全国にはこんなにも愛すべき「地元」がある。一緒に撮って、観て、踊ろゥ! #地元サイコゥ!映像祭」開催報告
「映像で、地元の魅力を発信できる人が増えたら、
絶対もっと全国の地元がおもしろくなるよね。」
2023年1月28日。構想から7年。
熊本県の中北部にある合志市というまちで、”地元の魅力を届けられる映像クリエイターを日本中で育てる”をミッションとしたイベントをついに開催することができました。
そのイベントの名は「地元サイコゥ!映像祭」。
全国の魅力あふれる地元を盛り上げたい!という、
愛あふれる地域PR映像の祭典です。
”なぜ熊本県合志市でこんなイベントを?”
”地元をもっと盛り上げていくには、どんな発信をしたらいいの?”
”日本にこんなにたくさんおもしろい地元があったなんて!”
今回は、イベント当日の様子をお届けしながら、映像祭に届いた日本全国の素敵な地元愛あふれる作品たち、そして、プロ直伝の地元の魅力を届けられる映像クリエイターになるためのヒントをご紹介していきたいと思います。
🎥地元LOVEなクリエイターの
「 再興 」 と 「 再考 」 の場所をつくりたい
「地元サイコゥ!映像祭」は、2022年で開催8周年を迎える、熊本県合志市を拠点として全国へと展開する「合志市クリエイター塾」から誕生しました。
「合志市クリエイター塾」は、映像を通して地元の良さを発信できる市民クリエイターを育てること目的とし2015年に開始。合志市と映像制作プロダクションの株式会社ロボット(本社:東京)が手を組み、これまで13歳から68歳の市民クリエイターを合計350名以上排出してきました。
「合志市だけでなく、全国の地元LOVEなクリエイターにも、もっと活躍と成長の場を提供できないだろうか?」
こんな想いから地域PR映像コンペティションのアイディアが生まれたのは、合志市クリエイター塾の1年目が終了してすぐのこと。
あれから構想7年。
ついに実現したのが今回の「地元サイコゥ!映像祭」です。
▽「地元サイコゥ!映像祭」誕生への想いは、こちらのハフポストの記事でもご紹介いただいています。
「サイコゥ!」という言葉には、3つの意味を込めました。
【最高】と思える地元の価値を【再考】し、まちを【再興】していく。
「再考」のきっかけになればと、最前線で活躍するプロフェッショナルの方をお呼びしての決勝審査は一般に公開。作品をエントリーされた方も、そうでない方も、一緒に審査していくことを通して「地元の魅力が伝わるとはどういうことか?」を考えられるイベントにしました。
今回、熊本県合志市役所で開催された決勝公開審査には、公式審査員としてプロフェッショナルの方が3名と、一般審査員としてリアルとオンラインで合計90名ほどの方が参加。
和気藹々となごやかな雰囲気の中、入選作品の講評会を行いました。
🎥魅力が”伝わる”映像にプロもアマもない
公式審査員として今回参加いただいたのは、第一線で活躍するこちらの3名です。
映像ディレクター/合志市クリエイター塾塾長の 清水 亮司 さん
演出家・映画監督の 本広 克行 さん
映像ディレクターの清水亮司さんは、「合志市クリエイター塾」の塾長として、8年にわたって地方の映像クリエイターを育成。まさに「合志市クリエイター塾」と「地元サイコゥ!映像祭」の顔とも言える映像ディレクターです。
そして、『踊る大捜査線』シリーズの監督としても有名な本広克行監督は、『UDON』(2006)という作品で、映画という形での地元の食文化PRにもチャレンジされています。
タテ型映像のスペシャリストとしてお招きした映画感想TikTokクリエイターのしんのすけさんは、京都市のオリジナルショートドラマで監督も務められました。
清水ディレクター、本広監督、しんのすけさん。いずれも地元PRにご縁の深い第一線で活躍する、プロフェッショナルの3名です。
そして今回の「地元サイコゥ!映像祭」によせられた作品の最終エントリー数は、
タテ型動画:256作品
ヨコ型動画:145作品
なんと、合計400作品以上が全国から集まりました!
決勝公開審査で審査される作品は、タテ型・ヨコ型それぞれ10作品ずつ。
美しいプロモーション映像、ドラマ映像、企画モノ、クスッと笑ってしまう映像、つい見入ってしまう映像、なんだかわからないけど目が離せない映像…。
多種多様なジャンルの作品が決勝審査に残り、審査会が始まる前から「この作品に対して3名のプロの審査員のみなさんは、どんな視点で作品を観ているんだろう?」と私たちもワクワクでした。
本広克行監督「今回、僕が普段一緒に仕事をしているようなプロフェッショナルの方もエントリーしたものの、決勝に残ることができなかったそうです。『悔しいから、傾向と対策を調べようと思ってオンラインイベントを見ているけど、どれも面白い』と、メッセージが届きました。」
”地元の魅力を届けたい!”
