![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/162979909/rectangle_large_type_2_5a3eb86728a6d4c89ef6769a5162ec65.png?width=1200)
日々、罪と罰とともに。
ドストエフスキー『罪と罰』の読書会/12月20日まであと一カ月を切り、さすがにやばい、となっている。
海外にまで持ってきて今も本棚で眠っている、1ページに1,000字ぐらい詰め込まれてそうな古代書ばりの文庫本は諦め、読みやすいと評判で今夏に買った亀山さん訳のKindle三冊分も、タブレットで開く際の寄り道への誘惑が多すぎて断念。
先日から、泣く泣くAudibleに切り替え、完全版を日々一章ごと聞いている。
するとなんと、なんと。
物語が急に進みだしたではないですか。
愕然、感動、(紙好きとしての)ちょっとした悲哀。
いや、私の場合は、紙で読んでいても脳内で声が再生されるタイプなので、AudibleはむしろKindleよりも、紙読書に近いのかな。
ドストエフスキーの、ともすれば冗長な会話文が、二倍速で聞くことで不思議や不思議、急にスタイリッシュに立ち上がり、自分がそのど真ん中に入れてもらえた感覚がする(テーブルの下に隠れてたら、お兄ちゃんたちががんがん話し始めて出ていけない感じ)。ー どうも口述筆記で書かれた書物なので、朗読との相性がいいらしいと後で聞いた。
しかも、これはとても個人的な感覚だけど、ちょっと重めのラスコリーニコフ君の声が、2倍速にすることで急に「進撃の巨人」のエレンのように聞こえて、考え方の傾いた不健康な感じや、ひどい思い詰め方もなんとなく似ていてかなり乗ってくる。これは大きい。
ときどき、あまりに見事な描写に出会うと、音声を止めてKindleに戻り、アンダーラインを引くのだけれど、たしかに読みやすい亀山訳よりも、古めかしい米川訳のほうがズシンと心に響くことがあって、おおお、となってる。
それにしてもラズミーヒン君がいい奴すぎて圧巻。
図々しく暑苦しいところも含めて、なんという頼もしい人。
この物語の醍醐味のひとつは、ラズミーヒンに限らず全ての人物が、接する相手によって自分の人間性の表出する部分をプリズム反射ようにあざやかに変化させる、その克明で精緻な記録にあると思うのだが、ラズミーヒンをここまでいい奴にしてしまうラスコリーニコフ君にこそ、じつは何かすごいものがあるはずで、それが今のところ、最大の謎(まだ第一巻…)。
神経衰弱のラスコリーニコフくんの気がまぎれるだろうと、パーティーに警察とか呼んじゃうのも含めて、ブラックコメディー色も満載。
いろいろ豊かな時間を一カ月も前からもらえる読書会。
今年はいいクリスマス・プレゼントをいただいたなあ。