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ミスを生まないために。校閲記者が書く社内向けコラム「語ちゅう意」
中日新聞校閲部の主な業務は、もちろん新聞紙面の校閲です。「読む」ことがメインの職業ですが、時には「書く」ことも。
これまでにも何回かご紹介した、月1連載「校閲記者のほぉ~ワード」もそのひとつです。
👇「ほぉ~ワード」についてはこちらから。
そのほかにもうひとつ、こんなものがあります。
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今回は、この「語ちゅう意」が何かを紹介していきたいと思います。
「語ちゅう意」って?
朝刊紙面に連載している「ほぉ~ワード」は、読者に向けて書いていますが、こちらの「語ちゅう意」は社内向けのコラムです。
月に1度、地方支局・通信局で働いている記者に向けて発行している社内報「地方レター」に載っています。
題名の通り、用字用“語”に関する“注意”喚起をテーマに、毎月担当の校閲部員が作成しています。
なぜ、地方の記者に向けて校閲部が発信するのか。
それは、校閲記者は原稿を書いた記者本人と直接やりとりをする機会が滅多にないからです。
校閲記者がやりとりするのは主に、紙面に載せる記事を統括する「デスク」と呼ばれる人たち。
校閲をしていて気になった点はまずデスクに伝え、事実確認が必要なものはデスクを通じて書いた記者に確認をしてもらいます。
しかしながら、「この漢字は新聞では使えないですよ」や「この表現は誤用とされていますがどうしますか?」といった、表記・表現に関する指摘は、デスクの判断で直すことがほとんどです。
そのため、なぜ直したかを記者本人にこちらから伝えることができません。もしかしたら、その記者はこれからも同様の表記・表現を繰り返し用いるかもしれません。
現場で働く記者たちに間違えやすい表記や表現をあらかじめ注意喚起し、より良い記事を書くための参考にしてもらうのが「語ちゅう意」の役割です。
中身はこんな感じ
担当するのは主に若手の部員で、だいたい2〜3年に1度回ってきます。
「用字用語に関する注意喚起」という枠組みの中で、担当者はそれぞれテーマを決めます。
最近取り上げられたのは、共同通信社「記者ハンドブック」改訂に伴う変更点について。
共同通信の記者ハンドブック第14版が届きました!緑の表紙が新鮮です。5年以上使った13版は表紙の文字が消えてボロボロです。😅
— コトバのゲンバ(中日新聞校閲部) (@kotoba_no_genba) March 18, 2022
「テークアウト」が「テイクアウト」になるなどコロナ流行を反映した変更点も。本紙への適用まで少し時間があるので、それまでに読み込んでおきたいと思います。 pic.twitter.com/jy4T4h3N1J
少し前に、中日新聞の表記の拠りどころとなっている「記者ハンドブック」が改訂されました。
外来語の表記が変わったり、「誤りやすい語句」のコーナーに新たな語句が加わったり…。
時代の潮流に合わせて、新聞の表記も変化しているのです。
そういった変更点にいち早く気づいて対応してもらうよう促しました。
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取り上げる内容は、必ずしも「記者ハンドブック」に書かれていることだけではありません。
サッカーのワールドカップや高校野球、囲碁将棋用語など、その時々の流行や時事ネタに合わせたものも。
同じようにハンドブックや辞書を使って校閲をしていても、取り上げる内容は本当にさまざま。担当する部員によって、その内容は多岐にわたります。
「この人はこういうのに興味関心があるんだ〜」と新たな一面を知るきっかけになったりもします。
完成までの道のり
ここからは、「語ちゅう意」が出来上がるまでの過程の話です。
担当になったらまず、何を取り上げるかテーマを決めます。
ずっと温めていたものだったり、時勢に合わせたものだったり。数年に1度の機会なので、テーマ設定は悩みどころです。
テーマが決まったら、A4用紙1枚にまとめます。ただ、まとめられたら完成、ではありません。書かれている内容が適切かどうか、月に1度の勉強会で発表をして他の校閲部員から意見を募ります。
👇勉強会の様子はこちらから。
日頃、紙面の誤りに目を光らせている校閲記者たちですから、部員の書いた文章であっても容赦はありません。
毎回、鋭い意見や質問が飛び交います。
そして、勉強会での指摘を参考に改良を加え、翌月の勉強会で再び発表します。
2度目の発表を終え、誤字脱字などの最終確認をしたらようやく完成です。
社内に向けて発行する「語ちゅう意」も、正確で分かりやすい紙面となるよう、ふだんの新聞校閲と同様に細心の注意を払って作成しています。
日々の校閲業務が“ミスが残るのを防ぐ仕事”だとすれば、この「語ちゅう意」は“ミスが生まれるのを防ぐ仕事”と言えるかもしれません。
次回の更新で
「語ちゅう意」6月号では、noteと連携した企画に初挑戦。
それがこちらです。
その前に、まずは「語ちゅう意」の存在を知ってもらえたら、と思って今回この記事を書きました。
社内の人だけでなく、一般の人も楽しめる内容になっているので、ぜひそちらもご覧ください!