ジョン・フォン・ノイマンという天才3(その他)
今までノイマンの自然科学(物理、計算機とその応用)の業績にふれましたが、それ以外で多大なる影響を与えた分野を紹介します。
その1つが「経済学」です。
元々のきっかけは、ノイマンが1920年代に書いた「ゲーム理論」です。
ビジネス書でもゲーム理論は以前からよく知られていますが、きちんと理論だって研究を行ったのはノイマンという声もあります。(ゲームを取り扱うだけなら先駆者はいます)
砕いて書くと、想定される最大被害を最小にするようにする方法を編み出し、今では「ミニマックス法」として、初期のゲーム用人工知能でも導入されています。
執筆動機は見つけられませんでしたが(カジノ好きではありました)、こちらは数学を駆使しているので何となくはうなづけます。
そしてこの業績に目を付けた経済学者オスカー・モルゲンシュテルンです。
モルゲンシュテルンも、ノイマン同様欧州でナチスによる迫害をきっかけに渡米し、その先でノイマンと知り合いました。
余談ながら、他にも天才級の科学者がごそっと同様の背景で米国に移住しており(代表格は何といってもアインシュタイン)、科学の歴史では大きな変曲点だったと思います。
ノイマンのゲーム理論が経済学に応用できると目をつけて、原爆開発の合間(!)で時間を作り、1944年に「“Theory of Games and Economic Behavior”(ゲームの理論と経済行動)」を発表します。
ざっくりいうと、ミニマックス法では二人かつゼロサム(全員の損得を足すとゼロ)の枠組みだったものを、それぞれ一般化しました。
今の経済学は結構数学を多用しますが、まさにその基礎付けにあたります。
下記記事によると、経済学の大家サミュエルソンもノイマンの功績を認めているようです。
一見とりとめもなく食い散らかすように見えるノイマンの共通項を絞り出すと、「原理」からスタートするスタンスです。
数学では「公理」とも呼ばれますが、要はそれ以上は証明できない真実、から物事を考察します。
ノイマンが大学卒業後に師事したヒルベルトが、まさにこの公理から数学を完全(公理に矛盾がなく、真である命題は証明出来る)にしようと提唱したのが「ヒルベルトプログラム」と呼ばれたものです。
そんな公理好き(?)なノイマンが、知る限り唯一(公理に関する)論文執筆を断念したのが、クルト・ゲーデルの「不完全性定理」と呼ばれているものです。(タイトル画像の右はWikiより引用)
難解なので、参考文献からそのまま引用します。
この関連が、以前にも触れたチューリングの「計算可能性」です。(要は有限回数で計算可能かどうかは事前に分からない、ということ)
乱暴に書くと、ヒルベルトの問いがゲーデルとチューリングの歴史上で輝く研究成果につながり、ノイマンはその枠内では主役にはなれなかったということです。
ただ、これはむしろこの二人(あとはアインシュタインも尊敬)は超レアなケースです。
逆にノイマンによって影響を受けた人、そして学術分野は数知れず、今回のゲーム理論でも、例えば心理学(期待効用理論)にも応用されています。
特に現代は、分野横断的な研究が新しい成果を生むということはよく目にします。
現代にノイマンが生存していたら、一体どんなテーマに関心を向けるのか、想像するだけで楽しめそうです。
<参考リソース>
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