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既に我々は仮想現実にいる

やや過激なタイトルを付けましたが、まじめな話です。

タイトルのきっかけになった記事を先に紹介します。

ようは、
錯視が起こる仮説として、脳は現実世界をありのままにみているのでなく予測して判断している、
という話です。

鍵は上記サイト内の画像なので、「静止画」をそのまま下記に引用します。まずはぜひ「自らの眼」で、真ん中の黒い領域が縮尺していないか確かめてみてください。

出所:上記サイト内画像

おそらく大半の人(筆者が聞いた方は全員)は動いて見えると思います。繰り返しですが、これは「静止画」です。

これは「錯視」と呼ばれる目をだます手法の1つです。
そして実際にこの動いて見える瞬間は、被験者の瞳孔が反応していることも実験の結果分かりました。

これは何を意味しているかというと、「脳は物理世界を正しく見ることが出来ない」ことを示唆しています。

よく目はカメラに例えられ、入力部はその通りなのですが、目はその後に脳に渡します。
上記サイトにでる心理学者ラング氏は、「脳はカメラのようにありのままを写すことは出来ない」としてますが、まさにこの錯視はピント合わせがうまくできていない現象に近いです。

ただ、もう一歩先に進めて、ラング氏は「脳は予測している」という大胆な仮説を唱えています。

つまり、外的世界を感覚器官から信号として受け取って反応すると時間差が生じるため、その前になにがしかの予測をして実信号との差異を補正しようとする、というイメージです。

実はこういった説はもはや珍しくありません。

以前にも別の文脈で紹介した下記の書籍も全く同じです。

こちらはその予測する仕組みまで唱えています。

シンプルに言うと、新皮質と呼ばれる人類だけが異常発達している脳の外縁にある領域で、垂直に貫くニューロン(神経細胞)の集合単位を「カラム(Column)」とくくり、世界の予測モデルを作っていると仮定しています。
しかも各カラムが独自に世界モデルを形成し、それを元に各カラム間の投票で最終的に脳として全体をどのようにイメージするのかを決める、というのです。

なかなかスリリングな仮説だと思いませんか?

冒頭記事の心理学者は現象の結果自体を仮説とおいてましたが、ホーキンス氏はその原理の探究が目的です。したがって、どのように予測モデルを構築しているのかも研究が進められています。

例えば、ニューロンのやりとりは、シナプスという接合部を経由してお互いに電気信号を渡しあってあらゆる活動を行っています。
余談ですが、脳の電気負荷を消費電力に例えるとなんとたったの20Wで、最新のスーパーコンピュータ100万分の1ぐらいのエコな性能を誇ります。

そのニューロン間の電気信号のやりとりですが、今までそのシナプス連結に寄与しない、ある意味無駄に見える微弱な電気反応があることが分かっていました。

ホーキンス氏は、これこそが予測モデルを設計・改修している行為、という説を持ち出して持論を展開しています。

それ以上の詳細はぜひ上記書籍を手に取っていただきたいです。

改めてまとめると、我々が世界を認識する手段は脳に委ねており、その脳は仮想の現実(脳内の世界モデル)を元に現実世界との適応(補正)を行っているというわけです。

近しい言葉に、シミュレーション仮説、というものがあります。

これは、物理世界自身もコンピューター的なシミュレーションである、という仮説です。(ようは、映画マトリックスの世界観です)
今回の話は、物理世界をまず認めたうえで、それを脳がどう処理しているか、という話です。
全く悲観的になることはありません。(救世主ネロを探す必要はないです)

むしろ、こういった特殊な能力を具有したからこそ、我々がこういった知的な活動が継続できる、と構えてその素敵な脳をねぎらってあげましょう。

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