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裏山自然観察日記1「横浜に住んでいた頃の話」横浜のチベットでホトケドジョウを捕る

 結婚当初、1990年代、私と妻は横浜市の山側、「横浜のチベット」と言われ地域にある古い団地に住んでいた。
この団地5階建てで当然エレベーターはない。階段しかない。昭和40年代に建てられた団地だ。
団地の横に広大な里山、谷戸が広がっていた場所だった。

 東京の街から引っ越した私、野焼きの匂いがする。こんな場所がまだあるのかと驚いた。
しかしこんな土地を土建国家は見逃さない、開発の予定は多くあった。
だが私が引っ越した頃はバブルが弾けており、大規模な宅地開発、レジャー施設等の開発など全てが中断されていた。

 私としてはラッキーだった。
里山周辺に10キロ近いマウンテンバイクトレイルを発見した。私のプライベートコース。家から1分でマウンテンバイクコース。最高だった。
その後、子供が産まれると自然を楽しみながら子育が出来た。

 そして10年程経ったある日、大型トラック、重機が再び動き出した。開発が急ピッチに進んだ。
ちなみに今は昔の面影はない。

 その頃の日々をホームページにアップしていた。そこには懐かし日本の自然があった。
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1998年7月 *ホトケドジョウとザリガニ
 子供って、遊ぶとき全力で大声をあげて遊ぶ。だから子供のいる遊び場はキンキンと響く大声で満ちている。子育て未経験者にとってはかなりきつい音だ。それにしてもうるさい。
 
 今日は天気がいいので裏山のザリガニつり場も混んでいった。思ったより家族連れが多い。最近のアウトドアブームで、自然に親しもうということで、こんな場所も混むようになった。

 この場所は、元々田んぼで、今は放置されたまま沼地帯なっている。となると何人かの子供は絶対に沼にはまる。そして泥だらけになる。その時の子供は本当に楽しそうだ。

 そして初めは怒鳴っている親達も、結局、泥だらけの子供に泥をつけられてしまい、最後には、そんな泥などなんのそのと子供の道具を取り上げてザリガニ釣り夢中になってしまう。

 そりゃそうだ。泥とか水とかは一度付いたり濡れたりすれば、もうそのことを心配することもないので、大いに楽しめる。アウトドアでは先に汚れればその分だけ楽しめる。
 
 さて、今日は私と息子(5才)と娘1(2才)連れだ。
そして本日の獲物、目的は、なんとホトケドジョウとニホンアカガエルを捕まえることだ。ここで、そんなマニアックなものを捕まえようとする子供らはいまい。皆ザリガニ釣りしかしてない。だから混んでいてもあまり関係ないのだ。

 しかし何か臭い
「くさいなぁ」と息子も言う。
見ると、至る処にザリガニ釣り用のスルメが、水にふやけて転がっている。それが臭い。
今も昔もザリガニの餌はスルメがオススルメだ。
 
 息子と私とで何度か細い水路に網を入れる。30分ほどでホトケドジョウを10匹捕まえた。
ホトケドジョウは他のドジョウ類と比べ浮き袋が発達しており、水中をうまく泳ぐ。だから一見すると鯉かなんかの稚魚のように見える。全体にずんぐりしていてヒゲも可愛い。成魚でも5cm以下なので、普通のドジョウより小さい。今年は何匹か飼育するつもりだ。
 
 「よーし、次に行くぞ!」私は息子に言った。
 そう次はカエルだ。子供達はシーズン当初に、妻と何度もここに来て、かなりの数のザリガニを捕まえており、現在5匹を飼育中だ。だからザリガニには興味はないのだ。
「カエル、カエル」ここでは、アマガエル、ウシガエルとトウキョウダルマガエルと、この前リリースした本栖湖産のニホンアカガエルもいるはずだ。
カエルは一般に夜行性だから昼間に捕まえるのは難しい。でも丹念に葦の生える水際を調べる。
 
「いたーっ」私は、すぐに網を使い捕らえた。まさにタイミングの勝利だ。職人の技とでも言いましょうか。私たちは小さいながらトウキョウダルマカエルを手にした。
私は久しぶりにカエルのヌベヌベ(しっとりと張り付くような)の感触を楽しんだ。

 娘1はまだものを握る力の加減が上手く出来ないので、握るとカエルが潰れそうだ。
 家に帰るとホトケドジョウは、ザリガニが3匹入っている水槽に入れた。カエルは、水を張ったバケツに入れておいた。これで当分会社から帰ってくる楽しみが増える。
 
*****
 
 翌日。
 会社から帰ると、朝は忙しくて見られなかったホトケドジョウを見ようと水槽をのぞき込んだ。
「あれ、いないぞ」妻に聞いた。
「あのさー、ドジョウ移したの?」
「なに? 知らないよ」
どこかに隠れているのか、丹念に水槽を覗いた。一匹いた!
知らない間に横に息子がいた。
「なあ、ホトケドジョウいないぞ、おまえ知ってる?」
「うん、ザリガニが食べたよ」とのご回答。
そうか、野生のザリガニを甘く見ていた。
「カエルはどうした?」
「え? 死んだよ」
「おまえ、いじり殺したんだろう」
憤慨する私の横に来た妻が言う。
「おぼれたよ」
「おぼれた?」
「水が多すぎて溺れたの、カエルも溺れるのよ」
そうだ、カエルにはえらがなかった。
えらいすいません。お粗末でした。
 

里山の水路
ホトケドジョウ

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