うちの祖母が運転をやめません
「うちの父が運転をやめません」
この本を手にとったのは、題名どおり、祖母が運転をやめなかったことから。
去年の12月、祖父が亡くなった。
何年も前から闘病していて、わたしが大学一年生の頃に、「もう1週間も生きられないかも」と言われ、慌てて帰省した。
なんとか持ち越して、4、5年ほど経っていた。
叔父が介護施設をしているので、最期は叔父の施設で息を引き取った。
コロナ禍だったこともあり、祖母は祖父を家で介護するために自分もほとんど家に篭っていた。どこかに出かけて病気をうつしたらいけない、その気持ちは誰よりも強かったと思う。
祖父が元気な時は、フリフリの洋服を着て出かけるような祖母。祖父が寝たきりになって痩せこけ、表情も暗くなっていた。
祖父が亡くなった後は、祖母は抜け殻のようになり、一人でいるのを怖がった。もともと忘れっぽかったものの、祖父が亡くなってからは一段と忘れっぽくなっていた。
とうとう心配した母や叔母、叔父が病院に連れて行くと、認知症だということがわかった。
車の運転はもちろん危ない。
でもコンビニまで車で10分の田舎に住んでいる祖母にとって、車を取られることはとても大きかった。
認知症だということも忘れてしまう祖母は、
「わたしはまだ運転できる、絶対渡さないからー!!!」
と車の鍵を手放そうとしなかった。
そしてしばらく経ったある日、祖母がみんなに黙って車を買っていたことがわかった。
みんな驚きすぎて声も出ない。
「お父さんと買おうって言ってたの」
そう言って祖父と約束していたという車を買っていた祖母。
鍵を渡しでもしたらいつ事故するかわからない。自分だけの事故ならまだしも、他人を巻き込む事故なんてしたら、、。
なんとか鍵の一つは母が預かり、もう一つは神棚に置いておくことになった。
それからというもの、祖母は何かあるごとに「ちょっとでいいから車の練習付き合って」と母や叔母を誘うようになった。
一度練習をした母は、「エンジンの掛け方もわからないんだから、運転なんてできない」と諦めと悲しみが混ざった顔をしていた。
数ヶ月後、もう一度祖母を連れて病院へ行った母。
病院で、祖母が「まだ運転できますか!」と聞いたが、「まだ諦めていなかったの?」と先生から言われたらしい。
それを聞いた祖母はとてもショックを受けたようで、「もう死にたい」とまで言い出した。
そしてその場で車を買ったときの担当者に電話をかけ、「もう車に乗れないって言われたので、車売ります!!!」と言ったらしい。
そんなこんなで祖母は車を手放すことに。
新車で買い、あまり使っていないものの買った時から100万ほど引かれた値段で買い取られた。
祖母が運転をやめない問題はこれにて終了。
手に取った当時からバタバタして時間に追われ、なかなか読めていなかったこの本。祖母が車を手放してようやく読むことができた。
主人公もわたしたちと同じように様々な問題を抱えて高齢者の運転問題に向き合っている。
自分の近くに住まわせたり、自分が実家に帰ったりすることでそう上手くはいかないことを知る。
そして主人公が行き着いたのは、、。
とても学びになる本だった。
高齢者の運転問題だけでなく、家族のカタチについても考えさせられたし、高齢者の実情や気持ちなど、学ぶことがたくさんあった。
わたしも祖母が元気なうちに、祖母孝行しないといけないなと思っている。
同じように、自分の両親や祖父母が車を運転している人、運転をやめさせたい人、どうしようか迷っている人に是非読んでほしい。
やめさせる前に読むほうがいいかも。
近くにこの問題で悩んでる人がいても、是非オススメしてほしい一冊。