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父ちゃん85日目~第二の脳を極めし者〜
心太朗と澄麗は、相変わらず「何かにハマっては飽きる」を繰り返している。今回のターンは腸活ブーム。心を壊して仕事を辞めた心太朗がたどり着いた「最強の回復魔法」は睡眠だったが、「もっと心を良くしたい!」と探し続けた結果、腸にたどり着いたのだ。腸と脳の深い関係を知り、善玉菌を増やす食生活を始めた一家。しかし、息子・健一の笑顔を見て、心太朗はあることに気づく。
**父ちゃん85日目(2月9日)**
心太朗と澄麗は最近 腸活 にハマっていた。
いや、正確には 定期的に何かにハマっては飽きる を繰り返しているだけで、今回のターンが「腸活ブーム」なだけである。
ちなみに、心太朗が腸を気にするようになった理由はシンプルだ。
「心を壊して仕事を辞めた」
……いや、シンプルに言いすぎた。本人にとっては壮絶な戦いだったが、まぁ要するにメンタルがズタボロになってしまったのだ。
そこからの復活劇がすごい。あれこれ試した結果、たどり着いた結論は 「しっかり寝ること」だった。
「色々試した意味よ」と思わなくもないが、これが 最強の回復魔法 だった。
ただ、心太朗は欲張りだ。「もっと心を良くしたい!」と考え、次なる秘策を探した。
そして出会ったのが 腸活 である。
「腸と脳は繋がっている」という衝撃の事実。
なんなら 「腸こそが本当の脳で、頭にあるのはただのサブ機能」 という説まである。
え、じゃあ今までの人生、オレはサブ機能で生きてきたの?
さらに、「腸が整うとメンタルが安定する」と聞いて、心太朗の興味は最高潮に達した。
そういうことなら、腸を鍛えるしかない。腸内フル強化モード、発動だ。
腸活について調べるうちに、日本語の奥深さにも気づいた。
「肚をくくる」「肚が立つ」「肚に落ちる」
――まるで昔の人は 腸で人生を決めていた かのような表現の数々。
しかも「肚」は 「月」と「土」 でできている。
腸は 「人間の土台」 なのだ。
「良い土でなければ、良い実も実らない」
――つまり、オレの人生の収穫がしょぼかったのは 腸が整っていなかったから では?
いや、たぶんそれだけじゃない。けど、そういうことにしておこう。
澄麗も産後、どうもお腹の調子が悪いらしく、 腸活せざるを得ない 状況だった。
心太朗だけなら「また変なこと始めた」とスルーされるところだが、澄麗も巻き込まれたので 本格的なプロジェクト になった。
そして 腸活に必要なのは結局「食事」と「運動」 である。
「おい、結局そこかよ!」と思ったが、避けられないらしい。
運動はウォーキングやジョギングが効果的。
食事は 善玉菌を増やす食材 を意識するのが大事。
ヨーグルト、納豆、チーズ、キムチ、味噌……。
が、しかし。
ここで 衝撃の事実 が判明する。
「人の腸内にいる善玉菌は個人差があるため、適当に善玉菌食品を摂取しても、必ずしも効果があるとは限らない」
えっ。
じゃあ オレがここまでやってきた腸活、ただの気休め?
と思いきや、 「すでに腸内にいる善玉菌を増やす食材」 という最強の武器が存在した。
それが、 海藻類・キノコ類・イモ類・ゴボウ などの食物繊維パワー軍団である。
もともと納豆は食べていたが、それに加えて最近は 根菜を爆食い する日々。
「なんか腸がいい感じになった気がする!」と自己暗示をかけながら、日々の腸活に励んでいる。
そして気づいた。
「そういえば昔は毎日快便だったな……」
オレの腸、本来の力を取り戻しつつあるのでは!?
そんなこんなで、当然 息子・健一の腸も気になる 。
毎日、息子のオムツを開いては「お、今日はいい感じの色だな」と プロ腸リストのように便をチェック する日々。
しかし、最近 肌荒れの薬の副作用で下し気味 になってしまった。
「これは一大事だ!!」
腸活戦士・心太朗、息子の腸を救うために立ち上がる!
……が、当の本人は めちゃくちゃ笑顔 だった。
「え、腸活とか気にしなくても、赤子ってそんな楽しそうに生きられるの?」
腸のコンディションなんてお構いなしに ゲラゲラ笑いながら全力で生きる健一 を見て、心太朗は思った。
「腸活も大事だけど、結局メンタルって、気の持ちようなんじゃない?」
とか言いつつ、翌朝もまた 腸にいい食材を食べる心太朗 なのであった。