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No.29 大好きなお芋~ズとおばあちゃん
今日は仕事の都合で茨城県へ、途中、思いがけず、お洒落な外装の美味しそうな焼き芋屋さんに心惹かれ、店内に足を運んだ。
店内にはたくさんの焼き芋と多くの種類の芋たちが勢揃いしていた。
ただ、そんな中、私の目を釘付けにしたのは、お店の一角にあったさつまいも詰め放題コーナー。
一回につき300円!なんとお得なサービス!!と思い一度やってみたいと思い立つも、小さい頃の記憶がふと蘇る。
それは私がちょうど小学一年生の時のこと。
ランドセル購入者限定の、500円玉の掴み取り。
対象者は小学一年生だけだったから、家族でできるのは唯一私だけだった。
知らない大人たちがわんさかいる中に潜っていって、終始いろんな人たちの視線を感じながら掴み取りをする、というのを想像しただけでも恐ろしくてすぐにその場から居なくなりたかったのだが、逃げる勇気も出ず、家族からの『絶対やりなよ!』の絶対的な圧に負けて手を伸ばす。
手を大きく広げようとするも、500円を目の前にして、これは何枚取ったらお店が損しない??的なことを子供ながらになぜか考えてしまい、手に取ったのはたった一枚の500円玉だった。それは遠慮というよりも、私なりの精一杯の相手に対する優しさ、のように思っていたのかもしれない。
そのあと、姉と兄からは、『何でもっと取らなかったの〜??』と期待外れな眼差しで責められ、両親からは『あぁいう時は遠慮しないでとっていいんだからね〜』と笑いながら、少し残念そうな声で言われたのを今も思い出す。
それからというもの、詰め放題や掴み取りは避けてきたし、無駄に気を使い過ぎてしまうだろうから、と決めて手を出さずにいた。
でも今日は、、今日はなんだか、、詰め放題を楽しめる気がする!!あの申し訳なさの牢屋から脱獄できる気がする!!と妙に訳のわからぬ自信に取り憑かれながら、300円を払って袋をもらい、詰め放題に挑戦することを決意…!
さつまいもたちは小ぶりなものから、ねじりが入ったような形や、ひょうたん型の可愛らしいものまで色んなものが混じっていた。
そこから自分で選んで袋に詰める、というもの。
私は何とも言えない緊張感で慎重な面持ちで芋に手を伸ばし、袋に入れる。
周りはカップルや家族できている人たちがたくさんいて、より優れた芋たちを選ぶのに必死になりつつ真剣な様子で芋たちを詰めていた。
そんな中、私の隣に見るからに元気そうな80歳くらいのおばあちゃんがやってきた。
おばあちゃん:『なんだいこれ?芋詰めてんのかい??こういうのはこうしてみっどいいんだ』とケースを両手に抱え、何の戸惑いも見せずケースをゆらし始め、芋を選び始めた。
『こーれはダメだなぁ。これはいいやつだ。これと、これと、、』と手際よく芋を選び始める。
私の方が先に袋詰めをしていたはずなのに、おばあちゃんの方が手際よく、どんどんと芋たちを凄まじいスピードで選んでいく。すると、そこにお孫さんらしき男性が登場。『ばぁちゃん、袋先に買わなきゃだめだべした!』そう言われ、おばあちゃんは『あーそうかい!』とケロッと笑いながらも選別の手は止める気配のないおばあちゃん。
私はおばあちゃんの笑顔につられて笑ってしまって、何だがおばあちゃんの素直でかつ嫌味のない人間らしい姿がキラキラとして見えた。
周りをいい意味で気にしすぎていないし、自分が感じるがままに思いを言葉にしたり、笑顔を見せたり、、おそらく普段から農業を営んでいるのでは?と思わせてくれるような大きくてシワのある手も全てが愛おしく思える。
出会ってまだ数秒なのに、なぜか私はそのおばあちゃんの虜になっていた。
そう。私はこういう生き方がしたいし、こういう在り方でいたい、と思う。
人に迷惑をかけないように、人に嫌な気持ちをさせないように、
そんなことばかり気にして自分の感情に蓋をするのが当たり前になってしまっていたけど、
本当はもっと自分の気持ちをまっすぐ誰かに届けたいし、自分の感じるがままに、喜怒哀楽、感情の波にのりながら楽しく生きれたら、とそんなことを考えた。
おばあちゃんが隣で楽しみながら芋を選んでくれたおかげで、私も楽しみながら、今回は遠慮することなく袋詰めを楽しんだ。
袋が破けてしまわないように気にしながら、芋たちを積み重ねて、詰め終わった後は、なんだかこれまでの〇〇放題!のマイナスイメージを全て洗いざらい流してくれた。
そして、出会ってくれたあのおばあちゃんが、芋を選びながら私に大切なことを気付かせてくれたように思っていて、出会ってくれた事がとてもありがたかった。
おばあちゃんみたく、まっすぐいきれますように。