がんなど治療中のサポートが辛い:親の小言にどう向き合うか
がんなどの治療中、パートナーがいない/仕事で家を空けがち、お子さんがいるなどの家庭の状況によっては、家族のサポートは不可欠です。特に実母の助けは大きな力となります。と同時に、親と子だからこその小言や何気ない言葉が心の重荷になることもありますよね。
心地よくサポートを受けていくためにも、心に重荷になる言葉への対処は欠かせません。その言葉のとらえ方や対処についてお伝えしていきますね。
過去の経験が現在に与える影響
幼少期からの過干渉な特に母親との関係は、現在の関係性にも大きな影響を与えています。大人になったから、大人対大人という関係ではないのです。幼少期の関係性のまま、今も過ごしている状況です。
だから親の小言をスルーできずに真摯に受け止めてしまったり、苦しくなってしまいます。
実母の行動パターンを理解する
過干渉な親の行動は、愛情表現の一つであることが多いです。必ずしもそうではなく支配的な親もいます。そして、愛情表現にしても支配的にしても、長年の言葉や行動のパターンは簡単には変わりません。
どんな時に親は小言や心の重荷になる言葉を言っていますか?
自分の感情を否定しない
親の小言に対して「イヤだな」「うるさいな」「ほっといてよ」といった感情がわいてくるのは自然なことです。これらの感情を否定しないことが大切です。罪悪感を抱く必要もありません。
そして、その感情の中には一体どんな欲求が隠れていますか?
例えば:
「イヤだな」→自分の意思を尊重してほしいという欲求
「うるさいな」→静かな環境や心の平穏を求めているサイン
「ほっといてよ」→自立や自分で選びたいことを求める気持ち
だったりします。(実際は一人それぞれかなり違います)
こんな風に自分の感情を否定せずに受け入れる。そしてその背後にある欲求を探してご自身が理解をしていく。そうすると親とのコミュニケーションも少しずつ気にならなくなってきますよ。
「ありがとう」と境界線の両立
小言であっても、親(特に実母)はあなたをサポートしようとしているから、家にいるのですよね?だから、何かアドバイス(小言だとしても)に対して「ありがとう」と伝えることは大切です。
同時に、適切な境界線を設けることも重要。
例えば、「ありがとう。でも、それは自分で決めたいの」といった形で、感謝を併せて自分の気持ち・意思を伝えることが大事になってきます。
自分で選ぶことと小言のとらえ方
幼少期からの過干渉により、自分で選ぶことの機会が限られていたかもしれませんね。今だからこそ、自分で選ぶということを大切にしてみるのはどうでしょうか。
親のアドバイスや小言に対して、全てを受け入れる必要はありません。自分の体調や気持ちを最優先に考え、無理のない範囲でサポートを受け入れていいのです。
またそのアドバイスは、「親に言われた」ではなく「一人の人間」が自分へアドバイスをしている。と、とらえ方を変えることも必要です。
これには少し練習が必要です。なぜなら、とらえ方を変える=思い込むことではないからです。
(認識を変えることは、カウンセラーなど専門家と共に無意識の思い癖に気が付く必要があります)
そのため、最初はこんな風に伝えるところからスタートしてみるのはどうでしょうか。
①"I"メッセージを使う:
「私はこう感じる」という形で自分の気持ちを伝える
②アサーティブな表現:
自分の権利を主張しつつ、相手の権利も尊重する
③アクティブリスニング:
実母の話をよく聞き、その背後にある気持ちを理解しようとする
①~③と進むにつれ、ハードルも上がりストレスも伴います。①から焦らずゆっくり進めていきましょう。
がん治療の大変な時期だからこそ、今までの関係を振り返ってみる。これからどうしたいか考えるチャンスでもあります。例えば、実母との関係も、もっと心が健康的でお互いに優しいものに変えていくことができたら、あなたはどうなれるでしょうか。
過去の経験が今のあなたを形作っているのは事実です。ただ、その経験があなたを縛り続ける必要はないのです。今まで自分の心を守ってくれていたものは、今はもう必要なくなっただけ。
これからはご自分の感情を肯定し、その裏にある本当の気持ちに耳を傾けてみましょう。そうすると、自然と自分らしい選択ができるようになります。
親との関係に悩んでいる、病気の理解が乏しくご自分もどう接していいかわからない、距離を置きたいが正直悩んでしまう。などなど、治療への不安や孤独感だけでなく、親との関係性についても悩んでいるようでしたら、一度お話だけでもしてみませんか?
心や思考の整理をするのに活用してくだされば、と思います。これからの大切な時間を心地よく過ごしていくキッカケになれば幸いです。
かかりつけナースカウンセラー
岡田聡子