コトバのゲンバ(中日新聞校閲部)

記事を書かない新聞記者「校閲記者」のnoteです。中日新聞校閲部の記者たちがコトバと奮闘するゲンバを伝えます。 内容は十分に精査することを心がけますが、会社や部の公式見解ではないことをご承知ください。

コトバのゲンバ(中日新聞校閲部)

記事を書かない新聞記者「校閲記者」のnoteです。中日新聞校閲部の記者たちがコトバと奮闘するゲンバを伝えます。 内容は十分に精査することを心がけますが、会社や部の公式見解ではないことをご承知ください。

マガジン

  • 『記者ハンドブック』と校閲

    共同通信社が発行し、中日新聞社も準拠している新聞の用語集『記者ハンドブック』。校閲に限らず、中日記者必携のこの用語集を紐解きます。

  • 校閲記者の「ほぉ~ワード」

    中日新聞本紙で月イチ連載の言葉のコラム「ほぉ~ワード」。派生調査企画の「ほぉ~げんワード」と合わせて、これまでの記事や舞台裏をまとめました。

  • きっかけの話

    「校閲記者になりたい!」と思ったきっかけの話をまとめています。同じ職場で働いていても、そこにたどり着くまでの道のりは十人十色です。

  • 中日ドラゴンズと校閲

    中日新聞校閲部には熱狂的なドラファンが多くいます! ドラゴンズの記事を担当するときは、より赤鉛筆を持つ手に力が入ります。

  • ポッドキャスト出演回まとめ

    中日新聞ポッドキャスト「あしたのたね」に校閲記者が出演しました!普段は中日新聞Webと各音声プラットフォームで配信していますが、コトバのゲンバをフォローしてくださっている皆さんにぜひ聞いてほしいと思い、出演した回をnoteでも配信することにしました。ぜひお聞きください。

最近の記事

クイズ! 似たものどうし

私がとっても苦手で、しかしよくある校閲泣かせの問題があります。 それは「よく似た文字」。 新聞で主に使われるのは「ゴシック体」と「明朝体」ですが、この字体によっても見分けづらいものが出てきたりも。 今回はその例をクイズ形式でご紹介します。 答えは最後に記載するので、間違っているのはどちらなのか、皆さんも校閲気分で解いてみてください。 レベル1 「ー」と「―」 明朝体だと伸ばし音なのか長棒なのか、実はすぐに見分けられるのですが、ゴシック体になると急に難易度が上がります。 今

    • 動物が「死亡」? 記者ハンドブックと「死んだオウム」

      ペットロスの記事で。動物園の記事で。あるいは競走馬の記事で。 例の単語に出くわします。 その度にこう思うのです。「さて、どうするかな」と。 動物に死亡は使わない。校閲を含め、新聞記者として歩み始めた人が聞いてまず「え、そうなの!?」と驚くと思われる記事の取り決めのひとつです。 近い表現として、「亡くなる」も動物で使うことを避けています。「パンダが亡くなった」と言われると、「死ぬ」よりも丁寧で婉曲的なニュアンスがある分、「死亡」よりも違和感は強いかもしれません。 新聞

      • 「阿部一」「張本智」など。こういう名前表記もチェックしています。

        パリ五輪もあっという間に終わり、次はパラリンピックですね。 今大会は時差の都合上、新聞製作と同時並行で競技が行われており、校閲をしながらリアルタイムで一喜一憂していました。 ところで、五輪に関する記事や見出しでこんな表記を見かけませんでしたか? このように、新聞では人名を「名字+名前の最初の1文字」で表すことがあります。スポーツ記事で特に多く見られ、同じチーム内、あるいは同じ競技内に同姓の選手がいるとき、どの選手のことを指しているのかを分かりやすくするための表記です。

        • スポーツの公式情報が意外と詳しくて驚いています。

          パリオリンピック、始まりましたね! 紙面でも選手たちの熱い戦いを連日お伝えしています。 というわけで(?)、今回はスポーツ記事の校閲でお世話になっている、妙に手厚い公式情報のお話です。 公式情報が手厚いと嬉しい運動面の校閲において確認しておきたいポイントはたくさんあります。 そのときにまず参照するのが公式の情報。 競技を統括・運営する団体や選手の所属先などが出しているデータです。 これが詳しくて確認が取れる要素が多いと、校閲記者としてはとても心強いのです。 実のところ、

        マガジン

        • 『記者ハンドブック』と校閲
          7本
        • 校閲記者の「ほぉ~ワード」
          8本
        • きっかけの話
          6本
        • 中日ドラゴンズと校閲
          5本
        • ポッドキャスト出演回まとめ
          3本
        • 校閲記者の仕事道具
          4本

        記事

          最初のあいさつ、どうする?

