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#262 大浦天主堂

 長崎旅行で、大浦天主堂に行った。市電を下りて、坂を上っていった。

 教会の長い椅子に座った。ガイドのアナウンスが聞こえてきた。江戸末期につくられた教会で、「フランス寺」と呼ばれていたこと。当時の厳しい禁教下で密かに信仰を守っていた潜伏キリシタンが、この教会で信仰を告白し、『信徒発見』の奇跡として世界に知られるようになったことなどが分かった。ステンドグラスの窓には、西日が差し込んでいた。


大浦天主堂のステンドグラス


 資料館にはキリシタンの弾圧に関わる資料があった。

 私は、『沈黙』(遠藤周作作)を思い出した。大学に入学した18歳の春のことだった。受験勉強から解放され、何をしてもいいという『自由』に私は戸惑っていた。当時の私には、大学も下宿も居場所ではなかった。何をしたらいいかわからない中で私はもがいていた。

 その時、私は『沈黙』を下宿で読んだ。当時の私は、鎖国・島原の乱・踏絵という言葉は知っていた。しかし、この本で、キリシタンへの厳しい拷問・弾圧の事実をはじめて知った。そして、『自分が何も知っていなかったこと』に愕然とした。

 私は、とにかく小説を読むことにした。小説を読み続けているうちに、私は、大学での生活になじんでいることにふと気がついた。

 その後、私たちはグラバー園に行った。眼下に港が広がっていた。航跡を残し、船がゆっくりと通り抜けていった。西日を受けた、穏やかな海だった。
 

グラバー園からの長崎の海

# あの選択をしたから


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