考えるのはダルいでしょう。方程式だと思った方がスッキリします。一度数式として記述してしまえば、定型的な数式処理で結果が得られる(もちろん結果の妥当性の吟味は必要)というところが肝なのではないでしょうか。▢をいきなり文字でおいてもよいですが、▢を含む少し大きな部分を文字でおいた方が、扱いやすくなるのではないかと思います。
そして「場合の数」はやはり難関校のお約束なのでしょうね。調べる時の表現(縦長の図を描いて黒丸、白丸とやるか、赤字で示したように横並びに変えてしまうか)に工夫の余地はあるかなと思います。そのままの形で描いていくのは少々ダサい感じがいたします。一番下の問題は、前の問題の解答過程で得られた値を利用するだけのことだと気付けば楽勝です。逆にそこで間違えてしまっていると共倒れになります。何せすべての並べ方は、2^28 すなわち268,453,456通り存在するので、なんらかの調べ方の便法があるのだということは分かります。
この問題は説明の分かりやすさを考えてカラーリングしてみましたが、一度目の折り返しで2枚、2回目の折り返しで 2*2 = 4 (枚)、3回目の折り返しで 4*3 = 12 (枚) の紙が重なるということが分かってしまえば、図など描かなくても問題はありません。△ABCを12枚並べれば正12角形になることも、面積が12倍になることも分かります。受験現場のお嬢様方は、丁寧に元にもどす図をお描きになって確信をもって解答されたかもしれません。ただ、最後の問題をやるにあたっては、図7で面積計算をして、12倍すればいいんだと気付かれたことでしょう。πを使って数式処理をして、最後の最後で3.14を代入すべきだということは言うまでありませんね。些末なことですが、この問題で少し意地が悪いと思ったのは「直径1cm」としてあるところです。私は最初誤爆して半径1cmとしてしまい、△ABCの面積に比して切り抜いて残った部分の面積が小さすぎる、何かおかしい、と察知できたので、事なきを得ました。こういった「見積り」が出来ることは非常に重要なのではないかと思います。
アメリカのある大学の名物教授による物理学の講義の最初で、
a×10^n (0≦a<10) という表記に関して「a の部分の違いなんてとるに足らない。n の方がずっと重要だ」と仰っていたことが印象的でしたが、確かにそうです。1億1千万円と1億2千万円の違い(それなりに無視できないものではありますが)よりも、1憶1千万円と1200万円の違いの方が圧倒的にヤバいということです。
さて、大問2になりましたが、この問題には非常に大きな瑕疵があります。最難関校の入試問題でこのような瑕疵があり、それに気付かないか、気付いていても「忖度」して解いた受験生ならばよいのですが、そうでない非常に優秀な受験生は悩んでしまったかもしれません。その瑕疵については後で述べます。一旦は瑕疵に目をつぶって検討しましょう。
絵の具の使用量は塗装する面積と比例関係にあるという理想化された前提が受け入れられれば難しい問題ではありません。あとは「ドベネックの桶」の考え方が必要かと。この部分は評価できます。
最後の小設問ではやはり文字を使い不等式を立てました。算数的な表現でウザイ作業をするよりスッキリします。そこまでの問題でもいえることなのですが、いちいちそこまでやる必要を感じなかっただけです。
重大な瑕疵さえなければ、この問題は高く評価できるものだと思います(上から目線的な物言いだとしたら、失礼をいたしました、そのような積りはございません)。
では、重大な瑕疵とは何か。
それは、絵の具の量を体積(単位mL)で表したことです。
科学的な知識がある人ならお分かりになることだと思います。物理的・化学的変化の前後で物理量が変わらないことを「保存則」といいますが、体積に保存則は成り立ちません。10 mLの青色の絵の具と 10mLの黄色の絵の具を混ぜると緑色の絵の具が 20 mL 出来ることは例示されており、これが本問では体積に保存則が成り立つことを暗示しているつもりかもしれませんが、では赤色と黄色を同じ量混ぜると出来るとしているオレンジ色の場合はどうなのかについては書かれていません。
何を言っているかを理解していただくために、気体の反応について考えてみたいと思います。ここでは、標準状態を慣例にならって高校レベルの表記で書きますと、 0 °C(273 K)、圧力を 1013 hPa です。標準状態において、気体分子 1 mol が占める体積は22.4 Lになるということが分かっています。
これに従えば、水素44.8Lと酸素22.4Lを反応させると、水蒸気として44.8Lの水になります。67.2Lではございません。
絵の具を混ぜ合わせたときに起こっている化学的な変化の詳細が分かりませんが、「体積に保存則は成り立たない」ということは理系の素養がある人にとっては常識だと思います。
前に算数の「食塩水の濃さ」の問題で、質量ではなく体積を条件として与えるという問題を見かけたことがありますが、本問もそれに相当するくらい大きな過ちを犯しています。
「天下の桜蔭」の問題にはあってはならない罪深い瑕疵であると指摘したいと思います。出題者は、数学の先生だと思いますが、理系の教育を当然受けている筈ですよね。だとすれば、どうしてこの瑕疵を看過されたのでしょうか?はっきり申し上げます。
「専門バカで理系の嗜みを身につけていないのですか?何なら、アタマ大丈夫ですか?」
私が理事長ならば、この出題者やそれを看過した人たちをクビにしますね。恥さらしなのですから。
「相手は小学生だから、ま、いいか」としてしまったのならもっととんでもない話で、こんな学校に子供を通わせるべきではありません。これは体積ではなく、単純に質量(単位はgでもmgでもいいですが)にすれば済むことで、それさえしていないのです。そのような訂正を行ったとしても問題の難易度が変わらないでしょう。
私は憤りを隠せないほど頭にきており、厳しいことを書きました。
貴重な小学校時代の2~3年(いやもっと?)をかけて、その学校にあこがれて勉強してきた受験生に与える問題は、その頑張りに報いる誠実さが感じられるものであるべきです。
また、その学校の「学力観」を世に問うものであるべきだとも考えます。
その点で同じ最難関の男子校である開成中学には脱帽していただけに、桜蔭中学には大きな失望を感じました。受験生を舐めてはいけません。
続きは少し頭を冷やしてからにしますね。Let's call it a day!
追記:色を3色使うなら、赤R、緑G、青Bでしょ!?