声の魔法!🪄vol.6 かすれ声の対処法
声のかすれは病気なの?
前回投稿はこちら。
声の問題は耳鼻咽喉科へ
今回とりあげるのは声のかすれについて。まず大前提として、声がかすれてきたなというとき、2週間以上たっても治らない場合は、病院へ行くことをお勧めします。行き先は耳鼻咽喉科。声帯は喉ですから、耳鼻咽喉科の管轄です。ただし耳鼻科クリニックは耳しか対応していないところもありますので、行く前に確認しましょう。
いきなり病気の話をしてしまいましたが、今回のテーマはアナウンサー視点はお休み。言語聴覚士の立場からお送りします。
と言いますのも、声のかすれには重大な病気が隠れている場合があります。喉頭がんがその最たるもの。発見が遅れると声帯を含む喉頭を摘出しなくてはならなくなり、一生声が出せなくなってしまう可能性もあります。喉頭がんの初期症状は声のかすれであることが多いです。
そのほか、声のかすれの背景にありそうな症状といえば声帯にまつわるものばかり。声帯が傷ついていたり、萎縮していたり、ポリープのようなものができていたりといったことがあります。いずれにせよ、一度医師に見てもらうのが安心です。
声帯の話
普段の声帯は開きっぱなしです。声帯より下は肺につながっているわけですから、呼吸をするために開いているのです。それが一転、声を出すときには筋肉の働きによって閉じぎみになります。発声時には肺から上がってくる呼気によって声帯を覆っている粘膜が震え、この震えによって喉頭原音という、人間の声の源となる音が生み出されています。
声のかすれは、この声帯の異常によって起きることが多いです。たとえば粘膜部分にぽこっとポリープができたとしましょう。声帯は左右対称にぴったり閉じるからこそ、いい喉頭原音を生み出します。しかしそこにポリープがあると、声帯がぴたっと閉じることができず、隙間ができることになります。この隙間から空気がもれて、かすれ声になってしまうのです。
ほかにもなんらかの原因で声帯が萎縮してしまった場合。筋肉がどれだけ頑張って閉じる動きをしても、声帯自身のボリュームが減っているわけですからぴったり閉じ切ることができません。結果的にかすれ声になります。
つまり、声のかすれは声帯の動きの不均衡と言い表すことができます。
声帯病変によって変わるリハビリテーション
上記で説明した声帯ポリープと声帯萎縮(声帯溝症などが代表例)では、行うリハビリの内容がまったく違います。声がかすれたなという場合はまず耳鼻咽喉科へ相談しましょうと冒頭でお伝えしたのは、間違った練習を行うと、声のかすれがますます悪化する恐れがあるからです。正しい診断を受けた上で、かすれに対応する練習を行いましょう。
生まれつきかすれ声という場合の練習方法
軟起声から硬起声発声へ
昨日今日かすれたわけではなく、生来のかすれ声や弱々しい声である、という場合は、自主トレで改善する場合があります。こうした方々の特徴として、軟起声発声であることがあげられます。軟起声に関してはvol.2の投稿をご覧ください。
軟起声は声帯の接触を軟らかくする発声です。当たりが弱いため、よく言えば優しく控えめな、悪く言えば弱々しくかぼそい声になりがちです。声のかすれは声帯が閉じるときの不均衡からくる隙間が引き起こしていると言いました。当たりが弱いから隙間ができると考えることができるため、当たりを強くし、しっかり閉じ切ることで改善します。
必要なのは硬起声発声です。
硬起声発声の感覚の話
感覚的に言えば、のどにぐっと力を入れて、声帯を締めてから、一気に解放するかのような話し方をします。
硬起声発声の理論の話
とにかく声帯を強く締めることが大切です。のどをぐっと締める練習で、声帯筋を鍛える必要があります。練習方法は以下の2つです。
プッシング:両手を壁にあて、力の限り壁を押します。人間は力が入ると声帯が閉じます。声帯が開きっぱなしだと圧力がかけられず、力が入らないからです。いきむ、というときの動作です。
プリング:写真のように胸の前で手を組み、引っ張り合います。これも上記と機序は同じです。
プッシングもプリングも、声帯に力が入り、ぐっと閉じていることが大切。押したり引っ張ったりしている間、息は止まっています。呼吸しながらやっても意味がありませんのでご注意ください。
声のかすれを改善して、よりハリのある声へ
かすれ声の原因は声帯の隙間であり、発声のために使われるべき空気が漏れてしまって、効率的な発声ができていない状態です。そのため声も小さくなります。声帯をしっかりと閉じられるよう声帯を動かす筋肉を鍛えることで声のハリを取り戻し、人前でも堂々と響く声を手に入れましょう。
なお、声帯を酷使してしまった場合もかすれ声になります。特に酷使したおぼえがなく、常日頃から硬起声発声をしていて、大きめの声を出す機会が多いという場合は、声帯の酷使にあたります。この場合、ポリープができていることが多いです。そうした状況ではプッシングやプリングは厳禁。必要なのは声の衛生指導といって、声帯を痛めつけない発声=軟起声の習得を目指します。
同じかすれ声でもまったく対処法が違うと言ったのはこういうことです。練習法を誤る前に耳鼻科受診をしましょう。
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