AIがついに素粒子標準模型を変える?!
以前に、AIに世界をありのままに見せて学習させると、人間の赤ちゃんまたはそれ以上に学べる可能性について触れました。
そんなAIが、ついに人類の英知の1つ「素粒子標準模型」に修正を迫る可能性が出てきました。
ようは、
AIに過去実験を学習させると、陽子の内部構成に(現行模型では含めていない)チャームクォークが含まれている可能性が高い、
という話です。
その信頼性(統計学上)が実に99.7%ですので、受け入れるまでではないですが、無視するわけにもいかなさそうです。
従来のモデルでは、陽子は下記のように3種類のクォークから構成されています。
クォークは、1960年代に提唱され、はじめは「u : アップ(+2/3)」「d:ダウン(-1/3)」「s:ストレンジ(-1/3)」の3つとされていました。
当時流行していたフィネガンズウェイク’Finnegans Wake)という小説での"Three quarks for Muster Mark"、カモメの鳴き声を意味する「クォーク」と名付けられました。
で、その後に続々と見つかり今では今回話題となったチャーム(c : +2/3)含めて、全部で6種類見つかっています。(最後の「トップ」は20世紀末に発見)
その属性として「世代」「色」があります。(複雑になるのですべての表までは割愛)
クォークは、「強い力」で閉じ込められており、実はその原理を解明するアイデアの1つが、「超ひも理論」の源流「ひも理論」です。(南部陽一郎氏が提唱)
今では、それに代わる量子色力学と呼ばれる理論で記述されてますが、その理論ではクォークを単体で取り出すことはできないとされています。(色を採用したのは、組み合わせて「白色」にならないと取り出せないから、という背景)
ということで、高エネルギー状態で衝突させた時の実測からの仮説検証を積み重ねて今の素粒子標準模型があるわけです。
なお、元論文(上記のNature)によると、今回の新たなクォークの存在については議論はありましたが、未解決の状態でした。
今回はAI(機械学習)に、この存在有無のパターンでシミュレーションした結果によるものです。
今回は、それが偶然そうなった確率が0.3%(統計の単位で0.5シグマ)と書きましたが、この数値ではまだ模型を書き換える水準ではありません。
実は、2021年に、これよりも衝撃的なずれが計測されました。
ようは、
ミューオン(電子より重い素粒子みたいなもの)実験で、未知の素粒子(粒子または力)の可能性がある、
という話です。
なんとこちらは偶然そうなった確率は4万分の1(=0.0025%)です。
それでもまだ不十分で、素粒子物理の世界では大体350万分の1(5シグマ)以下に達する必要があります。
これからの追試験でその値が近づくことで、今後新たな粒子発見の知らせが届くかもしれませんね。
話を冒頭に戻すと、今回最も大きなインパクトは、その偶然確率が云々ではなく、AIを使うことで従来出来なかったシミュレーションとそれに基づく当たり付け(仮説)が可能になった、という物理学の研究のありようを大きく変えている可能性です。
もっといえば、物理以外の自然科学全般でも起こりえる話で、今後AIの進化があらゆる基礎研究のスピードを加速させるかもしれません。