生命はファインチューニングされているのか?その2
前回の続きです。
前回の最後は強引に丸めたので、あらためて要点を書いておきます。
シアノバクテリアが光合成で酸素を発生させたことで生態系が激変し、それをエネルギー変換するミトコンドリアが他の生物に機能ごと吸収されて、より高度な「真核(核を持つ)生物」の誕生につながります。
そしてなんと、こうして生まれた真核生物の1つに、シアノバクテリア自身も吸収され、今では植物の持つ「葉緑素」に生まれ変わります。
時代は今から16億年前です。
真核生物と書きましたが、まだこの時代は「単細胞生物」です。アメーバーみたいなイメージですね。
ミトコンドリアという効率的なエネルギー変換器を内包したことで、確かにコスパはよくなりましたが、「多細胞生物」に進化するにはもう少しエネルギー不足です。
そして時代は今から約10億年前に近づいていき、とんでもないことが起こります。
またも、地球が凍結します。
前回は、シアノバクテリアが容疑者でしたがすでに表舞台から退場しています。(ちょっと辛辣すぎますね。。。)
今回の容疑者は、「隕石」です。
これは実際月のクレーター調査から分かっており、当時隕石のシャワーが月と地球に降り注いできました。
一見逆に灼熱地獄に陥るように思いますが、隕石が衝突すると塵が大気を長年覆ってしまい、太陽エネルギーが届かなくなって凍ってしまった、という説が有効です。
ただ、前回と共通項もあり、もちろん氷が溶けたのもありますが、凍結前より酸素濃度が一気に急上昇した、という点でも一致しています。
しかも、前回の急上昇よりもはるかに激しく、この時代に一気に現代の20%にまで近づいたのではないか?と考えられています。
1つの(個人的に好きな)説は、これにも隕石が関わっている、というものです。(他にも、プレート移動説や、前回同様に生物の過渡な光合成という説も)
大量に降り注がれた隕石にリンが含まれており、これがパワーチャージャーとなったわけです。
過去にNHKサイエンス番組でも紹介されたので引用しておきます。
余談ながら、冒頭でのみ登場したミトコンドリアもこれに関わります。
ミトコンドリアはエネルギー生産工場ともいわれますが、原料がまさにこのリン(細かくはその化合物ATP)というわけです。
あくまで仮説の1つですが、この宇宙からの災害を引き起こした隕石が、結果として多細胞生物が誕生するきっかけになったとしたら、まさにファインチューニングではないでしょうか?
そしてこのわずか数億年後に、生物が爆発的に多様化したエディアカラ・カンブリア紀へとつながっていくわけです。
(カンブリアはよく知られてますが、その直前期から多様化の傾向はありました。興味ある方はこちらの投稿記事を参照ください。)
特に最後の隕石飛来説は、まさにマクロとミクロが地球という交差点で絡み合ったロマンのある話です。
そんな先祖たちの奇跡的なドラマが続いて、ついには人類という奇跡的な生物種が誕生したわけです。