10年ぶりに自転車に乗った

気がつくと、全ての支えは、外れていて、私は自分の力と感覚で踏み進んでいたんです。

○初めて自転車に乗れた日

みなさんは初めて自転車に乗った日を覚えていますか?
私がいう「自転車に乗れる」とは補助輪が取れて二輪で立派に走り回ることができるようになった日のことです。
どうでしょう、一般的には小学生の早い段階で乗れるようになるんでしょうか。実は私は、周りの友達よりもずいぶん遅く 小学生の高学年を目前にした頃まで、乗ることができませんでした。補助輪をガタガタ言わせながら母がスイスイと漕ぐママチャリを一生懸命追いかけたものです。

○自転車の特訓

小学生のある日、見かねた私の友人が自転車の特訓に付き合ってくれました。思い出すと不思議なのですが、そこに集まる顔ぶれは特に仲良しの友人 という感覚はない子たち。みんなで集まって遊びがてら、入れ替わりで私の自転車特訓をしてくれていたように思います。
そう思えば、みんな優しく大らかな仲間達だったんだと思い知ります。
その中でも特に熱心だったのが同じクラスの女の子(A子ちゃん)。弟が生まれたばかりなこともあってお姉さん心が芽生え始め、手取り足取り教えてくれたものです。

あれこれいろんな子に教えてもらってもどうしてもできない私。そんな様子に痺れを切らした様子のA子ちゃん。自転車の荷台に跨り「私が倒れそうになったら支えてあげるから漕いでみな!」そんな半ば強引な練習方法に私は面くらいました。「怪我しちゃうよ」「うまくいかなかったら倒れちゃうよ」などと弱腰の私をよそにA子ちゃんは荷台から勢いをつけて自転車を発進させてしまいました。こうなったら私も漕ぐしかありません。一心不乱とはあのことでしょう。目の前を流れるコンクリートの道の肌をよく覚えています。

「なぁんだ できるじゃん!」
荷台から透き通ったA子ちゃんの声が響きます。
「A子ちゃん足で蹴ってるでしょ?」
私の問いかけに
「そんなことしてない あやこちゃん自転車乗れてるよ!」

そんなバカな!と思って自転車を止めて、振り向くと驚いことにA子ちゃんは荷台には乗っておらず、はるか後ろの方で手を振っています。スピードが出る前に飛び降りていたようです。

○不得意だけど思い出深い自転車

そんな経緯で、みんなよりだいぶ遅い補助輪の卒業となったわけですが、今でも自転車は少し苦手です。なんせ10年も避けて過ごしてきたのですから、間違えなく得意ではないのでしょう。
自転車を買って10年ぶりにひと漕ぎふた漕ぎとやってみてぐんぐん進む感触。「あっ できた」と思った嬉しさ。「乗れたよ!」と振り返った先に手を振る人はA子ちゃんではないけれど、その風景にはあの頃のなつかしさが溢れていました。

○おしまい

A子ちゃんの訓練が実るまでにはもう少し時間がかかります。実はあの後、私の筋金入りの自信のなさと人間不信が力を発揮してしまうのです。
A子ちゃんがいくら「できてるよ」と言ったところでその言葉を全く信用しない私は、荷台に人が乗ってくれないと自転車に乗れない時期がやってきます。(ひとりでちゃんと乗れているのに)
今思うとおかしな話です。できてる自分も信じず 人の言葉も信じない。
なんか私の原点があるなぁと 昔から変わらないんだなぁと思うこの度でした。

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ayako
生きるヒントになるような記事を書いています。私の考えが誰かの助けになりますように。あなたの努力が実りますように。