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米国で本格的議論が始まる太陽地球工学

地球工学(ジオエンジニアリング)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

言葉としては以前からありましたが、そのリスクが大きすぎるがゆえに本格的な議論にまで至らなかったのが現状です。

米国大統領指示の下、それについて本格的な計画作りが始まりました。

ようは、
大気系の科学団体(NOAA)などに対して、ホワイトハウス科学組織(OSTP)による太陽地球工学調査活動を支援するよう指示した
という話です。

「太陽」と頭についているのは、温暖化抑制のため太陽光を反射させるというテーマに絞っていることを示しています。
惑星の特徴を表すとき、「アルベド」という反射率単位を使いますが、この値を高めようということです。
参考までに、太陽系惑星の中では、金星が最も反射率が高く、水星が最も低いことがわかっています。

ちなみにもう1つのアプローチは、温暖化をもたらすガス(CO2など)が発生したあとに、それを除去する方法です。
要は、どこでそれを抑え込むか、という違いですね。

さて、太陽地球工学の中で、比較的よく聞かれるアイデアが、
成層圏で微粒子(エアロゾル)を散布して反射率を高める
というものです。

実はこれは、ある自然現象からその有効性がある程度確認されています。

それは「火山の噴火」です。

例えば、20世紀最大級ともいえる1991年のピナツボ火山の噴火では、数百万トンの二酸化硫黄が大気中に放出され、その後、何年にもわたって地球の気温が0.5度ほど低下しています。

発生した二酸化硫黄が硫酸となって、液滴の状態で成層圏にとどまって太陽光の反射率(アルベド)を高めたというプロセスです。

実は、数年前にハーバード大研究グループで、気球を上げて小規模散布をしよう、という実験が進められ直前で延期になったという顛末もありました。

この実験では、
チョークの主成分である炭酸カルシウムの微細な粒子を放出する予定だが、最終的には、硫酸塩(火山から放出される二酸化硫黄の副産物)の散布を検討していたそうです。

研究をリードするディビッド・キース教授によると、散布するのは1ミクロン以下の大きさの粒子で、最大2キログラム・1キロメートルの範囲にわたって噴射し、商用の航空機は毎分排出する量以下とのことです。

ただ、今回も中止に追い込まれたのはやはりそのリスクが測り知れないためのようです。
このリスク評価が、専門家によってもまだ割れているのかもしれません。

ここはある程度専門家同士で科学的な議論を深めてもらいたいところで、おそらく内容がわからないまま非専門家が発信しても、どうしても情緒的で保守的になってしまうのかなと感じます。

特に、「それをやらない時にどうなのか?」がイメージ出来ない以上は比較のしようがなく、例えば、代替案の炭素除去でより安全な方法はないのか?、となりがちです。

このテーマは、もう少し自分自身がまずは科学的な理解と代替案の情報を得ないと自分のスタンスを固めるのは難しいです。

ただ、今回もあくまで計画の指示であり、成層圏噴霧実行を前提としたものではありません。

近いことは他のテーマでもよく起こりがちですが、議論すること自体を封殺するのは健全ではないと思います。

まずは初めの一歩として、思考停止して怖がらずに、「関心」を持って何が議論されているのかを追いかけてみようと思います。

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