その気持ちから生まれる作品たちは、プロ・アマの垣根を超えて、本当に素晴らしいものばかり。公式審査員のみなさまの作品への感想には、たくさんの ”地元の魅力を届ける作品づくり” へのヒントがありました。
今回はそのコメントから、「プロの視点」を皆様にもお届けします。
🎥"地元の魅力が伝わる映像"の鍵は「音」
ー"地元の魅力が伝わる映像"とは、どんな映像なのでしょうか?
しんのすけさん「地元の魅力が伝わる映像というのは、やはり《行きたくなる・体験したくなる映像》のことだと思います。
行きたくなる、食べたくなる、見たくなる。そういった行動に移したくなる映像にするためには、見ている人に、体験を”リアルに想像させる”ことが重要です。
その鍵になるのは、実は映像よりも『音』なんですよ。
『音』って、めちゃくちゃ人の本能の部分に届くんです。
だから作品として『音』が印象的なものであれば、いっそ背景の音楽を消してしまった方が、相手に強く印象を残すことができることもあるかもしれませんね。」
🎥技術が上手い下手とかだけじゃなく、
なぜか心に残る映像がある
ー多様な作品の中からこれだ、という作品を選ぶとき、どのような軸を持って判断をされましたか。
本広監督「今回決勝に残った作品は、映像としてすごいものもあれば、変化球のような作品もありました。そんなさまざまな作品を審査するにあたって僕が意識していたのは【観た後に、どれだけ印象に残っているか】です。
タテ型映像部門の『Mai Wai Farmのいちご』(松本 佳子)は、いちごへのフォーカスの当て方が印象に残りました。
同じくタテ型映像で僕が審査員特別賞に選んだ『空をみあげて』(中込 智裕)は、『タテ映像でもこんなに面白いドラマが作れるのか、自分は何をやってるんだ』と自分を振り返ってしまうくらい、自分の中に残るものがあったんですよね。」
本広監督「ヨコ型映像部門で審査員特別賞に選んだ『2022年 もう一度食べたい富山のラーメン7杯』(かのたけ)は、『ただ食べているところを撮ってるだけ』と見えて、実は撮るだけでも簡単ではない作品。さらにこれを、マラソンのようにたくさん撮り続けているということに感動してしまいました。訴求力の点でも抜群でしたね。『ラーメン食べに行きたいな』って、すぐ思いましたから。」
ー「心に残る」というポイントも、"映像がきれい"とかだけではなく、本当に多様に存在するんですね。
本広監督「映像って、決まり型を見つけちゃうと、つまらなくなるんですよ。決まり型がないから面白い。それが、AIではできないこと、僕たち人間だからこそできることですよね。
またこういった映像祭には、若手の人ばかり集まることが多いのですが、この『地元サイコゥ!映像祭』は違いました。社会人の方だったり、もっと年が上の方だったり。本当にいろいろな方が応募してくださったというところも、バリエーションがあってすごく良かったです。
この『地元サイコゥ!』というテーマが、挑戦したい!と思わせるテーマなんでしょうね。」
🎥地元の良さや、好きなところを
徹底的に<再考>するプロセスが大事
ーより地元の魅力が伝わる映像を作りたい、と思った時、どんなことがポイントになるでしょうか。
清水ディレクター「今の時代、個性や多様性が大事だと言われていますが、その原点にあるのは、『考える』ということだと思うんです。
自分の地元の良さ、自分の好きな人、自分の好きなこと。
なんでもいいんですが、それらをもう一度見直して、再び徹底的に考える。『再考する』ということをしてから、映像を作ってみて欲しい。
そのプロセスがやはりすごく大事だし、今回グランプリを獲得した作品でも、その点が本当に素晴らしく、強さを感じました。」
ー今回の「地元サイコゥ!映像祭」での公開審査で感じたことはありましたか。
しんのすけさん「今回映像祭という場で、本広監督と清水さんと、20本の作品に集中して、あれこれと意見を交わしながら観ることができたのは本当に豊かな時間でした。
自分ひとりで見ていると、どうしても自分の意見にしかならないんですけど、お互いの意見を交換しているうちに、自分の感想が”育っていく”感覚がありました。それは、自分ひとりでは見つけられないもので、とても貴重な体験でした。」
🎥初代グランプリは「海渡り」と「農タメ」
初代グランプリは、公式審査員と一般審査員のみなさまの得点を合わせ、こちらの2作品に決定いたしました。
会場もオンラインも、納得の作品。会場にも喜びの声が上がりました。
グランプリ、そして各審査員からの特別賞を受賞された作品はこちらです!タイトルリンク先には、審査員のみなさまからのコメントもありますので、ぜひ合わせてお楽しみください。
【グランプリ】
🎉タテ型映像部門 グランプリ
『農タメ』/農タメ!チーム・田中 章悟さま
【審査員特別賞】
🎥ヨコ型動画部門
●清水亮司賞
『弁天さま』/ NPO法人Go up Seeさま
●本広克行賞
『2022年 もう一度食べたい富山のラーメン7杯』/かのたけさま
●しんのすけ賞(グランプリとダブル受賞)
『海渡り』/仲信 達也さま
🎥タテ型動画部門
その他の入賞作品・佳作作品はこちらの結果発表ページでご覧いただけます!
