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米栗カレンダ

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米栗久三郎による、1日1絵の、日めくりエッセイ。 3歳の「彼」の今日を綴ります。 こどものありようって、哲学だなあ…と思うのです。
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2020年8月の記事一覧

【米栗カレンダ 20200830】期間限定独裁者

(夜の9時半。やっと寝たかな?と思った3歳の彼がガバっと起き上がり、 「のどが渇いたの」 と言う。 パパが麦茶をコップにいれて持ってきたら、 「ママが淹れて来るのよ!」とコップを突き返してくるので、「せっかくパパが淹れてくれたのにそれは酷い!」とママが怒ると、彼は号泣して抵抗。最近、この「ママが」が多い。 着替えを手伝うのも「ママが!パパやだ」 シリアルに牛乳を注ぐのも「ママが!」 熱いごはんをフウフウして冷ますのも「ママ!パパはフウフウしないで!」 と、仕事

【米栗カレンダ 20200829】シュールなループ

スピード、出しすぎちゃって! (3歳の彼をチャイルドシートに乗せて高速道路を走った。 彼は大好きなトミカのミニカー『クラウンのパトカー』を握りしめながら窓外をゆく「タイヤ3つのトラック!」「ジープ!」「交通パトロールカー!」「タンクローリー!」と車両の走りを楽しんでいた。 途中、SAに車を止めたら、パトカーが入ってきた。 「本物のパトカーだ!」と目を丸くした彼。さっそくパパと手をつないで、リアルパトカーにダッシュした。 パトカーは、SAで接触事故を起こしたらしい2台

【米栗カレンダ 20200828】子どもの長さ、大人の短さ

(最近、時間の進み方が変わった。 もちろん体感として。 楽しいことをしているのに時間の進み方がゆっくりに感じることがある。 逆に、ちょっとしんどい事をしているのに、思いがけず時間が過ぎていたり。 これまでは、楽しい時間は矢の如く過ぎ、辛い時間はだらだら長びくものだった。 楽しい…が、子どもの楽しいと直結しているからか。 子どもの1日は長いから、その体感とシンクロしている気がする。 対して辛い時間は、たいがい自分問題だから、大人にとって1週間があっという間に感じるよ

【米栗カレンダ 20200827】タマシイの個性

これたべてみて。すごうく、おいしいから。 (パパがカレーを作った。 それをひとくち食べて「おいしい。」と目を丸くした彼。 「よかった。」とパパは言う。 すると彼は、スプーンでカレーをすくうと、さっとママに差し出して、 「食べてみて。すごうく、おいしいから。」 いやいや、ママのお皿にも同じカレーがあるよ……と思いつつ、ありがたくそのスプーンのカレーを食べる。「おいしいね!」 その言葉に満足気に頷いた彼は、また一匙すくって、今度はパパに。 「食べてみて。」 いや

【米栗カレンダ 20200826】壊したつもりで壊せてない。

アメリカの大統領の夫人が、歴代大統領婦人の植えた薔薇やチューリップを根こそぎ引き抜いてしまったらしい。 そして自分の気に入った庭に作り変えたらしいけど、 歴史を壊して自分らしい場所を作るというこの行為……何かに似ている。 そう、砂漠の国の過激派がバーミヤンの仏像を破壊したり、遺跡を爆破したのとそっくりだ。 破壊は快感を伴うから、キモチイイんだろう。 でも歴史的存在を消しても、歴史を消すことなんてできないから、時間が経てば無常感に苛まれるんだろうなぁ…… だって歴史

【米栗カレンダ 20200825】オヤは関係ない

「こういうすべりかた、してみただけ!」 (ソファに駆け上がろうとして、床に置いてあった(自分で投げ捨てた)タオルに足を取られ、盛大に滑って転んだ彼。 泣くか…と思いきや泣かず、キリッとオヤを振り返るなり、 「こういう滑り方をしてみただけ!」 と、言い放った3歳児。 滑ってもわざと滑ったのだと主張する意地っ張り。(転んじゃった、テヘっ)と可愛い笑いに転がさない、ストレートな表現を選ばないところに遺伝子を感じる。 『親譲りの無鉄砲で…』というのは、夏目漱石の【坊っちゃ

【米栗カレンダ 20200824】共感されない

なに、とってるの? (シャベルですくい上げた砂を、ワゴンにザザっと入れる。 砂場で、彼はそれを何度も繰り返した。 他に誰もいないからいいものの、かなりの砂埃がたちこめる。 汗をかいているから肌に砂が張りつくし、 ゴホゴホと咳き込むことにもなる。 が、いいこともあった。 微細な砂ホコリのおかげで、虹がたったのだ。 急いで写真に撮っていたら、彼が「何、撮ってるの?」とお尋ねになる。 「虹だよ。」と写真を見せたら、 「ふうん。」と興味なさげに、また土木作業に戻っ

