『言霊』は、用法用量を守って正しくお使いください
「僕はとても明るい性格です!!」
「人を笑わせるのが、得意です!!」
「クラスでは、ムードメーカーと呼ばれていましたぁああ!!」
…大丈夫、頭がわいたわけではない。
『言霊』
なんて言葉があるだろう。
他にも、
『あなたはあなたが使った言葉でできている』
なんて言葉を、何処かで聞いたことがある人は多いだろう。
それを信じてみたくなったのだ。
人生は、あなたが使う言葉で決まるらしい。
確かに、心当たりはある。
以前の僕は、ネガティブの塊。
たとえば、天気がとても良い日。
太陽が燦然と輝いて、わけもなく、外を歩きたくなるような天気の良い日に、あなたはどう思うだろうか。
多くの人は、
「気持ちがいいなぁ…」
「いい日だなぁ…」
「本日は、お日柄もよく(なんやらかんやら)皆様のご多幸をお祈りします…」
なんて気持ちになると思う。
しかし、僕は違う。
太陽が燦然と輝く、緑豊かな草原の下で、
「あぁ…死にたい…」
なんてつぶやくほどの、ネガティブぶりだった。
その当時、この言葉を近くで聞いていた人物から、僕は怒られた。
「なんでこんないい天気の日にそんなこと言うの!!!」
なんて、めちゃくちゃキレられた覚えがある。
当たり前だ。
そんな言葉を聞いて、楽しくなるわけがない。
言霊は、僕だけでなく、それを聞いている人物の感情すら左右してしまうものなのかもしれない。
自己啓発本『ポジティブ言葉を使おう!!』
精神的自己啓発本には、よく、
「ポジティブ言葉を使おうぜぇえ!!」
「そうすれば明るくなれるよぉお!!!!」
と書いてある。
以前の僕は、そんな本を読むと、
「そんな訳ないやないですか…」
なんて、冷めたツッコミをよくしていた。
そもそも、超絶ネガティブ人間が、無理やり、
超絶ネガティブ人間「僕は明るいのだっっっ!!!!」
なんて言葉を、急に言えるわけがない。
あまりにも、現在の自分と、言葉で出す自分が、乖離しすぎていると、感情がついていけなくなる。
感情というか、脳が、だろうか。
以前僕は、言霊を信じて、
「僕は明るい…僕は明るい…僕は明るい…」
と、ぼやき続けたことがあるのだが、吐きそうになった。
ぼやく、という方法が悪いのかもしれないが、あまりにも現在の自分と、かけ離れている言葉を使ってしまったので、脳が混乱したのだろう。
脳「…え?えぇええ?!」
脳「お前、そんなキャラちゃうやろ!!」
脳「あかん!!この人病気や!!」
脳「いますぐ休ませないとあかんでぇぇえ!!」
なんて脳が混乱して、宿主を休ませようと、具合を悪くさせたのだ。
僕はこの時、あまりにもかけ離れている言葉を使うと、体調が悪くなるということを学んだ。
言霊は、用法用量を守って正しくお使いください
言霊は、急にたくさん使ってしまうと、オーバードーズを起こすようだ。
あまりにも、今の自分とかけ離れている言葉を使いすぎると、脳と体が拒否反応を示してしまうようだ。
『言霊』
は、少量から使用し、少しずつ少しずつ、脳と体に慣れさせていかなければいけないらしい。
そもそも、
「今日から僕は明るい人間なのだぁ!!」
と思うだけで、今日から明るい人間になれるわけがないのだ。
人間は、慣性の生き物だ。
今日の自分は、昨日の自分の延長線上にしかない。
ならば、どうするか。
今日のネガティブな自分を、少しだけ変えるだけでいい。
「僕は明るい!!」
「僕は明るい!!」
「僕は明るい!!」
最初から、こんな感じではいけない。
なにより、ご近所さんに、お隣の旦那が、ヤバい宗教にでもハマったのかと思われる。
「僕は思ったよりもポジティブ人間かもなぁ…」
なんて、少しぼやくところから始めて、脳と体を少しずつ騙していこう。
何事も、徐々に徐々にだ。
そうすればいずれ、その小さなポジティブ清流が、大きなポジティブ濁流になるはずだ。
結論。
「言霊は、用法用量を守って正しくお使いください!」
ということで、僕はいつか、ポジティブ濁流の氾濫に巻き込まることを願い、今日も言霊を少量だけ処方することにします。
「明るいよ!」
おしまい。