          出社して自分の席に向かう途中、同僚と目が合いました。 さあ、あなたなら、なんと声をかけますか? 初めましての人と話をするのってなかなか難しいですよね。私もオープンな性格ではないので、新しい場は緊張します。 でも、あいさつなら。1年目の私もそう思いました。 ということで、出社後の第一声。 一般的には「おはようございます」でしょう。 ところが夜勤がメインの私たち。出社は午後6時前後です。 「こんにちは」か「こんばんは」か。私ならシーンや季節によっては迷ってしまいそう。 学

          最初のあいさつ、どうする?

          【後編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

          前編はこちら▼【以下後編】字体統一のメリットとデメリット新聞のルールで名前の字体を変えた結果、その人が普段使っている表記や他のメディアでの表記と異なることで、「同じ人物」を指すことが分かりにくくなってしまうとすればデメリットと言わざるをえません。 新聞は「分かりやすい」記事を旨とします。普段「臺」を使っている人の名前を「台」にすると、字体は「分かりやす」くなりますが、「臺」と「台」が〈字体が異なる同じ字種である〉という知識を読者に要求する、という点では「分かりにく」くなって

          【後編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

          【前編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

          「宮﨑 駿 監督作品」泣く子も黙るスタジオジブリ作品「君たちはどう生きるか」が公開された2023年夏、校閲部内(の一部)に動揺が走りました。 宮崎駿が「たつさき」になっている…ざわ…ざわ アシタカ「じいじ、何だろう」 じいじ「分からぬ。人ではない」 アシタカ「村の方はヒイさまが皆を呼び戻している」 じいじ「来おった……タツサキだ!!」 アシタカ「タツサキ!?」  ♪ デッデー、デデデッデー 映画ポスターの監督名表記がこれまでの「宮崎駿」から「宮﨑駿」にさりげなく変わって

          【前編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

          紙面の常連?「決まりもの」

          当たり前の話ですが、日々の新聞には政治、経済、事件・事故などさまざまなニュースが載っています。そのため同じページを開いたとしても毎日全然違う見た目をしています。 一方で、毎日決まってだいたい同じ場所に掲載されるものもあります。それが「決まりもの」です。もちろんこれらも僕たち校閲記者がチェックしています。今回は紙面の「常連」である決まりものを紹介します。 季節によってさまざま 「首相の一日」や「中日春秋」など季節に関係なく毎日掲載されているものもありますが、多くはその季節

          紙面の常連?「決まりもの」

          年齢はしごを上り下り

          「♪ハッピバースデートゥーユー」 「え?」 「今日誕生日でしょ?」 「明日だけど」 「ほ……♪法的にートゥーユー」 何を言っているのでしょう。 実はこの人の歌っている通り、法的には年を取るのは誕生日の前日と定められています。このため、小学校に入学するのが最も若い子は3月31日ではなく4月1日生まれの子であり、選挙権や被選挙権の年齢は投票日ではなくその翌日を基準にします。 今年2024年は2月29日が存在するうるう年。「4年に1度しか年を取らないから僕は15歳だよ

          記事をチェックするコツ、紹介します

          中日新聞に入社したとき、校閲部長から配られた資料の中に「注意 間違いのパターン」なるものがありました。 新聞校閲をする上で注意すべきポイントがまとめられています。 文章を書く上でもお役に立つことがあるかもしれません。いくつかご紹介します。 ※以下、間違いの数字や人名、描写は実例を基にしたフィクションです 1月31日午後9時。 夜ご飯を食べ終え、コーヒー片手に2月1日付朝刊の記事を一生懸命校閲しています。 ①日付 ある原稿に事件の発生時刻が「2月1日午後2時」とあ

          記事をチェックするコツ、紹介します

          方言調査企画「ほぉ~げんワード」の舞台裏

          方言調査企画の「ほぉ~げんワード」が始まって早3年。 気づけば7回目です。 うち3回は私が気になったテーマについてアンケートをとりました。 下のリンクはその一つで、最新の企画です。 校閲といえば、「記事を書かない記者」。 そんな中でほぉ~げんワードは、アンケートをとり、結果を集計し、紙面のみならずウェブ限定の記事も掲載する、校閲部員にとってはちょっと異端な企画です。 今回は、このほぉ~げんワードの執筆過程についてお話します。 まずは題材 初めに題材を探さなければ始まりま