🎥地元LOVEなクリエイターのみなさまへ
最後に、地元LOVEなクリエイターの皆様へ、公式審査員のみなさまよりメッセージをお届けします。
■しんのすけさんより
みんなが知っている地元の良さと、自分しか知らない地元の良さ。
このバランスと表現方法の落とし所を見つけていくことが、
難しいけど大事なんじゃないかなと思います。
みんなが知っていることなら、見せ方を斬新にしてみる。
逆に誰も知らないことも、めちゃくちゃ丁寧に伝えれば、
そこに価値が生まれます。
このような「みんなが知っている」「誰も知らない」の、
それぞれの作品にとってのちょうどいいバランスが見つけられると、
"誰も見たことない。でも何かこの感覚を知っている"
"なんだろう、行きたくなる"
そんな映像が作れるのではと思います。
行きたくなる映像とは、体験を想像させる映像のこと。
"この作品がどう相手の想像を掻き立てるか?"
そういう視点を大事にしながら作品を作ることで、
相手の行動すら変えていける作品が作れるのではと思います。
■本広克行監督より
1人で映像を作る方ももちろんいると思いますが、
物語やドラマなどは、やっぱり1人では作れない。
何人か集まって、地方自治体なども巻き込んで作る。
そういう時にはやはりコミュニケーションが大事だと思います。
人が集まり、
そこにコミュニケーションが生まれて、
作品が生まれて、
その作品をみんなで一緒に観る。
そこにスクリーンがあるとやっぱりいいですね。
大きいスクリーンに映った作品をみんなで観て、
感動して、泣いて、笑って、というコミュニケーションが生まれる。
それをやると本当に盛り上がりますよね。
自分たちがつくったもの、やってきたことを
大きいスクリーンで観るだけで人って感動するんですよ。
スマホや、テレビのモニターで観るのとは全然違う。
体験としての価値がぐっと上がり、めちゃくちゃ感動の質が変わります。
それが『映画』なんですよね。
だからこの『地元サイコゥ!映像祭』も、
次はもう『地元サイコゥ!映画祭』にしちゃうことで、
もっともっと盛り上がって、面白くなっていけそうだなと思いました。
■清水亮司ディレクターより
初めての「地元サイコゥ!映像祭」は、
ホントにサイコゥ!でした。
でも結局のところ、
「地元サイコゥ!」が伝わる映像って
どんなものなんでしょう?
あまりに多様なあり方があって、正解って難しい。
よくよく考えてみると、
30万年以上前から続く人間のコミュニケーションの長い歴史の中で、
映像の歴史なんかたかだか100年くらいなんです。
30万年以上前、
もう想像もつかないくらい昔に
身振り、手振りなどの
原始的なコミュニケーションが始まりました。
そこから唄や踊りといった要素が加わっていき、
次に絵画というコミュニケーションが生まれたのは
ずっと先の約4万2000年前。
文字が生まれたのは紀元前3500年ですが、
書や本、版画、新聞などのコミュニケーションが
発達したのはここ250年〜300年ほど。
その後テレビやラジオなどの
マスコミュニケーションが発達して100年。
インターネットにいたっては、
世に浸透してからまだ20年ほどの歴史しかありません。
だから、「正解」なんていうものは、
きっとないんだと思います。
「地元サイコゥ!」な映像も同じ。
まだ「正解」なんてないはずです。
だから、
「正解」を追い求めず、
自分が 【サイコゥ!】と思えるものを、
作り続けてください。
さいごに、プロデューサー柳井よりメッセージ
「なぜ東京の映像制作会社が熊本でクリエイター塾を?」
合志市クリエイター塾の運営を始めて8年。幾度となくこの質問もいただきました。一番の理由は、僕たちが、熊本県合志市のこの「市民クリエイターを育てたい」という意気込みとアイディアに惚れ込んでしまったということです。
これまで、僕たちはずっと「映像」を作り続けてきた。
これからは、「人」を育てて行かなきゃいけないんじゃないか。
僕たちが、日本の未来のためにできることはなんだろう、と考えた結果でもあります。
そして実際に、熊本県合志市から始まって全国の方と合志市クリエイター塾の取り組みを進めていくうちに、そこに関わってくださる全ての「人」に、またさらに惚れ込んでしまったんです。
地方で自分の地元を盛り上げよう!と映像制作に打ち込んでいる人たちは、どの人も個性的で、面白い人たちばかりでした。
そこから生まれてくる作品も、僕たち映像のプロフェッショナルには、考えもつかないアイディアもたくさんありました。
そこには、検索でもAIでも見つけることができない、本当に地元の人だから知っている地元の魅力が詰まっていたんです。
今回、構想から7年という月日を経て、この「地元サイコゥ!映像祭」を開催できたこと、そしてこの映像祭をきっかけに、また新たに全国にいるおもしろい人、素敵なことにも出会えたことを嬉しく思います。
また来年も、たくさんの地元愛溢れる作品に出会えることが今から楽しみです。
やっぱり・・・
「地元サイコゥ!」
ですよね。
ご参加いただいたみなさま、ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました!また来年お会いしましょう。
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