「技量」で「技量」を得まくる1年に
ご無沙汰しています。leift、KOTARO SAITOこと、音楽家の齊藤耕太郎です。noteを書かずに過ごすこと4ヶ月余り、気がつけば年が明けてしまいました。明けまして、おめでとうございます。
この数ヶ月、僕はずっと動いていました。一切の立ち止まりもなく、ただひたすら思考→行動→検証→思考→行動の繰り返し。
2023年から2024年になったからといって、自分ごとが大きく変化したっていう印象はないです。まずは去年から今年にかけて僕が何をしていたかの報告も兼ねて、近況報告を書かせていただきます。
東京を離れ、神奈川・茅ヶ崎に
去年から今年にかけていちばんの出来事は、やっぱりこれかな。というか、このことさえ書いてなかった自分に若干驚いてます。
2023年10月から11月にかけて、居住と音楽制作の拠点を茅ヶ崎市へと移しました。品川から東海道線で50分強。茅ヶ崎市は非常に穏やかで海と山がある、それでいて都市的な洗練された建築物も多々ある不思議な街です。
初めての、海と共に暮らす日々
湘南エリア一帯に広がる、美しい海岸線を臨む毎日。茅ヶ崎に来て、海の身近さに感動しています。海を見ると、仕事やプライベートの出来事で深く心を痛めてしまったとしても、自然とその気持ちを洗い流してもらえる。今まで他所で聞いたような話だったその様を日課として体感すると、海の大きさにただ身を委ねることしか考えなくなりました。
とにかく、魚が強烈に美味しい
漁港が身近にある生活は、僕の料理を確実に、東京にいた頃とは全く別次元にアップデートしてくれた。「地物・朝採れ」という脅威のスペックを日常に手に入れたこともさることながら、魚の熟成の腕も向上した。丸々一匹を仕入れ、頭から皮まで余すことなく使う。そうすることで初めて、魚ごとの特性も以前より見えるように。
魚を代表格に書いているけれど、茅ヶ崎は畜産業と農業も豊かな街。自然と地産地消につながりやすく、季節の野菜を農家の方々から路地で買う日々。どれもクオリティが高く、料理好きには本当におすすめの街です。大好きなカーボロネロも手軽に手に入るし、珍しい野菜も手に入ります。
音楽の方はどうかというと
このnoteは主に、僕の音楽的な側面に興味を持ってくれる人がフォローしてくれているのだと思うので、プライベートの前置きは終わりにして音楽の話題に移そうと思います。
コラボ企画のシングルを継続的にリリース中
東京で作った曲から、茅ヶ崎に移ってから作った曲まで。引き続きleiftとして楽曲をリリースしています。Spotifyがleiftのダイジェストプレイリストを作ってくれたのでシェアします。ライブでよく演奏する曲が集まっているから、note読者のみんなにも是非、フォローしてもらえたら。
後述するアロフト東京銀座でのライブも定期的に行いながら、僕のライブ表現も少しずつ安定し始めてきた実感があります。
去年のワンマンライブに至る道で
「無理・・・挫けそう」と言っていたことが懐かしい。
歌は良い意味で、特別なことじゃなくなりつつある
コンプレックスの塊みたいだった歌も、自分の中で随分と在り方が変わりました。録っていて・ライブで歌っていて「もっと体をコントロールできたらな」と思うことは多々ある。でも自分を責めたりはしなくなりました。
僕は鍵盤の演奏にも似たような感覚を持っているけれど、
そもそも音楽そのものを
「身体的な技巧で突破しようとするアーティスト」
で・は・な・い。
鍵盤も速弾きできるわけでもないし、その道を追求したいともこれまで思ったことがない。でも、自分が好きな音楽を奏でるという点では全く困っていない。歌は鍵盤ほどの年季は勿論ないけれど、だんだんそんな感覚に近付いています。
「大好きなわけでもないけれど、決して嫌いじゃない」、
ただ、そこに存在してくれている大切なもの
に、なりつつある。結局僕にとって演奏能力とは、「創りたい音楽に大いに依存するもの」なんだなと気がつきました。
僕にとって細かい音程が自在に動かせることより、ボーカルもシンセもピアノもリズム楽器として機能することのほうが価値がある。だからかな、リズムへの理解は、歌に限らずプロデューサーとしても深まった2023年後半でした。細かい音程が正確に自在に動かせるようになったら、書ける曲に幅が出るから、ちゃんと練習はしてるけどね。
その点、僕は最新シングルのこちらが、
今できることをしっかりやれた曲だと思っています。
際際の東京、僕の前の自宅やスタジオに向けて書いた曲です。
セカンドアルバムの完成を目指す日々
僕の行き先は、2024年の年末リリース予定の新アルバムに。
新居スタジオは、作り手として楽園
新居は戸建という作りもあって、妻のオフィスやリビングとは別の階にて自分の作業環境を設けられました。今まで以上に作業中の同居感がなくなったことで、朝入ったら夕方、夜まで必要なければスタジオから出ない毎日。とても集中できる環境で、コーヒーと水を片手にプロデュースワーク。
