集中学習の罠と、それに代わる3つの学習法

何かを習得したい、何かを覚えたい、何かを使えるようにしたい…

そのために私たちは努力し、練習や学習を行うわけですが、世の中には科学的に間違っているにもかかわらず信じられている練習・学習法がたくさんあります。

ちなみにここでいう「間違っている」とは効率が悪いという意味です。同じ量の努力ならば成果が上がる方を選ぶのは当然でしょうが、ここには大きな罠があります。

それは、最も効率の良い学習方法は直感に反するということと、短期的な満足感が得にくいということです。

逆に言えば、なぜ間違っている学習法が世に広がるのかというと、それは直感的に効果が出やすそうで、学習をしているという満足感が得られやすいからなのです。

今回はそんな間違っている学習法の一つである「集中学習」がなぜ効果がなく、そしてどういった学習法が効果があるのかを解説いたします。

集中学習の罠

例えば、今日はこの単元だけを勉強しようとか、今日はバックハンドを集中的に練習しようとか、今日はこの曲のこの部分を徹底的に練習するぞーとか…

このように、一つのことを集中的に学習する方法を「集中学習」と呼びます。

直感的には、集中的にやった方がその能力についてしっかり身につきそうですし、学習直後は確実に効果が出るので満足感も得やすいです。

しかし、それが罠なのです。

集中してやった方がたしかに早く効果は出ますが、そうやって集中して学習したことはいつでも使えるものにはなりにくいのです。

例えば、車の免許を合宿でとったけれど、その後全然運転しなかったのですっかりペーパードライバーになってしまった…とか、一夜漬けで覚えたテストの内容なんてすっかり頭から飛んでしまった…とか。

合宿で免許を取るのも、一夜漬けの勉強も、短期間での効果はありますが、その後思い出すことをしなければ本当の意味で自分のものにはなりません。

本当に効果がある3つの学習法

それではいったいどんな学習法が効果があるのか…以下に3つの科学的に正しい学習方法をご紹介します。

キーワードは「思い出すこと」です。

・間隔学習

間隔学習とはその名の通り、間隔をあけて学習する方法です。

例えば2日ごととか、1週間ごととか…そうやって間隔をあけることによって、もちろん学んだことを少し忘れます。

その忘れたことを「思い出すこと」が、とても効果的なのです。

思い出すことによって、知識が整理され、他の知識と統合し、より記憶が強固になります。

集中学習は短期記憶頼りでしたが、知識を本当の意味で自分のものにするために長期記憶に刻み込むには、間隔をあけて学習をする方が効果が高いのです。

・交互学習

例えば複数のことを学習するときに、一つずつ完全に習得してから次に進むというやり方か、それとも交互に学習して全てを徐々に習得していくというやり方か…どちらの方が効果があると思いますか?

こんな質問のされ方をしたらすぐに答えがわかってしまうと思いますが、正解は後者であり、これを交互学習といいます。

例えば実験では、集中的に行った方が短期的な結果(例えば小テストとか)はよかったのですが、交互学習では長期的な結果(例えば期末試験とか)がかなり勝っていました。

交互学習は交互に複数のことを学習するので、習得には時間がかかってしまいます。

しかしその分、学習の間に「思い出す」という工程が入り、また複数のことを同時に学習するので知識が統合され、そのつながりによってより習熟し、長期記憶にも残りやすくなるのです。

・多様学習

この「多様」は、方法の多様さのことです。

例えば、玉入れの実験では、90cmの距離にあるかごに玉を多く入れるために、子供たちを2グループに分けて練習しました。

・90cmの距離から投げる練習を「全くしない」グループ
・90cmの距離から投げる練習しかしないグループ

90cmの距離で練習しなかった方は、代わりにほかの様々な距離から練習しましたが、玉入れで勝利を収めたのは、前者の様々な距離で練習をした方でした。

この2グループに何が起きたのか…大きな原因の一つが練習の慣れです。

同じ距離でしか投げなかった方は、その距離に慣れてしまうため、後半は感覚で入れることができるようになっています。しかしこれでは、反射的に行っているだけで練習の効果は徐々に落ちていってしまいます。

一方様々な距離で練習したグループは、距離が変わるたびに投げる力を調整し、うまくいったときのパターンを「思い出す」ことができます。思い出して修正していかなければならないので、練習の慣れも起こりにくいです。

つまり、同じ距離でしか投げなかったグループはただその練習が上達しただけで、様々な距離で投げたグループは投げること自体が上達していたのです。

このように、多様な練習は慣れを防ぎ、より頭を使う分柔軟に対応できるようになるのです。

集中学習ではなく分散学習

ということで、これからは

・間隔学習
・交互学習
・多様学習

を用いて、集中ではなく分散して学習を行いましょう。

分散した学習は最初は効果が出にくいですが、続ければ続けるだけより効果の差が開いてくるはずです。

参考文献:使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

ps
私もだいぶこれらの学習法を使っています。
飽き性な方にもぴったしです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?