          方言調査企画「ほぉ~げんワード」の舞台裏

          今まで書いたことばのコラムまとめ2023

          中日新聞教育面で月1連載中のコラム「校閲記者のほぉ~ワード」。思わず「ほぉ~」と言ってしまうような言葉の話題を取り上げています。 2023年の記事をまとめました。中日新聞Webにて無料でお読みいただけます。登録も不要ですのでぜひリンクからどうぞ!👇 「着陸体勢」「着陸態勢」どっちを使う? 新聞の漢字「着陸体勢」から「着陸態勢」へ。中日新聞が準拠する共同通信社発行の『記者ハンドブック』では2022年から表記が変更になりました。用語が改められる背景を、共同通信社の用語担当者へ

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          <読者の理解を助け、紙面を魅力的に彩る> 新聞社のデザイナーってどんな仕事? 同期に聞いてみた

          われわれ校閲部が所属している中日新聞社編集局には、社会部や経済部、運動部などさまざまな部署があり、そのうちのひとつに「デザイン課」があります。紙面に載せるグラフィックス(中日新聞では“CG”と呼んでいます)を制作している部署です。 実は、校閲部は新聞製作の上でデザイン課と直接やりとりをすることは少なく、どんなふうにCGが作られているのか詳しく知りません。そこで今回は、そんなデザイン課の仕事について話を聞いてきました。 部署の垣根を越えた対談記事の第2弾です! 【第1弾は

          <読者の理解を助け、紙面を魅力的に彩る> 新聞社のデザイナーってどんな仕事? 同期に聞いてみた

          野球とともにある校閲

          文を読む職業だから「校閲部員はみんな読書が趣味!」と思うかもしれません。実際そういう部員もいます。 そんな中、私の趣味は「野球観戦」。特に推しは中日ドラゴンズ。 幼いころは嫌で仕方なかった野球。ただの趣味から、「校閲」の役に立つようになった経緯をお話しします。 ▽憎くてたまらなかった野球中継関東在住の小学生だった約二十数年前、野球は私にとって悪夢でした。 1990年代といえばテレビの地上波で、ほぼ毎日19時から野球中継(特に巨人戦)をやるのが当然の時代。つまり、その時間帯に

          「分かる」から分からなくなる? 言葉と格闘する日々を通して鍛えたいもの

          校閲作業で励みになっている本の紹介をします。 ことばの基礎力『ふだん使いの言語学―「ことばの基礎力」を鍛えるヒント―』 (著・川添愛/新潮選書) 理論言語学を学んだ著者が〝「言語学って何の役に立つんですか?」という疑問に取り組んでみたい〟(p.5)と冒頭に述べるこちらの本。 教科書のように文法の解説が並んでいるわけではなく、虎の巻のように「これが正解!」と理想的(とされる)文例を紹介しているわけでもありません。 載っているのは、言葉に対してアンテナを張ったり言葉を分析し

          「分かる」から分からなくなる? 言葉と格闘する日々を通して鍛えたいもの

          【第3回】中日新聞ポッドキャスト 「あしたのたね」 鳥の目・虫の目でミスを逃さぬ 校閲記者

          中日新聞のポッドキャスト番組「あしたのたね」に校閲記者が出演しました! 普段は中日新聞Webや各音声プラットフォームで配信している番組ですが、今回は特別にnoteでも配信することになりました。全3回、校閲記者の生の声をぜひ聞いてみてください。 配信内で紹介したおすすめnote記事はこちら👇 ✑AIが作った文章を校閲したところ、気になる表現が…!校閲記者としてどう向き合うか、考えてみました https://note.com/kotoba_no_genba/n/n7fa9ac35a9a6 ✑僕が言いたいのは永遠 https://note.com/kotoba_no_genba/n/n1ec1979690d7 【出演】沓掛良(名古屋本社校閲部)、浅井弘美(MC、編集) ご意見・ご感想をお寄せください。https://bit.ly/3E7BG8n 「あしたのたね」のほかの配信はこちらから 🎧中日新聞Web https://www.chunichi.co.jp/corporate/podcasts 各種プラットフォームでも配信中! 🎧Spotify https://open.spotify.com/show/2KH6BTR1dAzB3JmhrdOIAR?si=88297b810bd14318 🎧Apple Podcast https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E4%B8%AD%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E-%E3%81%82%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%81%AD/id1654880851 🎧Google Podcasts https://podcasts.google.com/search/%E4%B8%AD%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E%E3%80%80%E3%81%82%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%81%AD 🎧Audible、Amazon music  https://amzn.asia/d/9sdwzEy ※公式X(旧ツイッター)https://twitter.com/chupodcasts

          【第3回】中日新聞ポッドキャスト 「あしたのたね」 鳥の目・虫の目でミスを逃さぬ 校閲記者

          【第3回】中日新聞ポッドキャスト 「あしたのたね」 鳥の目・虫の目でミスを逃さぬ 校閲記者