『推定無罪』
こんばんは。
少し前に他課の職員から『推定無罪』についてお尋ねがあったので、このことについて今回はお話ししたいと思います。
お尋ねされた内容は、「業者が起訴された段階で、指名競争入札の指名停止を実施するのは、推定無罪に反するのではないか」というものでした。この質問の意図、お分かりになりますか?
まず、容疑をかけられた段階で「被疑者」、検察から起訴された段階で「被告人」、裁判で刑事罰が確定した段階で「犯罪者」という流れで、立ち位置が変わっていきます。
検察から起訴された段階、すなわち「被告人」の立ち位置は、「推定無罪」言い換えれば「疑わしきは罰せず」という考え方からすれば、まだ無罪の人なんですよね。
先のご質問の意図は、つまり、無罪の業者にペナルティを科すのはおかしいのではないかということなんですね。
■最終的に無罪を勝ち取った者は刑事補償法による救済が図られるが、我が国に「推定無罪」は有名無実化している。
刑事事件における起訴は、99.9%の有罪率と言われ、検察が確実にクロと確信した案件に限定されることからこのような制度設計が行われているものと思われます。
その理由は、検察官に送検されても、検察は有罪判決をほぼ確実に得られる程度の証拠が揃わない限り起訴を控えること(起訴便宜主義)にあるとされています。
こういった状況を踏まえ、種々の法制度でフライング気味のペナルティを科すことが設計されているものと思われます。我々公務員で言えば、地方公務員法28条2項2号において、刑事事件に関し起訴された場合、職員は休職となり、禁錮以上の刑が確定された場合には同条4項の規定により、当該職員はその職を失うことになります。
もちろん、0.1%の奇跡と言える無罪を勝ち取った暁には、刑事補償法による救済が図られることになります。
当初の指名停止の件についても、各自治体の措置要領にある指名停止の要件に合致しておりますので、制度的矛盾はないものと考えられます。
しかしながら、日本は真の法治国家とは言えず、情緒的な大衆の感情に左右されうるエモーショナルな国家だという事象が多く見受けられます。無罪となった後も、実名報道等によるメディア・パニッシュメントやSNSの普及による私的制裁の横行による名誉毀損の度合いは余りにも大きく、当事者には名誉回復の機会が皆無であり、社会復帰への道のりは険しい状況にあります。
今回はこのあたりで。ではでは。
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