新しいスタジオは、とにかくシンセやハードウェアに手が伸びやすく使いやすいことを意識して設置しました。
年始から程よく休みつつしっかり作業ができて、制作中の作品たちもいい感じに進捗しています。今年作りたい作品の大枠は決まっているから、あとはなるべく早くその作業を終わらせること。むしろ今年は、自分の作品を早々に作り終えることが肝になりそう。それだけ、やりたいことが多いんです。
今年はやりたいことが多いと書いているけれど、音楽の話だけでも制作以外にたくさんあります。その一つが、こちら。
アロフト東京銀座のライブプロデュース
2023年の後半以降、僕は毎週金曜日は銀座にいました。
「音楽のホテル」として世界的に認知されているマリオットグループのホテル、アロフト。東京のキュレーションを任せていただき、今年も1年間担当することになりました。日本ではまだ、アロフト = 音楽のホテルという印象が充分ではない(というか、まだほぼ知られていないはず)から、今年1年かけて自分もライブ出演しながら
音楽好きが気軽に毎週集まれる場所
アーティストが表現の場としてより自由に活用できる場所
音楽業界人とアーティスト、早耳のリスナーが情報交換できる場所
を目指して運営していきます。
昨年は半年間で、たくさんのアーティストの方々に出演いただきました。以下は、2020年に開業して以来僕がブッキング・プロデュースしてきたライブに出演いただいた方々をまとめたもの。
アーティストがアーティストの輪を広げてくれていることも多々あって、おかげさまで僕もこの半年間で、新しい出会いに恵まれました。素敵なキャスティングができていること、快く演奏を引き受けてくれる皆に感謝。
映像作品も更なる進化を
leift( =音楽を作って歌ってリリースしてライブする)のことばかり書いているけれど、映像作品への音楽制作も今年は更に「技量」を磨き、「技量」で圧倒できるお仕事に出会いたいです。
最近作った自信作を是非見てほしいです。
ファッションブランド「HAENGNAE」のコレクション映像を作りました。「コントラスト」をテーマに制作された映像に、音の濃淡を極めて明確にした「音楽とも効果音とも言えないサウンド」で臨みました。
このような抽象的な映像作品において、僕がここで制作中に会話したコンセプトを語るのは野暮なので割愛します。けど一つ確かなことは、この作品を作った僕とleiftをやっている僕とで、音を操り、楽しみ、新次元に進みた気持ちが完璧にリンクしているということ。
leiftという音楽家を世に生み出し「自分の軸は自分」と強くnoteに書き残してきた割に、それでもまだ僕は楽曲を作る上で
このサウンドは、ちょっと聴き手の人たちは受け取りにくいかな。
という「配慮」をふんだんに散りばめてきました。
それをしたことを後悔しているわけでは勿論ない。でも、どこかでポップミュージックを作るために「聴く人が心地良くなってほしい気持ちを優先する」ように、leiftの場合はなるんです。だって、伝えたいのは音の性質よりメッセージの方だから。
一方、映像音楽では、そのリミッターが外せます。
なぜならやるべきは「映像に宿されたメッセージを音で増幅すること」だから。映像に効く表現であれば、なんの妥協もなく常識を打ち破ることができる。今作は、その思考をまっすぐに追求して、極めてピュアにこの形になりました。何一つ、奇をてらおうなんて思ってない。そこがポイントかな。
この気持ちはアヴァンギャルドな作風にばかり求めているわけでは決してないです。日常を温かく描く演出でも、切ない別れを淡々と描く演出でも同じです。とにかく今年は、「技量」という言葉をテーマに更なる成長を自分に課したい。そう思っています。
2024年のテーマ「技量」
やっと今年の話を本格的にできるようになった・・・。
定期的に書いてないとダメだな本当に。
事前説明が長くなりすぎる。
僕の今年のテーマは、今ある「技量」をフル活用して、
今ない「技量」を磨ける場を作って、
理想の自分像をアップデートし続けていくことです。
どうして「技量」なのか
2023年までの僕は、自分にも、時と場合によって他人にも「自分には見えているけれど、まだ公に顕在化していない可能性」に心惹かれてきました。そうした末に生まれたのが、ゼロベースで言葉を紡ぎ、歌い始めたleiftです。
いわゆる、「ポテンシャル」ってやつです。
その「ポテンシャル」を信じて作るフェーズは、もう去年までで終わったなって思ってる。ポテンシャルを信じすぎると、今すでに出来ることを(僕の場合は)「古臭い自分」と誤認して否定しがち。
かつ、ポテンシャルの対象を他人に向けて気持ちや「技量」のズレが生じた時に、僕も相手も不幸になるから。
じゃあ具体的にどんな「技量」を信じるかって言うと。
僕に今ある「技量」
