「21世紀の資本」で世界経済を映画から学ぶ
書籍「21世紀の資本」で主張されていることは何か
フランスの経済学者ピケティによる書籍「21世紀の資本」は、700ページ以上の大作で、さらに経済専門書にも関わらず、世界各国で100万部以上を売り上げました。2014年の年末、空前の「ピケティーブーム」が起こり、どこの書店でも本が平積みされていたことを覚えています。
この本が売れた理由の一つは、この「1行でまとめられる要約がある」からとも言われています。
膨大なデータを分析した結果、「資本収益率(r)はつねに経済成長率(g)より大きいという不等式が成り立つ」と主張されています(r>g)。
「21世紀の資本」が映画になった
ベストセラーになった本とはいえ、700ページの分厚い経済書を読むのは大変です。
ですが、日本でも2020年に公開された映画「21世紀の資本」では103分でその内容を感覚的につかむことができます。
難しい数式などを用いずに、内容を上手く映像で表現していて、「ウォール街」「プライドと偏見」「レ・ミゼラブル」「ザ・シンプソンズ」といった映画や小説、ポップカルチャーなどを使った構成で見ていて飽きることもありません。
市場の発達と自由経済システムの生成
近代以前の世界は、専制支配社会の時代が長く続いていました。
帝国のような専制型直接収奪支配をしていた国では、15%が支配層で、85%が被支配層。被支配層から3分の1ほどの収奪をして軍隊の強化、インフラの整備などを行っていました。「殺さぬように生かさぬように」被支配層を限界的隷従状態にしてきたわけです。
それが変わってきたのは、「普遍分業」と「普遍交換」が発展してきたからです。生産性が飛躍的に高まり、交易の発展などで普遍的な交換が実現していくことにより、「閉鎖的・秩序固定・交換なし・搾取と再分配」の社会システムに変化が生まれることになります。
アダム・スミス以降の近代経済学
18世紀には、経済学の父とも言われるアダム・スミスが「道徳感情論」と「国富論」を発表します。
「国富論」では、「自分の利益の追求が、結局は社会の富を豊かにする」と主張しています。
一方で、「道徳感情論」では、「適切で公正な共感が社会には重要」と主張しています。
一見すると矛盾しそうな2つの主張ですが、自由な経済ゲームをフェアなゲームとして維持するためには、メンバーシップとしての市民的モラルを全員が持つ必要がある。ということなのだと思います。
資本主義の支持へ
これは多くの西側諸国が、ということになるかもしれませんが、近代社会では資本主義が支持されるようになりました。
18世紀まで、資産はごく少数に集中していました。お金がないと地位もあがらないですし、勉強や努力では出世できません。
18世紀の貧乏人は悲惨でした。運がよければ召使い、他はみんな日雇い労働者。仕事を求めてさまよい、地主たちの横暴に耐える、福利厚生もない、学校もまったくない。
金持ちは相続が重要でした。そして、政治力も重要。資本とは、自分で稼いだお金ではなく、相続したお金のことでした。
その反動で、全員が等しく平等である共産主義への傾倒も一部の地域では起こりました。しかし、そこにあった欺瞞が明らかになり、資本主義への支持が強まりました。
現時点ではどうなっているのか?
では、今の社会は良い社会になっていると言えるのでしょうか。
映画の中では、ピケティがこのようなことを語っています。
市民の生活水準の向上が望まれていたはずです。
福祉の整備・充実、大衆消費社会の登場(以前は普通の人は幸せや娯楽を追い求めることすらできなかった)、格差の縮小、中流階層の形成、労働時間の短縮などです。
各人の自由を確保するための権利は以前よりも良くなっているところもあると思います。生活レベルも、中世の頃と比べると著しくよくなっているとも言えます。
ですが、格差の縮小、中流階層の形成などはどうなのでしょうか。以下は、映画の中の1つのシーンです。
今、世界で起こっていることの背景に何があるのか。これを考えるヒントになる映画だと思います。
書籍の解説記事は、以下の翻訳者によるトークショーの書き起こしがわかりやすくて、おすすめです。
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