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小見山転子(元:竹村転子)
2023年12月22日 21:25
窓辺にはドリームキャッチャー鞄には神社のお守り部屋にはお香を充満させてちいさく座り込んでいる ハーブのお茶を飲んでもなにも解決はしないいつか全ての生き物は死ぬいつか地球は粉々になる いま書いている文字達は私のことなど気にも留めなくていま文字を書いている私を誰が造ったのか私は知らない 本を閉じたらお話は終わるのだろうかいま、ここにだけ生きているそうだろうか ち
2023年12月22日 21:26
おじいちゃんがいつも連れて行ってくれない公園があったどうして行ったら駄目なのと訊いたらあそこには人がたくさん埋まっているから 空襲で死んだ人達がそれが東京 新宿の京王デパートの大食堂に行くと美味しいお子様ランチがあって屋上には金魚と鳩がいてじゃんけんゲームが十円でそれが東京 可愛がってくれたおばさんの家が地上げされて豪華なマンションが建って入居者が集まらないそれが東
お姉ちゃんがダイエットのために利尿剤をたくさん溜めていて本当にダイエットのためなのかな飲み過ぎたらたぶん死んじゃうよね怖いから全部ビオフェルミンにすり替えちゃった今のところ気付いてないみたいビオフェルミンならたぶん死なないよねクラスメイトがそう話していた 『おなか大切に』そうなのかな毎朝おなかが痛かったのに高校を一日しか休まなかったその一日はわざと休んだ体育祭危うく皆勤
2023年12月22日 21:27
全人類に順位をつけたなら私はぜったい最下位だ殺人犯や独裁者だって私よりは上位のはずだ生きているだけで公害だ死んだほうがいいはずだごはんを食べる権利なんてないのに今日もお腹がすいてしまうお葬式を夢見ながら今夜も眠ろうと試みる統合失調症だとお医者さんに言われて全然びっくりしなかった そんな話を打ち明けられる友達がひとりできたうつ病のミサトちゃん同じこと思って生きてきたと
2023年12月22日 21:28
誕生日の前日にヨシノちゃんが自殺したと誕生日の翌日に知りました誕生日ケーキを焼いてあげなかったから死んでしまったのかもしれないヨシノちゃんのお母さんはそう言って泣きました 具合が悪いとは知っていたのです自殺について話し合いさえしていたのです死にたい死にたい繰り返し送られてくるメールに困惑していつしか私は返信を疎かにしていましたご家族と一緒に暮らしているからと病院にもかかって
2023年12月22日 21:29
素晴らしく異次元とも思えるライブを吉祥寺でみてお酒を呑んでお喋りもして帰る土曜日の夜だから電車は空いていて座ることができて楽だねとぼんやり車内広告を眺めながら揺られる明大前に着いて次の次に来る各停に乗ろうと待っているホームでは特急が発車待ちさすがにそれはぎゅうぎゅうで発車ベルが鳴るともっとぎゅうぎゅうに扉が閉まる寸前突然のアナウンス数駅先で人身事故が起きたらしいほんの七分ほ
2023年12月22日 21:30
夕暮れの陽射しがぼんやりカーテンの色を変えていく死んでいった人たちの想い出が綺麗なのはなぜだろう完結したものであることの綺麗さなのかもしれないいやだな欠点だってたくさんあった理不尽なことも言われた仲がわるくなったこともあった死んでいった人たちではなくかつて生きていた人たち窓を開ければ一瞬で繫がってしまう私はまだ飛び去ることはしたくない綺麗さとは程遠くても生きていく日
大晦日に夜更かしをするからお正月はいつも具合がわるいなあいや寒い時期はいつも具合がわるいよなあいやいや去年は夏も具合がわるかったよなあアフリカ産のルイボス茶を飲みながら一月三日の夜に早くも振り返ったまた夜更かしをするつもりもしちょっとお腹がすいてきたらパックごはんでも食べればよい夜更かしできなかった子供のころは一日が粒今日と明日とはくっきり違ってお粥のようにくっついてはいな
2023年12月22日 21:31
君があんまり静かに眠っていると生きているのかどうか心配になって寝息を確かめる眠りは死ぬ練習だと言う人もいるけれど生きていくための休息だよだから夜に起きているとちょっと狂うそれが楽しいときも苦しいときもある今夜は楽しくてコーヒーまで飲んだ夜明け迄は起きているつもりお隣さんがこんな時間に帰ってきたばたんとドアが閉まる音もうじき新聞配達もやってくるバイクの灯にほっとする
2023年12月22日 21:32
久しぶりに会った母と下北沢のレトロ雑貨屋に入ったら昭和の歌謡曲が流れていて母は涙ぐんだ 植物の甘い匂いで夏に気付くとき幼い頃行ったプールのラムネ売りがよぎってあのおじいさんはもう存命ではないであろう瓶のビー玉がどうしても取り出せなかった 母と折り合いをつけられないこともプールが冷たすぎておなかを壊したこともあんな時代のことですらALWAYS三丁目の夕日になっちまう ブ
2023年12月22日 21:33
皆で大きな一冊の本を書いていると異国の先輩詩人が言っていたそれに勇気づけられて書いてきたけれどたとえば私に忘れられた私の詩もその本の片隅に載っているのだろうか一等をとって褒められたことはなくて輪投げで一等のでっかいぬいぐるみをとって帰ったら邪魔になるねって毎日掃除のたびに耳を引っ張られて首が少し曲がってしまったキリン悲しいという詩を書いたような気がする引越しのときにノートもキ
2023年12月22日 21:34
詩を書かなくては死んでしまうそれは幻想だよ食べ物と飲み物と着る服くらいあれば生きているはずだよ 瀕死の人が気力を保つために書くそういう場合以外には書かなくては死んでしまうなんてないよ それではなぜ書くのだろうお金をもらっている訳でもないのにね書きたいから書くそれだけなぜ書きたいのだろうわからない 急に思い出した昔観た大好きな映画『心の杖として鏡として』精神
古い段ボール箱を開けていたら何冊ものノートが出てきたどれも一文字も書かれていない薄い罫線だけがおとなしく並んでいる 授業の記録をとる以外には書くべきことを持たなかったのだその頃の私は何もできないと固く信じていた 君はどんなふうに生きても死んでもいいんだよ 今ならそう言ってやれる昔の私と似ているが明らかにもう違う筆跡で詩を書くことができる 禁を破るためにまず
2023年12月22日 21:35
人が劇的に死ぬ映画を観て面白いと思うのはなぜだろう爽快感すらおぼえる自分が確かに居るフィクションだからだろうかそうだろうか史実にだってそれを感じることはあるもう過去のことだからだろうかそうだろうか違うだろ現在進行形で物語化は進んでしまうそこに落とし込まないと生きてゆけないかのごとく親しい人にはぼんやりだっていいから生きていてほしいのにでもそれが叶わなかった時にはやは