所有より共有に価値を置く新しい生態系:シェアリングエコノミー
本日も弊社で発行している「販促プラス」の原稿をお届けします。
いよいよ日本でもライドシェアが部分的に解禁される
2024年4月から、日本国内で「ライドシェア」が部分的に解禁されるというニュースが話題になっています。ライドシェアとは、一般のドライバーが自家用車を用いて有償で旅客を運送する行為のこと。“部分的に”とは、タクシーが不足する地域や時期、時間帯のみの運行を許可するという条件付きである、という意味合いとなります。
ライドシェアの国内導入については、これまで法的・規制的な問題から実現に至っていませんでした。競合となるタクシー業界を中心に賛否両論があり、導入が遅れていたという側面も。しかし世界各国では、すでにアプリを活用したライドシェアサービス「Uberライド」などが幅広く展開しています。
そんななか、コロナ禍の収束や円安によって盛り上がるインバウンド需要に供給が追い付かないという課題を解決するための手段として、国内におけるライドシェアへの期待が高まっているのです。
シェアリングエコノミーとは余剰資源を有効活用すること
昨今では、提供者と利用者という個人間でモノやサービスを共有する経済システム「シェアリングエコノミー」が大きな価値をもつようになってきました。ライドシェアは、運転技術をもった個人とその自家用車を共有するというサービスですが、車、自転車、家、衣類、農地など多岐に渡るモノがオンライン上のプラットフォームを通じで共有され始めています。2023年1月、一般社団法人シェアリングエコノミー協会は、2022度におけるシェアリングエコノミーの市場規模が過去最高の2兆6158億円を記録したことを発表しました。また同協会は、2032年度に最大15兆1,165億円に拡大するという予測も発表しています。
シェアリングエコノミーの特徴は、モノを生産し続ける消費主導型経済とは異なり、余剰資源を有効活用するという点でしょう。利用者にとってはコストの削減や利便性の向上が、提供者にとっては新たな収入源の確保というメリットが生まれ、さらに広い視点では全体として環境負荷を軽減することが可能となります。
シェアリングエコノミーによって、ユーザー同士のコミュニケーションが生まれることも大きな特徴であり、レンタルサービスと異なる点であると言えます。個人同士で取引が行われるという特性上、ユーザー間の信頼性やサービスの品質を担保するために、各オンラインプラットフォームの多くには評価機能が設けられています。
そもそもこの経済圏の発展は、2000年代以降のスマートフォンの普及とICT技術の急速な進歩なしでは語れません。こうした性質上、シェアリングエコノミーは国境をも越える、これまでにない大きなビジネスチャンスを秘めているとも言えるでしょう。
共有を前提としたサービスの提供が企業には求められる
モノを「所有」することよりも、「共有」することに価値を置くシェアリングエコノミーへ転換しつつある昨今。企業は、この状況を見据えて経済活動を戦略的に行っていく必要があります。もちろんそれは、プラットフォームを提供する企業に留まりません。たとえば家電メーカーであれば、家族ではない同居人同士が使用することを想定した冷蔵庫や洗濯機の開発がヒット商品を生み出すことになるかもしれません。自社の製品を利用するユーザーが、どのような共有を求めているのかをシミュレーションすることが重要となるわけです。
シェアを前提としたサービスを提供することは、前述のように環境負荷の軽減にもつながるため、利用者への利益のみならずSDGsという文脈においても意義をもつことになるでしょう。シェアリングエコノミーを意識した企業活動を行い続ければ、企業自体の価値向上にもつながるはずです。
Z世代の購買行動と企業活動に注目を
シェアリングエコノミーの発展とともに成長した「デジタルネイティブ」「スマホネイティブ」な世代は、とくに所有よりも共有に価値を感じる傾向があります。広告代理店の博報堂が行なった『生活者のサステナブル購買行動調査2023』では、10~20代(16~29歳)は「不要になったがまだ使えるものは人にあげたり売ったりする」「新品を買わずに中古品を買う」「新品を買わずに借りたりシェアしたりする」といった「サーキュラー」「シェア」に関する行動を選ぶ割合が、全体より10~20pt高いという結果も。
Z世代とも呼ばれる1990年代以降に生まれ育った若者世代は、これからの消費活動の中心となる存在です。また一方で、今後はますます、シェアリングエコノミーにおける新しいビジネスの担い手として活躍することでしょう。この世代が行なう購買行動や企業活動に注目し続けることで、シェアリングエコノミーという大海原で生き残るためのヒントを得られるかもしれません。
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