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シーズン開始と自家採種 美味しいお米の育てかた#009

お米の栽培はいつから?

1年のいつから栽培が開始されるかですが、ほとんどの人は春からと答えます。

現代農業では苗は農協から買ってくるもので、その時期はだいたい4月中旬から5月中旬くらい。

事前に田んぼを整備しGW頃に田植えなので、そう考えるとたしかに春から始まっています。

しかし、自然栽培の場合は

生産者は苗を自ら育てます。

私がいた長野では4月中旬頃から。

苗はもちろんタネから育ちます。

お米の場合は種籾タネモミと呼びます。

お米は一粒がタネであると、みなさんは認識していますか?私は栽培をはじめてからあらためて気がつきました。

お茶碗いっぱいにあれだけのタネを食べる。お米とは実はエネルギッシュな食べ物だなと思います。

お米をタネにした場合、さてその種籾はどこから?もちろん売っているものもあります。

しかし、生産者の多くは自家採種が常識です。

自家採種とは、自分の田畑で栽培した植物からタネを採種すること。

コツはありますが自家採種のほうが断然育ちが強靭だからです。

では、種籾の自家採種はいつか。

収穫です。秋です。

収穫と同時に次のシーズンの稲作は始まる。

自然栽培稲作は秋にはもう始まっている。

そのように捉えています。


タネ籾自家採種の方法

では秋にどのようにして種籾を選別していくのでしょうか。

栽培規模に応じて大事なポイントを紹介していきます。

①1本ずつ選別し採種する

小規模稲作の場合ですが、収穫前の田んぼに入り、枝わかれ(稲作では分げつと呼びます。)が旺盛で虫食いや病気がなく、粒も大きめな株をみつけます。

稲を束ねて持った時に1番上から2番目に長い稲穂を見て、異常がなければ40cmほど下でカット。

これひたすら続け自分の必要な分だけ集めます。選別後、半分になるとして、1反あたり2kgから4kg分は必要です。

なかなか途方もない感じですが、夢中でやってると意外と出来るものです。

採種という目的はもちろん大切ですが、私はこの作業自体が好きです。

その年の稲と自分の足跡を見つめ直すような時間です。

機械音のしない田んぼをガサガサとイナゴと歩き回ると、古代にも同じ体験をした人々と通じ合えた気さえします。

日本人としての贅沢な嗜みのひとつです。

カットした稲穂はその後は干して脱穀して、気温が変わらない乾燥し涼しい暗い場所に保管します。

春まで干し続けると気温の変化にいつもさらされているためか、発芽率が落ちるように思いますので、脱穀して保存をおすすめします。


②育ちの良いブロックをバインダーで刈る

その年の一番育ちの良い田んぼでも、またさらに良さそうな一角を稲刈りします。

手でも機械でも自分の好みで良いかと思いますが、私の場合はバインダーという、刈る、束ねる、をしながら走行するマシーンを使用します。

稲藁はマシーンから吐き出され地面に並びますので、出来るだけ早く干します。湿気を吸って乾燥などを繰り返すと、モミの中でお米が割れたりして、ダメージになります。

干すのは昔ながらのハゼがけにします。機械乾燥ではいろんな品種と混ざるためです。

他にもハゼがけは手間ですが素晴らしい乾燥方法だというお話もまた別項で詳しくお話しします。


③コンバインで刈る

コンバインという収穫機械で大量に刈る場合、注意しなければならないのは、

他の品種の混入です。

中をいくら掃除してもいろんな隙間に以前の籾が残っている可能性があります。

大規模であれば、品種を限定したコンバインと乾燥機を用意した方が良いです。

また、乾燥は送風で数日回すのをおすすめします。

雨天や湿気が多い場合は極小の加火で、それでも時間をかけてゆっくりした方がダメージになりにくいです。


脱穀と保存

以上、田畑の規模に合わせてタネとりのパターンを解説しました。

穂から籾を別ける脱穀は、タネ籾を傷つけないように優しくゆっくり、機械負荷のギリギリでおこないます。

脱穀したタネ籾は、前述しましたが、乾燥し温度変化のない、涼しく、暗い場所で保管するのが発芽率を保つポイントです。


今回は稲作の開始時期と具体的なタネ採りについてご紹介しました。

このほかにも自家採種の方法はたくさんあります。みなさんの実践した取り組みもぜひご教示頂けましたら大変ありがく思います。

また今後、法律により自家採種ができなくなる時代がやってくる可能性もありますが、長い目で見れば短期的な話です。

私のアクティビティはその先の時代のためのものです。

経験や技術さえあれば、いつどこででも芽吹くことができます。

以前もお伝えしましたが、自然を切り拓き農業をするというのは、縄文的な自然をいたわる感性からすれば本来悲しいことです。

私が自然栽培をお伝えするのは、今置かれた現状のなかでは、環境も人も社会もバランスよく生きながらえる術だと認識しているからです。

長い歴史を持つ稲作をほんのわずかでもブラッシュアップし継承すること、忘れないこと。知る人を増やしその火を消さないことです。

自家採種は自然栽培を持続可能にするプロセスのひとつですので、また詳しくお話しします。

ご覧いただきありがとうございます!

続く

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山田憲吾
映像制作をはじめとした活動費に使わせていただきます。ありがとうございます!