2018年1月の記事一覧
プリンセス・クルセイド #6 【悪意の足音】 5
「でえりゃあ!」
「くっ……!」
およそプリンセスらしからぬ叫び声を上げながら襲い来る猛攻に対処しながら、シトリンは状況の把握に務めた。
目の前に広がるのは緑が鮮やかな草原で、所々に石柱が立ち並んでいる。遥か遠くに見える湖は穏やかに水を湛えているが、その上空には何故か数台のベッドが浮遊していた。
「はあっ!」
シトリンは強く大地を蹴り、そのまま飛び離れて間合いを取った。そして近くに
プリンセス・クルセイド #6 【悪意の足音】 4
エアリッタの街には、2つの主要な大通りがある。1つは工房が立ち並ぶ職人街で、もう1つは市民の生活の要となる商店街だ。その商店街の中を、アンバーは当てどなく半ば彷徨うようにして歩いていた。
「……一体どうしろって言うの……」
アンバーはため息交じりに不平をこぼした。商店街の道は、理路整然と区画が整えられている職人街と違い、複雑に入り組んでいて高低差も激しい。故にタンザナの財布を盗んだ犯人を捜
プリンセス・クルセイド #6 【悪意の足音】 3
ウィガーリーの王都エアリッタの市街地からやや離れた所にある職人街。その一角に位置する鍛冶屋の台所で、タンザナは思案に暮れていた。
「さて、どうしましょうか……」
彼女の目の前の戸棚には、蓋の付いた壺が置かれている。壺は透明ではなかったが、彼女の持つ類まれなる嗅覚で中身はクッキーだと判明していた。
「……いただきましょう」
タンザナは一言呟くと、壺に向かって手を伸ばした。壺はやや高い位