苗のひとり立ち 美味しいお米の育てかた#020
被覆を剥がしネットを張る
時々被覆の中を確認し、2.5、3cm程度で芽が生えそろったら被覆をはがします。
一般的には緑化、という表現を使ったりします。
この時に生え揃えることができれば一気に被覆資材を剥がせますが、バラバラだと小さいものに合わせるなどで、いつまでも剥がせなかったりします。
剥がせないでいると成長の速いグループはひょろひょろ徒長してしまったりします。
前もって水に浸けて催芽し生え揃わせるのはこういった作業上のムラを解消します。
催芽する最大の理由がここにあります。
出始めた芽は太陽などの直射日光に弱いため、晴天を避け、曇りか雨の日の早朝にはがし始めると良いでしょう。
晴れた日の日中にいきなり剥がすと真っ白に焼けてしまい再生に時間がかかったり、枯れてしまうこともあり細心の注意が必要です。
また、発芽したての幼苗は、鳥たちの恰好の的になりやすいため、前述紹介した1mmメッシュでラメのラインが入ったネットがオススメです。
通常そういった商品は無除け用の防虫ネットとして売られています。
ラメがないと鳥たちはネットを食い破ったりしてしまいます。 ラメのネットがない場合は苗代の周りをキラキラしたテープで囲うなど、鳥たちに進入禁止を知らせる必要があります。
幼苗の頃から太陽にあたり風や雨にあたり、この時から苗は自分で根を張りひとり立ちしていきます。
ここからはお米の生命力がモノをいいます。それをいかに引き出す環境を整えていくかに生産者は注力していきます。
水を張る
ネットを張り終えたら、ゆっくりと水を入れ ます。
土質の環境にもよりますが、苗代の工程、苗箱設置、被覆、ネットまでを水を張ったままで行う人もいます。
苗代はしっかり畦塗し水の溜まりをよくしておきます。
これも土質環境にもよって水持ちの度合いが違います。
これにより苗代の水位のコントロールができ るようになります。
ため池の設置などで十分に温まった水をゆっくりと入れていきます。
ゆっくり入れていくことで苗に対する極端な インパクトを小さくし、ストレスを軽減します。
直接冷たい水を入水するなどすると苗の成長がショックで止まることもあり、入水の仕方も注意が必要です。
できるだけ優しくゆっくり水位が上がってい くような工夫が大切です。畦塗りで水持ちをよくする利点はここにも表れます。
また入水は、昼の暑いときにするようにします。特に真夏の暑い時期は昼間の水温が上がりすぎるので、クールダウンさせます。
これは田んぼでも同じです。 地域にもよりますが、早朝に水を入れると水が冷たく夜の水温からさらに下げてしまうことになります。
このように、自然栽培では肥料のように効果を直接的に及ぼすアプローチを控え、間接的に温度と空間を意識することが求められます。
稲作は苗八作と言われるように8割が苗の品質で決まります。ここまでは人が介在することも多い工程でしたが、ここからは田んぼの整備、田植え、水管理などでお米一粒の力を引き出していきます。
稲作のみならず農業やものづくりは段取りが命です。
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続く
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