映画「AIR」に学ぶベンチャー営業精神
はじめに
2024年が明けてから1ヶ月が経ちましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
年末年始の余暇で前々から見たいと思っていた映画を鑑賞していたら「これぞベンチャー営業だ!」と胸が熱くなった作品に出会えたのでおすすめしつつ、ベンチャーで営業する上で学びたい点について記事にすることにしました。
映画『AIR/エア』公式サイト (warnerbros.co.jp)
作品のあらすじ
1984年、人気がなく業績不振のナイキのバスケットボール・シューズ。ソニーは、CEOのフィルからバスケットボール部門の立て直しを命じられる。競合ブランドたちが圧倒的シェアを占める中で苦戦するソニーが目をつけたのは、後に世界的スターとなる選手マイケル・ジョーダン――当時はまだド新人でNBAの試合に出たこともなく、しかも他社ブランドのファンだった。そんな不利な状況にもかかわらず、ソニーは驚くべき情熱と独創性である秘策を持ちかける。負け犬だった男たちが、すべてを賭けて仕掛ける一発逆転の取引とは…!?(オフィシャルサイトより引用)
主要キャスト
ソニー・ヴァッカロ/マット・デイモン
ナイキの社員で、バスケットボール部門を担当する。
フィル・ナイト/ベン・アフレック
ナイキ社のCEO。
【注意】 本記事の内容には映画のネタバレを多少含みます。映画を楽しんだ上で読みたいという方は是非ここで本記事を閉じて映画を鑑賞してから続きを読んでいただければと思います。
それでは、本作の中でベンチャー営業にも通じるポイントについて感想を書いていきます。
特別な機会にこだわる
話はバスケ大好き人間なマットデイモン演じるソニーがジョーダンという特別な存在に気づくことでスタートをする。ちなみにソニーはおそらくそれまで仕事では特に目立った成果もなかったという描かれ方をしている。ただ、誰よりもバスケを見て勉強するバスケ愛と情熱があればこそ、ジョーダンという存在にこだわれたのではないかと理解できる。
ここから学べることは特別なきっかけをつかむのは必ずしもトップセールスや特別な才能を持った人ではないということ。日々の活動の中で市場に変化をもたらす機会に恵まれる可能性は誰にだってある。大きな違いはその機会を特別だと認識してこだわれるかという点ではないだろうか?チャレンジングな案件ほど社内外で様々な障害を乗り越えていかないといけない。そこで特別なきっかけを特別と認識できなかったり、簡単に「やっぱ無理だよね」と思ってしまっては壁は超えられない。
そんな一見すると無謀ともいえるチャレンジにこだわれる人がメンバーにいれば幸運かもしれない。ただ、そういった直感や内に秘めた情熱は本人でさえ気づいていないこともあるし、仮にいたとしても変人や異端児扱いされていることも珍しくはない。組織としてもう少し狙いを持ってチャレンジをしていくのであれば「たられば」で何があれば自社のビジネスのステージを引き上げるか?ということを半ば妄想や空想的でも考え、議論してみることがいいのではないかと思う。そして何より大事なことは挑戦を是として賞賛される風土があってのことだと思う。
常識に囚われずできることを全てやる
ソニーは何とかジョーダンに会いたいと考えるもエージェントに止められる。常識で考えればここで諦めるところだが、ソニーはどうしても諦めきれない。兎にも角にも機会を作らないと何も始まらないのであらゆる伝手を辿りつつ、ジョーダンの実家に突撃訪問を敢行する。
必ずしも見境なく突撃することがいいということではないが、機会がなければ何も始まらないのである。例え非常識だろうが社内で怒られようが、そもそも選択肢にも入っていないのだから失うものはない。それならば行動して前に進むしかない。どれだけこだわれるかということは行動に移す際に躊躇せずに動けるかということにもつながってくる。どうしたら機会を作れるかということを考え、”行動すること"の重要性を教えてくれる。
何が人に影響を与えるのか?
ここで一つ興味深いのがジョーダンに直接会う前に両親と会話をしているという点だ。 エンタープライズ営業の人が好きなバイヤー相関の話だが、よくバイヤー相関を理解する入門的な話で一つの家族が車や家を買う話で例えられることが多い。この映画でもビジネス上のキーマンはジョーダン本人よりも母親として描かれている。ジョーダン本人の経歴を踏まえつつ、そこに多大な影響を与えていることを理解して、ジョーダンならびにファミリーにとってのベストを考えたアプローチと提案を行っている。
ここでの注目点は選手本人だけではなくジョーダン家を顧客と認識して営業をしていた点ではないだろうか?仮にだが、最初にジョーダン本人と会話していたら一発アウトだった可能性もある(ジョーダンは当初ナイキにいいイメージを持っていなかったとされている)。しかし、母親はジョーダンにとってのベストは何かを冷静に考えられる立場でもあった。その母親に対して有益な提案(ジョーダンの幸せ)を示唆できたからこそ提案機会を作ることができたと思える。
Why you? Why us?
競合と比べて予算もブランドイメージでも不利だったナイキ。ではどうやって差別化を図ったのかというところも注目点だ。競合の提案内容を想定し、経営や開発チームを巻き込みナイキにしかできない提案を作り上げた。大手に比べてブランドや資源で劣るベンチャーが勝つには無いものねだりをするのではなく、あるものの価値を最大限に活かして競合がやらない・できないことをやるしかない。それによって顧客にとってその提案までは存在しなかった新たな選択肢を生み出すことでオンリーワンの提案となる。
ちなみに社内で提案に向けたブリーフィングで提案の場における役割分担や演出を考えて、ベストな提案内容を伝えるためにこだわっている姿勢も大事な見どころだ。
「前例がない」はやらない理由にならない
提案も進み大詰めというところで契約条件に無理難題が発生。実際に大手企業との取引でよく遭遇するやつだ(これによって幾多の営業が案件をスライドさせて詰められたことだろうか)。さすがのソニーも諦め気味に社長であるフィルに相談すると「やるぞ」とまさにJust Do It。この時のベン・アフレックがシンプルにかっこいい!挑戦をする組織のリーダーとして最後に背中を押してくれるリーダーの漢気。そこにシビれる!あこがれるゥ!
ベンチャーで大手企業と取引をするのは正にチーム戦。この映画でも最初のきっかけは一人の担当者だったが、周囲の反対があっても粘り強く巻き込んで最終的にはチームとして提案に向かっていったのも印象的だ。契約が決まった時のフロアが湧き上がる歓喜の瞬間はベンチャーに勤める人なら誰もが味わいたい醍醐味である。
あとがき
今回はベンチャー営業という目線での映画感想文を書きました。ベンチャーであれば世の中を変えたいという気概を持って挑戦している方も多いのではないでしょうか。
マイケル・ジョーダンという特別な選手の活躍もあり、エアジョーダンを皮切りにナイキの存在は大きくなり、その後の成長はもはや説明するまでもないでしょう。余談ですが、スポーツ選手の生涯収入ランキング1位はマイケル・ジョーダンらしいのですがその理由はこの映画にヒントがあります。
今では誰もが知るナイキがまだ挑戦者としてのポジションから大きく成長するターニングポイントを描いている本作は映画としてとても面白いので興味を持っていただいた方は是非ご覧ください。