【米栗カレンダ 20200823】苦味がある

びーるはままのなの。 (母はビールを飲みたかった。 3歳児は父(下戸)とスーパーへ買い物に行き、餃子の皮とビールを買った。 レジの店員さんに教えてあげた。 「ビールはママのなの。」 店員さんは、子ども嫌いなのか、ただ疲れていたのか、何の反応もせずに子どもの発言を無視して料金を告げ、お金を受け取り、買い物は終了した。 (こんなひともいるんだな。) と3歳児なりに理解したらしい。 子どもにニコニコしてくれる人もいれば、できるだけ関わりたくない人もいる…小さな声に聞

【米栗カレンダ 20200822】灯籠祭

(住んでいるマンションの、燈籠まつりに行った。 祭りと言っても、コロナゆえに屋台が出るわけもなく、 居住者が絵や文章を書いた灯籠が、マンションの道沿いに点々と置かれ、それをそぞろ歩きしながら眺めるというもの。 うちの3歳も、1週間前に絵を描いて提出したので、 「あるかな〜、あるかな〜」と自分の灯籠が飾られているのを楽しみにでかけた。 そしてもちろん、あった。 嬉しそうな彼は、走っていったり来たりしながら何度もそれを眺めていた。 他にも、北斎の赤富士や、夏野菜の絵

【米栗カレンダ 20200821】ごきげんな人

いえうんぱんしゃなのよ。 (最初は、何を言っているのかわからなかった。3歳児の言葉はまだまだ聞き取りづらいのだ。が、根気よく聞きだしたら、 「いえうんぱんしゃ。図鑑に乗ってたのよ。それを作るのよ、レゴで。」 家運搬車という、アメリカかオーストラリアあたりでしか見られないトラックがある。それは、家をまるごと地面から持ち上げて、トラックの荷台に載せ、だだっ広い道路を移動していく。 その写真が、図鑑の1ページにまるまる載っていたのだ。 彼はそれをレゴで再現しろという。

【米栗カレンダ 20200820】正しさは自分で選べる

めいろがすきなのよ。 (何しろ酷暑なんである。 自ずと室内での遊びのバリエーションを増やさないといけない。 レゴブロック、お絵かき、ゴムボールでのサッカー、野球、かくれんぼ、動画鑑賞(トレーラーが延々と走っていくだけの)、ゼリー作り、歌……しかし飽きるので、書き物系を手に入れた。 『2歳からの迷路』『2歳からのひらがな』……3歳の彼は、いわゆる夏休みの計算ドリルに立ち向かう小学生のように、果敢に椅子に座り、ペンを握った。 しかしドリルっぽいものや、知育教材なんてうち

【米栗カレンダ 20200819】幸せだなあ。

なんでわらってるの? (酷暑の今日、夕方になるのを待ちわびて、彼と日陰の砂場に行った。 彼以外、誰もない。 ダンプトラックに砂を積み込み、砂場の周りを走らせ、砂をおろし、また積み込み…をコツコツ繰りかえし、疲れたらシャボン玉を飛ばし、そしてまたトラックを走らせる。 楽しそうだ。 スコップで砂をすくってニコニコしている彼を、ニヤニヤ眺めていたら、 「なんで笑ってるの?」と訊かれた。 なんでだろう。幸せな気持ちになってるからなかな。楽しいを纏っているひとを見ていると

【米栗カレンダ 20200818】最悪状態のやりすごしかた

たいやがういてるのよ。なおして。 (手枕をして、うっとり眺めている。 レゴでつくったトラックである。 「レゴで作るのよ。タイヤ、後ろに3個、じゃなくて7個つけるのよ! トレーラーじゃなくてダンプトラックのかたちでね。」 と彼からリクエストがあり、オヤが散々苦労して作ったトラック。 それをゴロンと横になり、手で動かしてはタイヤの動きをチェックして、 「ここのタイヤが浮いてるのよ。直して。」 との直し注文を入れ、そして出来上がったトラックの動きをうっとりと眺めてい

【米栗カレンダ 20200817】ご機嫌ですよ。

ぼくは、はちです。 (人差し指を立てて、ニヤニヤしながら近づいてきた彼は、 その指をオヤのほっぺたにポチッ。 彼「ちっくん」 オヤ「あれ、蚊にさされちゃった。」 彼「ちがうのよ。僕は、蜂です。」 オヤ「蜂さんか!イタタ…痛いその針はどこにあるんですか?」 彼「お尻なのよ!♪プリプリプリプリ〜♪」 陽気な蜂は、鼻歌をうたいながら去っていった。 子どもって、多かれ少なかれ「陽気」がベースにあって、 そこに「眠くて不機嫌」「お腹がすいて不機嫌」「転んで悔しい」「