
【連載】家族会議『家族の役割』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
家族会議22回目#6|家族の役割
――岩手県出身の父と母の結婚生活は、大阪で始まった。
短い間ではあったものの、慣れない土地で結婚生活を始め、初めての妊娠、出産、育児‥‥と、初めて尽くしの経験をしたのが大阪だった。
振り返れば、育児ノイローゼだったであろう母。
だけど結婚当初から、不安だったのかもしれない。
母:
そういえば、おじいちゃんに毎日電話してた
わたし:
おじいちゃんに?
母:
うん、自分の父親に。毎日のように電話してたのって、結婚してまもなくからだった。
わたし:
そうなんだ。おばあちゃんじゃなくておじいちゃんになんだね?
母:
なんでかって言うと、おばあちゃんのほうが遅かったの、帰りが。おばあちゃんは6時くらいまでかな?おじいちゃんは4時45分ぐらいに仕事終わるんだよね。それで、5時ぐらいに家につくっていう。そういうおじいちゃんだったから。時計見るとわかるから、電話してた。
わたし:
そうなんだ。
母:
毎日、ほとんど。
父:
大阪で?
母:
大阪で。しかも結婚したばかりの頃。
わたし:
ホームシック?
母:
まあそうだね。特に何を話すってわけじゃないけど、なんかおじいちゃんの声を聞いて落ち着くみたいな。
わたし:
まだ甘えたかったんだね。
母:
子供だったんだね‥‥
わたし:
まだ甘えたかったところを嫁いだんだね。
母:
もう、全然子供だ。
わたし:
その状態で、子供が生まれて急に母親にならなきゃいけなくなって、大変だったんだよね。
母:
なんだろうな。結婚はしたけど、長いこと付き合ってたわけでもない(お見合い結婚だった)から、結婚してから何かを育てる‥‥気持ち的なものを育てるっていうのが必要だったと思うけど、そんなの全然。そんな感じゃなく役割を、2人とも、ひたすら役割をやるみたいな感じだったよね。
わたし:
うんうん、なんかわかる。
母:
テレビの芝居じゃないんだけどさ、なんかとにかく役割を。
で、自分の役割をちゃんとやろうみたいな。最低限っていうか。役割をやるもの。やらなければ。やって当たり前。結婚ってそれ。みたいな。
わたし:
その役割分担っていう意味で言ったらさ、お父さんはお父さんの、外で働くって役割。お母さんは家で家事と子育てをするっていう役割だったと思うんだけど、多分おねちゃんは、子供っていう役割を演じることになってたんじゃないかな。
みんな役割を演じてた。わたしもあるし、そういう感覚。
母:
お父さんやお母さんの意に沿うようにみたいな。
わたし:
そうだね。子供の役割を演じる。
母:
うん。お父さんやお母さんがいいと思うような子供になって‥‥。
わたし:
仮面家族だとずっと思ってたって言ったのは、だから。今聞いて、すごい納得。役割、そうだよねって思う。
母:
ほとんど心は通じてない‥‥子供とも。
わたし:
そうやって成り立ってきた家族でもあるかなと思う。
母:
何か負のエネルギーじゃないけど、なんかすごいことにエネルギーを使ってきたんだね。
わたし:
でも役割を演じるだけで終わっちゃえば、エネルギーも使わないって感じかな。
母:
なんか違うって感じつつ、でもどうしたらいいかわかんない。
わたし:
わたしは「演じてればいいのね」って感じだったっていうか。「楽でいいや」みたいな感じかな。
母:
お姉ちゃんも?
わたし:
お姉ちゃんは求めてたよね。だから、求めてる人がいる以上成り立たないっていうかさ。役割を演じるだけじゃ。
それに実際のところは、お父さんもお母さんも求めてる人だよね。
母:
私もすごくそうだね。お父さんも‥‥今になって思えばそうだなと思うけど、お父さんも実際、求めてたのか。なんか求めてないような顔してたっていうか‥‥
そうか。こっちの求めには応じられないってことだね。お互いに。
わたし:
そうだね。
母:
お父さんの求めには私も応じられないし、私の求めにお父さんも応じられない。ただ、求めてたのは求めてた。
お父さんも求めてたって感じする?
父:
そうでしょう。
母:
そうでしょう?
父:
だと思います。
母:
求めるかたちみたいなのは違ってはいたんだろうけど、求めてたことは求めてた。
わたし:
だから、役割分担だけではいられないってことだったんだよね。
だけど、どう気持ちを通い合わせればいいかもわからないし、そもそも自分が、どう通い合いたいのかもわからない。
自分の気持ちもわからない状態だから、心の通い合った家族にはなれなかったってことかなって思う。
未熟だったんだよね。みんな。
母:
そう未熟だね。心が未熟というか。幼いというか。
わたし:
だけど形だけは、話を聞いたりテレビで見たりして、よさそうな形だけは知ってる。
でも実態は知らない。
理想だけ。
だから役割分担で、それっぽい形は作れた。みたいなこと。
それでもそれなりに成り立つわけだし、そういう家庭もいっぱいある。うちだけが特殊だとは全然思ってないし、ほとんどの家庭がそうだと思う。
だからね、割り切っちゃえば割り切っちゃうでさ、それぞれ役割を果たせばいいだけ。だけど、割り切れないのが人間っていうかね。
母:
体も、見た目は大人だろうしね。でも見えない心が‥‥そこが一番肝心って感じだね。
わたし:
うん。本当はね。
― 今日はここまで ―
家族には、それぞれの役割がある。
だけど、役割を演じることが第一優先になった家族は、家族風であるだけで本物の家族ではない。
家族のひとりひとりは、「人」であって「役」ではないのだから。
優先すべきは「心」だ。
心を大切にしたうえで、それぞれの役割を果たすというのが本来の家族だろう。
それが逆転すると、心を殺してロボットのようになるか、ロボットになりきれずストレスをため精神破綻が起こる。
たとえばわが家は、父が自己愛性パーソナリティ障害で、母は育児ノイローゼや産後鬱になった経験があり、姉は鬱になった。
結局のところ人は人で、心があるのだ。
<次回に続く>
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