コンテクストとコンテント
コンテクストとコンテントを区別して話をする、ということを今の自分は割と当たり前でやってしまっているのですが、メンタリングさせていただいているクライアントさんの話だと、私からこのような見方があることを聞くまで、まずもってそういう観点がなかったそうです。
で、そういう人は意外と多いかもしれないと思いましたのでちょっと書きます。
コンテクストは条件+入れ物
コンテクストの直訳は「文脈」だと思います。
もうこの訳でババーンと理解できる人はそれで良いと思うのですが、若い頃の自分を思い返してみると「文脈に沿って○○しなさい」と言われてもピンとこないことが多かったなと思います。
私がコンテクストを明確に意識し始めたのはPerlというプログラミング言語との出会いが大きいです。
Perlは「スカラーコンテクスト」「リストコンテクスト」などなど、呼び方は様々ですが、要するに、そのコードの中で「なにが求められているか」で書き方やアウトプットが変化する言語なんです。
だから必然的に「コンテクスト(文脈)を読む」ということを最初にやって理解してからでないと、とんちんかんなコードになってしまいます。
つまりコンテクストとは場面設定のようなものです。
場面設定をわきまえて行動しろ、ということを押し付けるための枠組みのようなものですね。そこになにが求められているかの条件を寄せ集めて作った入れ物だと思えば良いと思います。
コンテクストはどちらかというと自由度を制限する役目があります。
自由度を制限する代わりに、設定した目的に対しての有効度を上げる ー これがコンテクストの最大の役目です。
俳句にとっての五七五という型はまさしくコンテクストの好例です。
型を制限することによって、俳句のクオリティで勝負をさせるという目的を明確にする力がこのコンテクスト設定にはあります。
日常の(特にビジネスの)会話では、上司が部下に仕事を頼む際、期限や目的を重要視するような仕事の頼み方(逆に内容は「任せる」という頼み方)の場合は、コンテクストを投げている、と理解すれば良いと思います。
コンテントは内容物
じゃあ対してコンテントの方はなにかというと「内容物」です。
条件に沿って(ときには敢えて無視して)作られた内容のあるもの ー それがコンテントです。
コンテクストだけだと中身が空っぽですし、コンテントだけだとそれになんの意味があるのか伝わりません(ナンセンスということです)。
適切なコンテクスト+的確なコンテント、という組み合わせほど強いものはありません。
古来の日本的な文化ですと、「世間一般」「常識」という人間関係の背景となるものがある程度固定されていて皆が共通理解を持ちやすかったので、わざわざコンテクストを伝えるのに言葉をつくすのは「粋でない」ような感覚がありました。そしてそれは今でもある程度根強く残っていると思います。
ところが現代社会は個人の生き方の自由度が増し、価値観が千差万別になってしまいました。昔は説明なしで通用した常識がだんだん通じなくなってきたんですね。
だから伝えたいメッセージ ー これはまさしくコンテントです ー をうまく相手に伝えるためにはそれが乗っかるコンテクストを十分確認する、必要なら丁寧に説明する、という手間が必要になってきています。
ときどき、コンテントだけをポンポン投げ合っている会話に出会います。これは、
・会話の前提(コンテクスト)が既に十分共有された上で話している
か
・コンテクストをがん無視して無意味な言葉を投げ合っている
かのどちらかです。
是非みなさん、コンテクストとコンテントの違いを認識した上で、よくよく話を聞いてみてください。ご自身が参加している会話でも、身の回りで飛び交っている会話でも、です。
どの程度、その当事者同士は内容や意味を理解し合って話しているでしょうか?
もし理解が足りていないようなら、どうすればより良く理解を深められるでしょうか?
いや、そもそもお互いの認識に齟齬が生じてないでしょうか?
誤解が絶対にないと言えるでしょうか?
こういったことを考えながら話を聞くだけで、ずいぶんトラブルの素は解消できるものです。
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いかがでしたか?
コミニュケーションを少しでも円滑に進める上で、この記事が参考になれば幸いです。
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