あなたが欲しいものは「1万年前」から何も変わっていない
「人はそう簡単に変わらない」
という言葉……よくある言葉ですよね。
ではいったいいつから変わらないのか、ということについて一つの説があります。
それは「1万年前から変わっていない」というものです。
「えっ、そんなに?」と思った方は、きっとこれを読み終わるころには、「確かに…」となっていることでしょう。
今回はそんな話をアラン・S・ミラーさんの
進化心理学から考えるホモサピエンス 一万年変化しない価値観
を参考にお話していきます。
ヒトそんなに変わっていない
1万年前というと、まだ人間は狩猟採集生活をしていたころです。
だいたい150人くらいの集団で生活していました。
例えば、そのころ「砂糖」なんてなく、甘いものはとても貴重なものだったので、人間は甘いものを好むようになりました。
また、多くても150人程度の集団だったので、人間はそれ以上多くの人とそこそこ密な関わりを持ち続けることがなかなかできません。
それに、男性は多くの女性と性行為をしたがりますが、それは自分の子孫を残すためであり、女性が案外浮気をするのは、より優秀な遺伝子を求めるためです。
他にもいろいろとあるのですが……人間の様々な価値観がかなり昔から変わっていないということがわかると思います。
今と1万年前
先程あげた3つの例は、どれも現代では必要のないものです。
コンビニやスーパーで糖などの栄養価が高いものは簡単に手に入るので、全く貴重なものではありません。逆に食べ過ぎで健康を害する人がいるくらいです。
また、SNSが普及してより多くの人と関わることができるようになりましたが……LINEやFacebookで登録だけしているけどずいぶん連絡をとっていない、という人は大勢いると思います。
性行為も今や必ずしも出産のためではなく、むしろそれによる快楽がメインになってきています。他の男性に寝取られたとしても、他の男性の子供を自分が育てるという事態にならないなら、ある意味嫉妬心も現代社会においては不自然なものなのかもしれません。
進化に必要なもの
ではなぜ1万年前と今の人間が変わらず、価値観が今に適応できていないのか…というと、進化に必要な2つの要素……時間と安定した環境がそろっていないからです。
まず一つ目の時間についてですが、進化には本当に多くの時間がかかります。
正確にいうと、世代を重ねることが必要なのですが、人間は成熟するまでおよそ20年ほどかかるので、1世代が20年もあります。
つまり1万年で500世代なわけですが、この程度ではほとんど変わりません。
ちなみにショウジョウバエという成長がとても速い生き物だと、10年で500世代くらい変わることができます。
もう一つの安定した環境についてですが、自然淘汰が起こるにはこの安定した環境が必要になります。
例えば寒い時期が何十何百世代にもわたって経験できれば、自然淘汰され寒さに強い個体が生き残ります。
しかしこの1万年間、人間の環境は目まぐるしく変わってきました。
狩猟採集から農耕の時代となり、工業の時代となり、そして今やこうしてインターネットを使っている……。
こうした早い変化に遺伝子的に対応することは難しく、そのため自然淘汰が働かず、人間は1万年前とほとんど変わらない状態にいるというわけです。
1万年前とおなじ……so what?
ということでだいぶ皆さんも、1万年前と現代の人間が変わらないのだろうなと思っている頃だと思うのですが、こういったお話はどう活かすかがとても大事です。
例えば、今回の話は客観的になったり、物事を深く理解することに活かすことができます。
朝ご飯は食べるべきか論争だったら、狩猟採集の時代に備蓄品はあまりなかっただろうから、朝ご飯は食べていなかっただろうとか。
甘いものを食べたいのは遺伝子的にどうしようもないのだから、我慢するだけでなくちゃんと対策をしなければとか。
パートナーのちょっとした浮気くらい許してあげようとか。
また、今回紹介したような本を読んでいるときに、「これはこういう理由だからなのかな?」と考えるとより記憶に残りやすくなるので、色々なことの理由になる根本の理論としても役立てるかと思います。
ということで今回は、1万年前の人間から探る価値観についての話だったわけですが、それと関連して、現代の3つの大きな価値観について解説しているので、あわせてことらもぜひ読んでみてください。
また、今回の話のようなこと……例えば男性が女性を選ぶ基準など、もっと詳しい内容を知りたい方は、ぜひこちらの本を読んでみてください。
ps
自分の浮気を「私は1万年目から変わっていないからしょうがない」と正当化するのであれば、それは自己責任でお願いします。それに対して怒るのも、1万年前からかわっていないことだけは忘れないでください。