
なぜ子どもが集まるの?「静まり返った神社」の境内に佇む「謎の建物」宮司に聞くと「鬼滅の..」『宇都母知神社』
2024/09/10 ヤフーニュース掲載記事
■この記事の好きなポイント■
専門的な情報を、必要とする特定の人々だけでなく、幅広い層に伝えることを願い構成した記事。
----------------------------------
【プライスレス藤沢】
~藤沢の魅力を再発見~
藤沢市内で見つけたプライスレスな情報シリーズ。87カ所目は『宇都母知神社(うつもちじんじゃ/藤沢市打戻)』の境内に建つ『郷土資料館』です。
平安時代中期にはすでにあったといわれている相模国十三社の一つ『宇都母知神社』。

場所は、以前ご紹介した『富士見の丘』や『井出農園直売所(打戻)』の近く。御祭神は、「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」「稚産霊神(わくむすびのかみ)」「若日下部命(わかくさかべのみこと)」と言われ、過去には「うつもちの里収穫祭」などをご紹介しました。
その『宇都母知神社』の境内に佇む、一見すると“古風な集会所”のようにも見える謎の建物が『郷土資料館』です(施設維持費(見学費):大人300円、子供100円)。

今回は、2024年9月末まで開催している同館のイベント「むかしのどうぐ展」の見どころと面白さを、宮司の御厨(みくりや)さんに教えていただきました。

“藤沢北部で実際に使われていた”「むかしのどうぐ」を数多く展示する同館。
御厨さんは「館内の展示品は通年でご覧いただけますが、“地域の子どもたち”にも関心を持ってもらいたいと思い、夏限定のイベントを企画しました。小学校の社会科見学で訪れる子どもたちや、親子連れ、祖父母とお孫さんで来館される方もおられました」と、この夏を振り返ります。
展示品の多くは農機具が中心ですが、資料館の入口には「昭和の一部屋」を再現した、こんなコーナーも...。

昭和初期のものと思われる「火鉢」のほか、花嫁が嫁ぎ先に持参した「桐箪笥(衣装箪笥)」、持ち運びのできる暖房器具「行火(あんか)」、40年前まではどの家庭にもあった「黒電話(ダイヤル式電話器)」など、今どきの子どもたちにとっては「初めまして」となる「道具のご先祖さま」がいっぱい。
ところが、「私も驚いたのですが、今どきの子供たちは『黒電話』の使い方なんかを知っていました」と話す御厨さん。一体なぜ...?

「子どもたちは、アニメ放映中の『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』を見て、自然と“むかしのどうぐ”を学んでいるようです」と御厨さん。教科書を開かなくても、テレビアニメが子どもたちに“むかしのどうぐ”を教えていたという事実に、筆者も大変驚きました(言われてみれば…ですよね。笑)。
その視点から館内を眺めると、壁に掛けられている「蓑(みの)」は「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する「子泣き爺」が身に着けていましたし…

「『大八車(だいはちぐるま)』や『背負子(しょいっこ)・背籠(せかご)』は、『鬼滅の刃(きめつのやいば)』に登場します!」と御厨さん。
人気アニメに出てくる道具であれば、子どもたちが好奇心を持って関心を寄せる光景が容易に想像できますよね。「一度本物を見てみたい!」と感じる子どもも多いことでしょう。

木材・石・米俵などの重い荷物を運ぶことを可能にした、日本の“最も古い人力運搬車”「大八車」。
御厨さんは「当館に展示している『大八車』には、『高座郡役所』と書かれた焼印が押されています。これは納税したことを認める焼印で、今で言う“車検シール”です。当時『大八車』は車とみなされ、使用には納税の義務が必要だったことがわかりますよね」と説明します。
また、館内の一部には謎多き展示品も…。

まずは「養蚕」に関わる農機具。
神社の御祭神のひとつが“養蚕の神”「稚産霊神(わくむすびのかみ)」であること、また地域内から養蚕の農機具が見つかっていることから、藤沢北部の一部では古代から養蚕が行われていたのではないかと話す御厨さん。ですがそれを記録した資料などは残されていないため、詳細はわかっていません。
このほか、文政11年(1828年/江戸時代)10月に作成された「相州高座郡打戻村絵図」にも不思議な文字が…。

「『相州高座郡打戻村絵図』は、196年前の藤沢北部の打戻村内のようすを俯瞰で描いたものです。驚くことに色彩見出(色分け)がついており、田・川・道・畑・山の5項目を色ごとに区分し、見やすく構成されています」と御厨さん。
続けて、「なかでも不思議なのが『小出川』の表記です。この地図の中では『鯉出川』の字が当てられており、野鯉が多く生息していたのではないかと想像させます」と話します。


こうした未解決の謎も含め、藤沢北部の貴重な資料を保管する『宇都母知神社』の『郷土資料館』。
「普段見ているテレビアニメに関連づける」「謎解きミステリー風に推察を楽しむ」といった、従来とは異なる新たな切り口で郷土資料に触れることで、難しいと敬遠しがちな地域の歴史が、面白さから入り込める学びの一歩になるかもしれません。機会があれば、ぜひ一度ご来館を。
『宇都母知神社』
住所:藤沢市打戻2662(慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス西側)
アクセス:小田急江ノ島線・相鉄いずみ野線・横浜市営地下鉄ブルーラインの「湘南台」駅、またはJR「辻堂」駅より神奈中バスをご利用ください。
電話:0466-48-9633
社務対応時間/8:00~16:00
『郷土資料館』
開館時間/9:00~16:00
休館日:毎週水曜日
※神職研修並びに外祭等出張時は閉館。事前にお電話にてご確認ください。
社務所:TEL/FAX 0466-48-9633
施設維持費(見学費):大人300円、子供100円
※20名以上でご見学の場合は団体料金として、大人:240円、子供80円となります。
公式 ホームページ(外部リンク)
※詳細は『宇都母知神社』の公式サイトをご確認ください。
取材・校正協力 宇都母知神社 宮司 御厨浩和 様
※参考文献:「つうしん うつもち」