【まちのごはん帖】なんだかいい日の味
今回は、あるデイサービスさんにご協力いただき、おばあちゃんが教えてくれた、ごはんとかぞくの記憶をまとめました。
教えていただいた料理は、おばあちゃんの勘と手つきで作り出せるもの。
到底その域には及びませんが、
おばちゃんの味と我が家の好みが混ざり合った、「こんな感じ」をお楽しみいただけたら幸いです。
ミヤ子さん 当時90歳のおばあちゃん
好きだから、よく歌うの
艶やかな声、はじけた笑顔がマスク越しからもうかがえる。
「嫁さんがね、ほんとによくしてくれてね。いつもは、顔を洗っておしまいだけど、最近はクリームを買ってきてくれたの。それを毎日薄く付けるのよって」
家には友人がよく遊びにくる。
「もう十年以上前になるけれど、民謡をずっとやっていて。今はもう習ってないけど、好きだから『今日はこの曲』って決めて、よく歌うんです」
唄の相棒、三味線が盗まれたこともある。
「先生級の三味線を買ってね、いい音がするやつで毎日弾きながら練習してたの。そうしたら、家は通りに面していているもんだから、誰かに狙われちゃったのね。それきり買ってないの。いい音を知っちゃったから、安いのは、もういらないです」
あの時のお料理を、また食べたい
二人の息子の子育て中は、とりあえず、じゃがいもと鶏肉を煮ておいた。「わたし、あまりごちゃごちゃと入れるのは好きではないんです。だから、昆布もお魚も入れない。鶏肉からお出汁が出るでしょう。それをよく効かせるんです。じゃがいもが柔らかくなるまで煮てあげれば、子どもも喜ぶから。砂糖も使わない。お醤油少しで十分なんです」
四つ年上のご主人は、どんなお料理でも「おいしい、おいしい」と食べてくれる優しい方。家で料理の注文をすることはなかったが、近所の寿司屋には一緒によく通った。そのメニューで、私も、と作るようになったのが茶わん蒸し。子どもたちにも大人気で、何気ない夕飯から、誕生日、お正月にまで登場した。
「出汁をたっぷりとっておかないとね。子どもたちにはそこらにあるどんぶりに、一人前用意すれば、満足するんです。卵は一度に十個くらい、使っていたわ。つるを綺麗に取ってね。五人分で卵は六つと覚えてたのよ」
ここでも、素材から出てくる味を大切にするため、味付けは醤油と砂糖のみ、気分で市販の出汁を加えていた。
「あとはね、蒸し加減が難しいのよ。はじめは数分蓋をしないで、それから八分目まで蓋を閉めてね。ほのかなお湯加減で。何回も何回も失敗していいんです。何回もやって自分のものにして。なんだかいい日は、茶わん蒸しなんです」
そうして出来上がった茶わん蒸しののど越しは、最高のご褒美なのだろう。
食べ盛りの子どもたちのお弁当といえば、ドカ弁。
「昆布巻きは、前々日に昆布を煮ておくの。私も大好きだから。それを入れてあげると、お弁当おいしかった~、またこしらえてねって帰って来るのよ。ただ、かんぴょうが面倒くさい 」
男の子二人。親が食べる分が残らないこともしばしば。卵焼きを作るにも、追いつかなくなってきたある日。
「もう、丸めないで、卵をフライパンの上でかき混ぜて、それをお弁当箱の上一面に広げてやったの。ひとり卵3個分。そうしたら、こんなの初めてって大喜び。友達からねだられたんだって。自分でも、あの時の料理食べたいなあって、たまに思うんです」
とり肉じゃが
じゃがいもの皮をむき、ひと口大に切る。
鶏もも肉をフォークで刺してから、ひと口大に切る。
鶏もも肉におろししょうがを揉みこむ。
鍋をよく熱してから油を入れ、鶏もも肉に軽く焼き目を付ける。
じゃがいもも鍋に投入。油をからめる。
酒と水を具が浸るくらい入れて弱火~中火で15分ほど煮る。
灰汁を取る。灰汁が落ち着いたら落し蓋をする。
じゃがいもが柔らかくなってきたら、醤油と好みでみりんを入れて味付け。
さらに5分ほど煮る。冷めてからの方が味が染みていておいしい。
こぶまかず
かんぴょうを袋の表記通り戻しておく。
(例)水洗い→塩もみして10分放置→水洗い→沸騰したお湯で約8分→ザルにあける
昆布とかんぴょうは丸めるのが大変なので、ひと口大に切る。
はじめは酒・水・砂糖で煮る。落し蓋。約10分
醤油を加えてさらに5分、落し蓋。
みりんを加えてさらに5分、落し蓋無し。
※昆布は一度だしを取ったものや早煮昆布を使用。まだまだ研究の余地あり!
たま弁(炒り卵)
卵・砂糖・塩・酒を鍋に入れてよく混ぜる。それを中火にかける。
卵が固まり始めたら、火を弱める。
菜箸2~3組を束ねて持ち、鍋の中を絶えず混ぜる。
卵がぽろぽろしてきたら、表面がつやっとしているうちに火から下ろす。
余熱で火を通したら、バッドに上げる。
ごはんは思い思いに。その上に好きなだけ炒り卵をかけて。
※鍋はテフロンの方がやりやすい。
茶わん蒸し
※※修行中※※
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