音楽に絞って話すと、僕の骨は「トラック」なんです。トラックプロデュースの「技量」が僕の真芯にあって、その魅力をポップミュージックの世界で、言語をともなって届けていける最高の武器がleiftなんだと。
そう思えたら、去年まで考えていた「歌が新しく、プロデュースが従来」は全然お門違いだって気づいたんです。leiftの武器だってプロデューススキルだし、KOTARO SAITOもソングライティングや歌唱という武器を手に入れて、強くなったじゃないかと。
歌だろうがインストだろうが、僕に今ある「技量」の結集は、
頭をぶん回して、本能と掛け算して「創造すること」
だなと自認しました。こうして、自分が考えていることや辿り着いた結論を、言葉にして書き残せる能力も含めてです。今年は音楽の領域外でも、僕が進化するために「全方位の創造と思考」を仕掛けます。
僕に今ない「技量」
やっぱり、僕が描いた「設計図」「ビジョン」を詰め込んだ音楽作品や考えを、身体を用いて最高の形で表現して世に送り出す「技量」が圧倒的に足りていないなって思います。
それは歌の技量とか演奏力とか、そう単純なスキル不足の話だけじゃない。言うまでもなくそれらももっと磨きたい。磨けると信じて疑わないけれど、もっとそれ以上の「佇まい」「脱力から来る余裕」が、まだまだ自分には足りていない。毎回のライブ映像を分析していて感じます。
場数を踏んで徐々に改善してきた部分もありつつ、こればかりは本当に日々の鍛錬でしかないと痛感します。不安で寝付けないなど、漠然とソワソワするメンタル。こういう自分は表にも出るなって本当に思う。姿勢に出るし、姿勢は体を硬直させるし、体の不調は運動へのモチベーションを下げて、肉体を無駄に甘やかす。
今、自分にとって1番の「不健全で言い訳がましい、"ダメな弱さ"」。
実感して解決できていないのもまたダメ。
自信がないことをそのままにするのは、2024年で終わりにします。
加えて。
根性にばかり、もう頼らない
ほんと、マジでこれに尽きます。
健康面もそうだけど、自分自身の在り方にも言えること。
成功とはかくあるべき、みたいな
自分が納得できないような根性論や
自分で説明できない「正攻法(と言う名の無思考)」には、
陥っちゃいられないんです。
戦略がないと、成長できないんです。
自分を成長させられるのは、自分を知った上でのプランなんです。
他人からの貴重なアドバイスを無視してもダメ。だからと言って、自分に合わないものを無理やり信じて進もうとしても、結果バーストする。そのいずれも、もうこれまで沢山やってきました。2024年は、とにかく自己成長戦略を綿密に。何が足りてないのかをどう補い、どんな「未知」に出会うか。
「今、想像できない驚き」のために
色々「技量」って言葉を強調して書いてきた、今回のnote。
この話のキーワードは「未知」「想像を超えた感動」そこなんだろうな。自分が今想像していることは、随所で適宜修正しながら叶えられることばかりだと感じているんです。
僕が欲しいのは、今全く想像できていない感動を知ることなんです。そのためには、「技量」を以て別の「技量」を磨き上げるしかない。同じ「技量」を日進月歩で磨き続けて到達しうるは、僕の現実には、もうないから。
焦りとは全く違う意味で、
全てが「スピードこそが命」な状況なんです。
東京を離れ、茅ヶ崎に来て、
もうあと数えられるほどの期間で別の場所へ行く。
僕が今、妻と共に考えているプランです。
そのための道筋含め、正直今の自分じゃ想像しきれていないハードルがいくつもあって、超えるには何をすればいいんだ?を調べて回り、議論する日々。マジで時間なんてない。時間なんてない中で、全てのピースを理想に向けて埋め続けなければいけない。なぜなら、それをやりたいから。
想像できないことだけを選択し続けるために
必要になるのもまた、「技量」だと思うんですよね。
日々を生き抜くための「技量」。仕事をして対価を得て、
自分の身の回りの人たちと幸せでいる「技量」も含めて。
自分がどんな選択をするか、選択に失敗が待っていた時も、ちゃんと自分が責任を持って向き合えるか。丁寧に考えて決断しながら、決断した物事には培ってきた「技量」を全力で注ぎ、惜しまない。
それをしないと、僕が求めている「想像を超えた未来」は来ないなって思っています。音楽を作っていても、例えばコース料理をいただいても、中盤あたりで完成や結末が見えてくるものって、つまらないんです。そして僕の場合ほぼ、悲しい気持ちになる時の未来って、当たるんです。
根性は嫌いだけど、僕の生き方は気合いでしかない(笑)。冷静に気合いをコントロールして、最短経路で最速効果を狙います。(実際は最短なんてものは絵空事なのは、充分わかっててあえて言います)
皆さん、改めて今年もよろしくお願いします。
気合い入れていきます。
leift / KOTARO SAITO
Cover photo by Derrick Ong