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エクスカリバー

秋がはじまりを静かに告げている。

昨日、神社で少したそがれた。夕暮れにパンを食べながら蚊を払い、秋の虫の声を聴いて過ごした。

秋の準備としてブーツの手入れをしようと思っている。シーズンアウトしたブーツはブーツの中に乾燥剤を入れてさらに購入時の箱に入れてしまう。そして時々、思い出したように風を通すのに部屋に出す。

そろそろブラッシングをして靴箱でいつでも臨める状態にしておいてあげたいなと思った。

僕のブーツはレッドウィングのベックマンというブーツだ。色はブラックチェリーと呼ばれる赤みの強い茶色。アメリカのブーツブランドであるレッドウィングの創始者の名前がチャールズ・ベックマン。つまりこのブーツは創始者の名を冠するブーツということになる。

しかしこのブーツ、去年だか一昨年だかに終売になった。強烈な人気を誇っていたのだが、どうやらコロナウィルスの影響で生産に必要な物が確保できなくなった結果らしい。

さて、そんなレッドウィングのベックマンが新しくなってデビューした。そのベックマンのブラックチェリーの名前が今回、「ブラックチェリーエクスカリバー」という名前なのだ。

エクスカリバー?!

二度見した。なんだ、エクスカリバーって。カッコいいじゃないか。僕の中の中学二年生が目を覚ました。どういう経緯でエクスカリバーと名付けたかは分からないが、男性の中に住む少年の心をくすぐってやまない。エクスカリバーとはそういうものである。

エクスカリバーと言うのは架空の武器の名前で、アーサー王が封印された岩から引き抜いたとか湖の精霊が与えたとか諸説あるようだ。しかし現実の物事はそんなふうにスッとは進まない。

自分が選ばれた人間でそのことに臨めばすべてがトントン拍子ということはない。この夏、僕はたっぷりと書くことでも珈琲を淹れることでも行きづまった。

まず珈琲から行きづまった。納得のいく珈琲が淹れられずに首をひねりまくった。そのうち逃げるために文章を書きまくった。だがナチュラル躁うつである僕にとって書くことに没頭することは躁ちゃんをゆるりと起こすことに他ならない。疲れて滋養強壮剤を口にしてさらに躁ちゃんを加速させてあえなくタオルが投げ込まれて書くことを十日ほど休むことになった。

結論、この世にエクスカリバーめいたものはない。どんな場面何があっても自分で身に付けた力以上のものはないだろうし、武器や精霊めいたものに選ばれて自助努力なしに無双することはない。

いや、もしかするとエクスカリバーを手にするまでや手にしてからのたゆまぬ鍛錬があるからエクスカリバーに選ばれるのかも知れない。エクスカリバーとはそういうものかも知れない。何もアーサー王はのんべんだらりとしていてエクスカリバーに選ばれたわけではないはずだ。自分の日頃の物事に対する姿勢あってこそエクスカリバーは微笑むのではないか。仮にそうなのだとしたら自分にとってのエクスカリバーに出会う日まで日々コツコツと励もうと思う。

幸運は自らを救う者にこそ来る、のかも知れない。

志紀

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