生命の壁を辿る:ミトコンドリア内膜の可視化
生命の必須要素は「タンパク質」ですが、その次に重要なものをあげると「脂質」かもしれません。
こちらのサイトによると、我々の体は下記の内訳となるそうです。
たんぱく質は、「光遺伝子」の手法でリアルタイムに観測する方法が確立されています。以前にも触れたので詳細はそちらにゆだねますが、ざっくり言えばマーカーを対象のタンパク質に埋め込める手法です。
脂質についてはまだ同じことは出来なかったのですが、最近日本の研究グループが画期的な研究成果を発表しています。
細胞内にあるミトコンドリアの内側膜に、蛍光マーキングを埋め込みことに成功し、その特性分布が不均一ということを発見した、という話です。
ミトコンドリアはエネルギーを生成するのに必須の細胞内器官です。外の壁とその内側の膜の二重構造になっています。(下図の1が内膜でひだ状)
ミトコンドリアは老化に影響があると考えられており、過去投稿を参考までに載せておきます。
今回の発見も老化の研究に貢献するかもしれません。
ミトコンドリアがエネルギーを産むためには酸素を取り込んで活性酸素と呼ばれる廃棄物を出します。(詳細は端折ってます)
その廃棄物が、ほかの健康な細胞を損傷してしまうのでは、と考えられています。
今回の新しい可視化ツールによって分かったことをもう少し踏み込みます。
活性酸素種によって、内膜を構成する脂質の過酸化が進み、それが膜の性質を変化させて(ひだ状部が)膨張につながることが明らかになりました。
元論文で引用されている画像を引用しておきます。
ちょっとわかりにくいですが、右図の色が異なっているのが分かります。
今回のほかに冒頭発表では、ストレスをかけると内膜がおとなしくなるという挙動も分かったようで、これから脂質で構成された細胞やその内部器官の解明が期待されます。
今回開発したマーキング手法に加えて、蛍光寿命イメージング顕微鏡(FLIM)という手法との組み合わせも影の貢献者です。
これはこれですごい技術なので1つだけその有用性に触れたサイトを載せておきます。
そもそも、生命の条件の1つは「壁があること」で、その機能単位である「細胞壁」は脂質で構成されています。(動物の場合)
直感的にはこの壁の特性が細胞間の対話を調節していると思うので、今回の成果は相当ポテンシャルを感じました。